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混浴はあたりまえ!? ドイツのサウナで「常識」をアップデートする

1. 混浴サウナはあたりまえ?ドイツ女性とハンガリー女性の埋まらない溝


「ところで、男性と一緒にサウナに入ることについてなんとも思わないの?」

10月の終わりの日曜の朝、11時近くになってはじまった朝食の席でハンガリー人のクリスティーナが聞いた。

「寒くなってきたし、サウナでゆっくりで休みたいわ」
ドイツ人のエリカが最近仕事で上司と上手くいっていないという話をした後、そう口にしたときだった。

ドイツの温泉は混浴だ。サウナも混浴。
まっぱだかの男性と一緒にまっぱだかで温泉やサウナに入ることに女性として抵抗はないのか。
同じ『温泉に入る』習慣のある国民として、しかしあまりに違う状況に、そしてまだ『ドイツ式温泉&サウナ』にチャレンジする勇気が出ない中で、わたしも以前から聞いてみたいと思っていたことだった。

「え?なにが?なにをどう思うの?」

「だって、男性も女性もはだかなんでしょう?それでサウナに入ったら隣にならぶわけでしょう?わたしは女性同士でも嫌。男性であれ女性であれ、隣にはだかの人がいるなんて信じられない」

ハンガリーにも温泉があると聞くけど、どうやらクリスティーナにとって温泉は水着で入る場所のようだ。

「ええ!?何が嫌なのかがわからない。わたしなにも気にしないわ」

「だってだって、知らないおじさんが、どーんて、いたりするわけでしょ?そういうときどうするの?」

「たしかにたまに椅子にすわってどーんて足開いてるおじさんとかもいるわよ。でもなにも思わない。あなたがなにを気にするのかわたしにはまったくわからないわ!」

「わたしにはその感覚がまったくわからない!」

どうやら「気にする」ということが理解できないくらい、エリカにとっては温泉やサウナに男女一緒ではだかで入ることはあたりまえのようだ。

「でもわたしはサウナにはひとりでゆっくり入りたいから、知り合いとはわざわざ行きたくないわ。男友達とも行かない。知ってる人に合わない場所で静かにすごしたいの」

きっと言葉の通りエリカは、はだかで人とにいるのが嫌なのではなくて、ただ、周りを気にせずひとりで過ごしたいのだろう。そこは共感する。温泉ではひとりでゆっくりしたいし、知らない人であればはだかの人が近くにいようがまったく気にならない。しかしそれが男性も一緒となると、話は別だ。

そんなことを考えていると、ひたすら平行線なふたりがたずねてきた。

「それであなたはどうなの?」

「わたしは、ふたりのあいだかな。はだかで女性と温泉やサウナに入るのは気にならない。だけど男性と女性は別だよね」

これは感覚の違うふたりから言ってもそこそこ納得感のある折衷案なんじゃないかと思ったが、それを聞いてふたりともまた「その感覚もよくわからない」と首をかしげた。

そんな話をしてから1ヶ月後、とうとう混浴サウナに行くことになった。

2. 混浴サウナはやっぱり水着?ドイツサウナは未知の世界

「サウナは男女一緒であたりまえ、なにを気にするのかわからない」というドイツ人女性と「はだかの人が隣にいるなんて、女性同士でも嫌」というハンガリー人女性の埋まらない溝にはさまれてから1ケ月。とうとうドイツのサウナに行ってみることにした。

11月下旬にしてすでに気温が0℃を下回ることもあるドイツ。朝8時頃にやっと明るくなりはじめ、夕方3時すぎから家の中は暗くなって来ている。温泉やサウナという楽しみが持てたら暗くて長いと言われるドイツの冬を乗り切ることができるかもしれない、という気持ちが、まっぱだかのドイツ人男女とサウナに入るという未知すぎる不安を超えた。今しかない。寒いの中でもまだ外に出る元気があるうちに行ってみよう。

そうしてドイツのサウナ情報を調べ、日本人があまり行かなそうなスパ&サウナを選んだ。
ドイツ人との混浴サウナへ入る決意はできたものの、見知らぬ日本人男性と仲良く混浴サウナに入る勇気が湧いたわけではない。できれば女性でも日本人とは顔を合わせたくない。この感覚を聞いたら、ドイツ人とハンガリー人の友達はなんと言うだろう。

ところで、混浴ということは着替えの場所も一緒なのだろうか?いきなりまっぱだかになる勇気が試されるのか、それとも着替えは別で、サウナに入ったらそこでこんにちはなんだろうか。どちらも難易度は高い。どんな仕組みになっているのか想像もつかない。

そんなことを考えながらたどり着いたスパ&サウナの入り口は、ドイツ人が行儀よく列をつくっている。前に並んだおばあちゃんの差し出した束になった会員カードのようなものを一枚一枚チェックする入り口のスタッフの肩越しに、ゲートの先の様子を探る。もうすぐそこがロッカーのようだ。老若男女同じエリアに入って行く。やはり着替えの場所も男女の分けがないらしい。そしてよく見ると入り口の奥のガラスの向こうにはプールのような空間が見える。水から頭だけ出している人がいる。プールサイドを歩いている人に目をこらす。

なんだ、水着、着てるじゃん!

