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コーチとしての成長の3つのステージとそれぞれのステージを越えるときにぶつかる壁

先日、イギリスにおけるコーチング・メンタリングの第一人者であるデイビット・カルターバック氏によるコーチの成長をテーマにしたトレーニングに参加しました。

デイビット氏はコーチがどのような成長プロセスを経ていくのかということを研究していますが、その中でこのようなことが分かったそうです。

コーチの能力の高さ(コーチとしてのコンピテンシーを備えているか)は…

・コーチングの価格高さに関連しているというわけではなかった
・むしろ価格の高いコーチほど能力が低いという相関性がみられた
・コーチとしての稼働時間とも関連性が見られなかった
・4000時間のコーチ経験がある人でもビギナークラスのコーチングをしているということがあった


なんとも衝撃的な結果です。

コーチの能力の高さはコーチングの価格や稼働時間に比例して高くなるわけではない。

では、コーチの能力はどのように向上していくのでしょうか。

コーチはどのような成長プロセスを経ていくのでしょうか。

デイビット氏はコーチには4つの成長のステージがあると言います。


▼こちらのスライドは今回紹介されたものではありませんが、デイビット氏の提唱する4つの成長ステージはこちらの6枚目のスライドでも紹介されています。


▼こちらは英語ですが、コーチの4つの成長ステージについて触れた論文を無料で読むことができます。

https://www.researchgate.net/figure/A-comparison-of-the-four-levels-of-coaching-maturity-in-coaching-conversations-Coaching_fig1_233357425


ここからは、デイビット氏の示す4つの成長のステージと人の意識の成長の視点をもとに、コーチとしての3つの成長ステージとそれぞれのステージを超えていくときにどのような壁にぶつかるのかをご紹介していきます。

1. コーチの成長の3つのステージ

日本語には「守破離」という、芸道・芸術における修行のプロセスを示す言葉がありますが、コーチとしての成長もこの守破離にあてはめることができます。

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コーチとしての「守」のステージ

GLOWモデルやSMARTモデルなど、特定のフローや構造、スクールの提供する考え方に沿ったコーチングを身につけ、実践するステージ。

デイビット氏はここをさらにModel-basedとProcess-based二つのステージに分けています。

コーチとしての「破」のステージ

自らの哲学を深め、それをもとにクライアントが自分自身や身を置く文脈をより深く探究することを後押しするステージ。

デイビット氏はこのステージのことをPhilosophy-basedと呼んでいます。

コーチとしての「離」のステージ

自分自身の哲学や成功体験に捉われず、より有機的・相互学習的にクライアント自身が持つ変容や成長の力が発揮される機会を提供するステージ。

デイビット氏はこのステージのことをSystemic eclecticと呼んでいます。

このように、コーチが成長をしていくとコーチングは当初「コーチング」として学んだものから変化をしていくということが起こります。

そして変化のプロセスでは、それぞれのステージ特有の壁にぶつかります。

2. それぞれのステージを越えるときにぶつかる壁

コーチの成長の各ステージはそれぞれに強みがありますが、同時にその強みが次なるステージに進むことを阻む「壁」にもなっていきます。

コーチとして「守」のステージに入っていくときにぶつかる壁

コーチングを学び、実践を始めて多くの人がぶつかるのが「自信がない」と壁です。この自信のなさは、経験の少なさからくるものです。

実は経験がないということはより自由にコーチングをすることができるということなのですが、「正しいやり方がある」ということに意識が向き、自信が持てないということが起こります。

コーチが自分を信じられていないとクライアントもコーチングの関係や時間に安心して身を置くことができなくなってしまいます。

コーチとして「守」のステージを越えていくときにぶつかる壁

コーチングの学びと実践を重ねていくと、さまざまなスキルやモデルを活用することができるようになります。

しかし、一方で、スキルやモデルを知っていて活用できるがゆえに、クライアントを自分の知っているフローにあてはめようとすることが起こります。

コーチが特定のスキルやフローを土台にしていると、目先の問題解決や短期的なモチベーションアップの後押しはできてもクライアントの本質的なテーマに辿り着かなかったり、その場に生まれるものをもとにクライアントと自由にダンスをする(探究したり味わったりする)ということができないということが起こります。

また、コーチがこれまで身を置いていたスクールや学習コミュニティで「善し」とされていることから離れていこうとするときに心理的葛藤や疎外感を感じるということが起こります。

コーチとして「破」のステージを越えていくときにぶつかる壁

特定のスキルやモデルをベースとしたコーチングから離れ自分自身の哲学や視点をもとにコーチングができるようになると、コーチおよびコーチングの土台は安定したものになり、クライアントは安心してより深く自分自身やものごとに向き合うことができるようになります。

コーチはコーチングに関する学びや実践、自分自身の在り方に関する探究を深め、それがコーチングの質に影響を与えることを実感します。

そのことで、より一層学びや実践、探究を深めていきたくなりますが、自分自身がある特定の文脈や前提の中に身を置いているということには気づかず、ときにすでに持っている視点をどんどん強化していくということが起こります。

自分自身でも気づいていない「正しさ」の中に身を置くことやコーチング以外の可能性や関わりを提供することができないことがクライアントが独自の視点や力を発揮していく妨げとなることがあります。


▼コーチングを学び実践を始めて間もなくぶつかる課題についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。


3.コーチとしての成長のために大切なこと

コーチ自身が成長・変容していくことはクライアントが本来持っている力を発揮することを後押しするために重要なことです。

ではコーチはどのように「自分自身の成長」というテーマに取り組めばよいのでしょうか。

まず大切なのは自分自身の現在地を知ることです。

例えば自分自身が「良い」もしくは「優れている」と思っているコーチングの基準はどのような前提に基づいているのか。

受けているトレーニングやメンターコーチングは今いるステージの視点を強化しようとしているのか、それとも越えようとしているのか。

ぜひ一度「こういうものだ」と思っているものを改めて見直してみてください。


本記事を書いた3ヶ月後「あのときは見落としている視点があったー!」と反省の念が湧いてきました。それを踏まえた最新の感覚はこちらに綴っています▼


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