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【Queen和訳】⑪/11マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン~最終章~古典とロックの融合【傑作の理由】

はじめに

フレディ・マーキュリー作詞のQueenの楽曲「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」の和訳・分析をしています。

今回はいよいよ最後の部分です。

総括もします。


"The March Of The Black Queen"
Written by Freddie Mercury

[アウトロ]

Forget your singalongs and your lullabies
Surrender to the city of the fireflies
Dance with the devil in beat with the band
To hell with all of you hand-in-hand
But now it's time to be gone - forever

(直訳+手直し)

みんなとの楽しい合唱や子守唄を忘れてください
ホタルの街に降伏しなさい
バンドのビートにのって悪魔と踊れ
みんなと手をつないで地獄へ
しかしもう去る時間です-永遠に


長きにわたる王国の黒い物語が終わったかに思えた前章ですが、突然ピアノが、

チャチャン、チャチャン、チャチャン、チャチャン・・・

となるではないですか。

まるで、ボラプのバラードからオペラ・セクションに切り替わるときみたいです。


そしてギターがうなり、格調高い王国の旋律から、楽しげなロックンロールに。


では内容についてです。

アウトロ

[Outro]
Forget your singalongs and your lullabies
Surrender to the city of the fireflies
Dance with the devil in beat with the band
To hell with all of you hand-in-hand
But now it's time to be gone - forever

みんなとの楽しい合唱や子守唄を忘れてください
ホタルの街に降伏しなさい
バンドのビートにのって悪魔と踊れ
みんなと手をつないで地獄へ
しかしもう去る時間です-永遠に


まずは韻から始めちゃいましょう。

各フレーズの最後の単語に注目します。


まず、

lullabiesとfireflies。

ララバィズとファイア・フラィズ。どちらも母音は「ァイズ」です。

(前章のパイズ、アイズをひきづっているのか?)

lullabiesとfirefliesで、LF、同じ文字を繰り返します。


次の韻は、

bandとhand。「ァーンドゥ」です。

最後の「gone」(ガーンやゴーン)も似たような発音と言えます。


また、リズムの面では、

Forget your singalongs and your lullabies
Surrender to the city of the fireflies
Dance with the devil in beat with the band
To hell with all of you hand-in-hand
But now it's time to be gone - forever

最初の2行は

Forget your singalongs and your lullabies
Surrender to the city of the fireflies

FとSから始まる単語が多い。cityも耳で聞くと、[siti:]なので、Sともいえる。

頭文字だけでなく、間や語尾も入れると、Lも多いし(4か所)、Gも最初の1行に2,3か所。(一応BやDもある。さっきのCも。)


Dance with the devil in beat with the band

は、D始まりと、B始まり。


To hell with all of you hand-in-hand

H始まり。


But now it's time to be gone - forever

最後はいろいろ混じって、TやBのほかGもでてくる。

そしてlalalalaのあとに、

forever x2でフィニッシュ。

FとV(フとブ)はどちらも下唇を軽く噛んで擦れた音を出し、前者は無音、後者は有音という関係。

最後が「アー」なのは、前章のつぶやきとリンクするかも。

最後の最後にlalalala....とah ah ah...で次の曲につながる。 

これですべて終わる。


まとめると、

F、S、Lなどの頭文字の後に、DやB、Hなどが来て、TやG。

子音アルファベットの順番に単語を並べられ、言葉遊びをしているような感じです(B,C,D,F,G,H,JKは無く,L)。

SやTは、もともと単語の中に多いので、これは冒頭のように続く以外は特筆しなくてもいいかもしれません。

(因みにwやyは、a,i,u,e,oと同じく、uやiとして扱うし、語尾のRなどもaなどの部類です。the, toなどは発音も弱いし、続かない限りカウントしません。 withやto, in,  you(r)は多めですね。)


このように、リズムが豊かで、最後まで物語性があると言えます。


内容について

Forget your singalongs and your lullabies
Surrender to the city of the fireflies
Dance with the devil in beat with the band
To hell with all of you hand-in-hand
But now it's time to be gone - forever