ほっとした一方、こんなに勇気を出して来たのにというのと、ドイツ人男性のもろもろをもっと知りたかったのにという残念な気持ちになった。いや、水着でもじゅうぶんに知ることができる。なにを期待していたんだろう。

チケットを買い、ゲートを抜け、ロッカーは男女一緒ながらもプライベートな空間が確保されている着替えスペースで念のためと持って来た水着に着替え、なぜかそこだけ男女別になっているシャワースペースを抜けた先には、先ほど見えたものとは違う、でも大きなプールが広がっていた。

もちろんそこには水着を着た男女がいた。

日本のプールとの違いは、水があたたかくて温水プールという感じであること。深さが140cmくらいあっておとなが立ったまま肩までつかることができること。泳いでいる人はほぼいないこと。

なんだドイツのスパ(温泉)というのは、あたたかいプールのことで、プールのように子供がバシャバシャ遊ぶのではなくて、ゆっくりお湯につかってすごす場所のことだったのか。そしてそこにはやっぱり水着で入るんだったんだ。

・・・なんて思った自分が今となってはかわいらしい。

水着でのんびり浸かる温水プールゾーンの奥は、想像を超えた混浴サウナゾーンだった。

3. いつどこではだかになる?ドイツ混浴サウナのマナー

混浴サウナという未知の世界に不安と期待のおり混ざった気持ちで到着したものの、そこは大人がのんびり水着で浸かる温水プールだった。しかしそんなはずはない。プールに首まで浸かりながら周囲を見回す。サウナゾーンはもっと奥だ。行ってみようかどうしようか。でもここでサウナまで行かなければ不安と期待を抱えてはるばるやって来た意味がなくなってしまう。

えい、とりあえず見に行ってみよう。と、プールゾーンの奥にあるサウナゾーンのゲートへ向かう。プールゾーンと同じくなぜかそこだけ男女別れている入り口の扉を抜けると・・・ああ、やっぱりそうだよね。これがドイツ式だよね。

バスローブやバスタオルを巻いている人はいるものの、はだかの男女が同じスペースでシャワーを浴びている。はだかの男女がサウナの部屋に入って行く。もはや「はだか」であることも「男女」であることも、あたりまえすぎてわざわざ言うことじゃないような気さえしてくる。

水着を来ていることがはずかしくさえ思えてくるのは、「周りと一緒にしていたら安心」という日本人ならではの感覚なのだろうか。「早く水着を脱いでしまいたい」とさえ思う。プールゾーンの手前のロッカーに置いて来たタオルを取りにそそくさとゲートを戻る。ゲートと扉をはさんだだけだけど温水プールゾーンとサウナゾーンは全く別世界だ。

日本の温泉気分で持って来た心もとない小さなタオルを携えサウナゾーンに戻る。荷物の置いてあるロッカーのようなスペースでえいやと水着を脱いだが、あとで思えば水着はサウナゾーンに入ってすぐの男女が別れたシャワースペースで脱ぐものなのだろう。

あえて視界をせばめ、つま先立ちで足早にとりあえず一番近くのサウナの扉を開ける。ここでも視界をせばめたまま、空いているスペースにまっすぐ向かい、お尻の下にタオルを敷いて腰を下ろす。入り口のドアが閉まりきっていなかったらしい、わざわざ立ち上がってドアをしめ直してくれる人がいる。

必要以上に姿勢を正し、何事もないかのように深くゆっくり呼吸をしてみる。心が落ち着いてきたので顔を上げサウナのドアや窓から周囲を見てみる。

なるほど、サウナの外ではバスローブを羽織って、サウナの入り口で脱いでかけておくのか。休憩スペースでもバスローブを羽織っておくのか。バスローブの正しい使い方を初めて知った気がする。

サウナゾーンにも湯船のようなスペースはあるがお湯はやはりぬるめ。そして外にはさらにたくさんのサウナと広い温水プールゾーンがある。ジャクジーのようにボコボコしたプールや、水の中がライトアップされている温水プール。日が落ちて暗くなった中で緑や紫に光るプールは、アミューズメントパークのプールのようだが、そこにいるのははだかの男女だ。

それだけ聞くとすごくいやらしい感じがしてしまうが、いたってヘルシーな場。ドイツ人ははだかに対して寛容と聞いてはいたけれど、ここまであっけらかんとオープンにされると、ほんとうに、隠しているほうがはずかしいという気になってくる。はずかしいという気持ちは社会的に埋め込まれた価値観だということを実感する。

よく言われることだがドイツ人は「ルールだから」ということが行動の大きな基準になる。ルールを守り、他人に迷惑をかけず、個人主義。それはサウナでの行動にも現れているのではないか。

ドイツ式サウナに入るときに覚えておきたいルール(だとドイツ人の様子を見て感じたもの)
・サウナの扉はきっちり閉める
 日本でもあたりまえのことだけど、「扉が閉まっていない」ことに敏感な人が多い。
・サウナでは足の下にもタオルを敷く
 お尻の下だけでなく足の下までタオルを敷くため大判のバスタオルがおすすめ。
・はしゃがない、泳がない
 泳ぐためのプールは別にある。温泉とサウナはおとながゆったり楽しむ場所。