シンガロングとは、みんなで声を合わせて歌うこと。

「あなたのシンガロング(複数形)や子守歌(複数形)を忘れて」

この曲で表れていた、いくつかの短編のことを言っているのか(みんなで歌ったという前提で)。

さかのぼって、この曲の最初の方にも「水の子どもたち」の話が出てくるし、女王の登場も突然で、おとぎ話のようだ。この曲自体が、おとぎ話や子守歌だったというのか。

この部分のバックでは、「アー」というコーラスが聞こえ、この部分自体もシンガロングのようだ。


または、この詩のように、韻をよく踏んだ道徳的なお子様の歌のことを言っているのか。

マザーグースのように、また、フレディの好きなピーター・ラビットなどのビアトリクス・ポッターのように、リズム感にあふれたフレディの楽し気な詩ではある。


しかし内容は、それらをすべて忘れよ、という。

Forget your singalongs and your lullabies
Surrender to the city of the fireflies

そして、この「蛍の街」に屈しろという。

fireflyは「蛍(ホタル)」のことで、lightning bugともいう。


これは、夜の街のネオン・サインだと思う。

Youtubeチャンネルの「QueenTheGreatest」の初期エピソードや、もとになったビデオ「輝ける日々(Days Of Our Lives)」を見ると、初期の頃は契約でレコーディングが使えるのは夜で、ロジャーさんはよく待ち時間かなんかにストリッパーたちの様子を眺めていたと懐かしげに言っていた。

映画でも夜中にスタジオで、「輝ける7つの海」を機材を存分に使ってレコーディングしていた。


夜は、ライブをしたり、人々が仕事を終え、余興に身を投じる時間だ。

人々が日ごろのわずらわしさを忘れ、解放させる時間。


昔聞いたお子さまの曲や、親に押し付けられた道徳心は忘れ、現代の、今の快楽に身を投じようと誘っているのだ。

せっかくショーの世界の人々がいろいろな素晴らしいショーを作り上げてくれているのだから、身を任せて今を楽しもう。

夜のロンドンは特に舞台やロックも盛んで、フレディもとりこになっていたに違いない。


Dance with the devil in beat with the band

直訳は、

「このバンドのビートの中にいる、この悪魔とともに踊れ」


これはBやDなども頭文字一致をしており、言葉遊びの部分だと思われる。

文法がちょっと説明付きにくい。


beatは加算名詞であり、in beatという使われ方は普通しない。

in the beatなのか。ビートに乗ってというような意味か。

to beat the bandだと、「たくさんの量」という意味の慣用句。

このもともとある言葉の音の類似性を利用して、「(ロック)バンド」の「ビート(拍子)」という意味だと思われる。


また、前のセリフにsurrender(降伏する)という言葉がありますが、beatは「打ち負かす」という意味があり、両者は戦いに関係がある単語です。

「町」、「降伏」というと、世界大戦中にナチスに陥落されたパリなどを思い起こします。

降伏とは、何か邪悪なイメージのものや敵に、自分の自由を許すという感じです。surrenderには、快楽などに自分の身を任せるという意味もあります。


withが2回使われるので、the devil = the bandということなのか。


(当時)親たちの世代から見たら、見えない悪魔(1匹)が支配するようなダンス・フロアで踊り、ロックにノる。

ちなみに悪魔はボラプにも1匹出てくる。


To hell with all of you hand-in-hand

「みんなで手に手をとって地獄へ」

3つ目のwith。

親の嫌がる地獄への熱狂も、共犯なら怖くない。


But now it's time to be gone - forever

「しかし、もう行く時間だ、永遠に。」

これは、「しかし」が付いているので、みんな(クイーンの音楽を聴いた人たち)は今は地獄に行かなかったのだと思う。思いたい。

このバンドが去ったのだと思う。

または、そのうちの一人が。永遠に。


これはボラプの「goodbye everybody- I've got to go」

の部分を思い起こさせる。

みんなを残して、真実に向き合う。

ここも、結局主人公が死ぬんだか、死なないんだか、はっきりしない。

ただ、何となく匂わせるのみだ。


「永遠に去る」というのは、このバンドもしくはある一人が、先に地獄に行っているということか。

地獄(つまりサイコーの場所)にみんなを連れて行こうとしたら、先に行くことになって、そこで待っててくれるというのか。

「もう行く時間だ」ラ~ラララ~♪「永遠に(永遠に)」

と楽しげだ。

ここでこの曲は終わる。

パーティーもお開きだ。


しかし、本当に終わるのではなく、実は次の歌に続いている。

「Funny How Love Is(ファニー・ハウ・ラブ・イズ)」である。


この曲については今度語りたい。


まとめ

ということで、これで、クイーンの傑作「マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン」の和訳と分析をすべて終えた。