ドイツ式サウナに入るときに覚えておくと便利なこと
・料金は時間制(場所によって違いあり)
 最初に時間の指定をしてチケットを購入するが、超えた分は後から追加で払えばOK。
・長い髪は結ぶ
 日本のプールのように水泳帽子をかぶる必要はないが(そもそも頭をつけて泳ぐ場所ではない)髪の長い人はまとめておくのがベター。
・休憩スペースも着替えコーナー内にある
 バスローブを羽織って飲み物を飲んだり食事をすることもできる。

最後に、ドイツサウナに持っていくと便利なものなどをご紹介します。

4. ビックリ!ドイツ混浴サウナの実態とサウナを楽しむ必須アイテム

意を決して飛び込んだドイツサウナ。一見日本と変わらない水着で楽しむ温水プールかと思いきや、その奥にはちゃんとありました、混浴サウナ。その実態はぜひ実際に味わっていただきたいですが、想像を超えたドイツの混浴サウナのビックリポイントと、サウナを楽しむためにあると安心なものをご紹介します。

ビックリ1 : 老若男女がほんとうにはだかで混浴サウナを楽しんでいる
「ほんとうに混浴なのか?」「ほんとうにはだかなのか?」と考えていた自分がバカバカしいほど、あたりまえのようにはだかの男女がサウナを楽しんでいます。日本では混浴温泉に行く若い女性は少なく、「混浴だぜうへへー」という下心で行った男性はガッカリするというのが常ですが、そんな気持ちを持っていたこともバカバカしくなるくらい。はだかの男女がうじゃうじゃいると、ドイツ人女性の言っていた「なにを気にするのかわからない」という感覚がうなづける気もします。水着の温水プールゾーンからはだかのサウナゾーンに入ると水着を着てることがむしろはずかしくなる。

ビックリ2 : 温泉がぬるい
サウナと併設されていることの多い温泉(温水プール)。36℃前後の水温のため、日本の「ふー、冷えた体があったまるー、ごくらくごくらく」という温泉を想像して入ると、正直「???」という感じ。しかし、熱くないのでいつまでも浸かっていることができます。温水プールに浸かって、サウナに入って、たまに休憩をしてと、ドイツ人にとってサウナはゆっくりと休日をすごす場所なのです。

ビックリ3 : サウナでもビール!
サウナにはビールなどの飲み物が飲めるバースペースが設置されているところもあります。はだかの人たちがプールに浸かりながら飲み物を飲んでいる光景は異世界を舞台にした映画のワンシーンのよう 。それがあまりにあっけらかんとしているので、「こういうものなんだ」という気がしてきます。日本では温泉スペースと休憩スペースが別れているけれど、それが全部一緒になっているような感じです。

サウナの持ち物1 : 大判のバスタオル
はだかで男女一緒なんてはずかしい!と思っていた気持ちがどこかへ行ってしまうドイツのサウナですが、バスタオルは必ず持っていきましょう。タオルは体を隠すためではなくて、サウナでお尻の下に敷くために必要です。日本でもサウナでお尻の下にタオルを敷くけれど、ドイツではお尻の下から足元伸ばしたタオルに足を置くのがマナーです。小さいタオルでは足元まで長さが足りず、また、寝転がったときにも体の下に敷くことができるよう大判のバスタオルがおすすめです。

サウナの持ち物2 : バスローブ
バスローブも体を隠すためというより、体を冷やさないために必要です。時に屋外にもあるサウナとサウナの間を移動したり、休憩をしたり、ゆっくりとドイツ式にサウナを楽しむにはバスローブは欠かせないアイテム。貸し出しがあるところもありますが、持参すると安心です。

サウナの持ち物3 : サンダル
プールサイドやサウナ間の移動のときにサンダルを履いている人も多くいます。ないと絶対だめなものではないものの、屋外は足元が冷えていることもあり、着替えのときに足元が濡れにくいことを考えるとビーチサンダルのようなものがあると安心です。土などが付いていないキレイなものを持っていきましょう。

*サウナエリアには水着は必要ないものの、利用料に水着着用のプールエリアの利用も含まれている場合があります。水着を持って行ったほうが安心です。

「ほんとうに混浴なの?ドキドキ」と訪れたものの、ドイツのサウナは「大人がゆったりと楽しむ場所」でした。ルールとマナーを守って、気持ちよくすごせるといいですね。レディースデイを設定しているところもあるので、混浴の温泉やサウナに抵抗があるという女性は、まずはレディースデイに行ってみるのもおすすめです。

あなたもぜひ、ドイツのサウナで「日本の常識」の殻を破ってみませんか。

*追記 オランダに引っ越しをしましたが、今のところオランダで行ったサウナもドイツと同じ混浴&はだか形式です。ドイツで行っていたサウナの方が屋外にもサウナがあったので自然の中という感じ。オランダでも温泉で有名な街があるようなのでこの冬はぜひ行ってみたいなと思っています。

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