あまりに長かったので、詩についてもう一度振り返ってみたい。

"The March Of The Black Queen"
Written by Freddie Mercury

Do you mean it
Do you mean it
Do you mean it
Why don't you mean it
Why do I follow you and where do you go

You've never seen nothing like it no never in your life
Like going up to heaven and then coming back alive
Let me tell you all about it -
And the world will so allow it
Ooh give me a little time to choose
Water babies singing in a lily-pool delight
Blue powder monkeys praying in the dead of night

Here comes the Black Queen, poking in the pile
Fie-Fo the Black Queen marching single file
Take this, take that, bring them down to size
Put them in the cellar with the naughty boys
A little n*gger sugar then a rub-a-dub-a baby oil
Black on, black on every finger nail and toe
We've only begun- begun
Make this, make that, keep making all that noise
Now I've got a belly full
You can be my sugar-baby, you can be my honey chile, yes

A voice from behind me reminds me
Spread out your wings you are an angel
Remember to deliver with the speed of light
A little bit of love and joy
Everything you do bears a will and a why and a wherefore
A little bit of love and joy
In each and every soul lies a man and very soon he'll deceive and discover
But even till the end of his life, he'll bring a little love

I reign with my left hand I rule with my right
I'm lord of all darkness, I'm Queen of the night
I've got the power - now do the march of the Black Queen
My life is in your hands, I'll fo and I'll fie
I'll be what you make me, I'll do what you like
I'll be a bad boy - I'll be your bad boy -
I'll do the march of the Black Queen

Walking true to style
She's vulgar 'buse and vile
Fie-fo the Black Queen tattoos all her pies

She boils and she bakes and she never dots her "I's"
(She's our leader)

Forget your singalongs and your lullabies
Surrender to the city of the fireflies
Dance with the devil in beat with the band
To hell with all of you hand-in-hand
But now it's time to be gone - forever

(直訳風意訳)

本気なんですか!?
どうして本気にならないんですか!?
なぜ私はあなたについていくの、そしてあなたはどこに行くの・・・

あなたはそのようなものを見たことがありません、あなたの人生で決してありません
天国に上がってから生き返るようなものです
それについてすべてお話ししましょう-
そして世界はそれを許します
ああ、私に選ぶ時間を少しください
睡蓮の池で水のこどもたちが喜びに歌い
憂鬱な乞食のこどもたちが真夜中に祈るとき

黒の女王がやって来る、突然に
ファイ・フォー! 黒い女王!一列に行進する
この子もあの子も、ちょうどよいサイズに
連れてきて、あのわんぱくなガキどもと一緒に地下室に入れておけ
黒砂糖を少しやってから、ベビーオイルをダバダバかけてごしごし
すべての手と足の爪に黒く塗れ
私達はまだ始めたばかり
これをしろ、あれをしろ、そのすべての騒音を出し続けよ
今、腹がいっぱいになったよ・・・
お前は私のシュガーベイビーになることができる、お前は私の愛しい子になることができる、そうとも

後ろからの声が私に思い出させます
あなたは天使です、あなたの翼を広げてください
光の速さで届けることを忘れないでください
ほんの少しの愛と喜びを
あなたがすることはすべて意志と理由を持っています
ほんの少しの愛と喜び
ありとあらゆる魂が一人の男に嘘をつき
そしてすぐに彼はだますようになり、悟るでしょう
しかし、彼は人生の終わりでさえ、少しの愛をもたらすでしょう

私は左手で君臨し、右手で支配します
私はすべての闇の支配者です、私は夜の女王です
私は今、力を手にした、黒の女王の行進を始めよ
私の人生はあなたの手の中にあります、私は戦います
私はあなたが私にさせたいものになんでもなります、私はあなたが望むことをなんでもします
私は悪い男の子になります-私はあなたの悪い男の子になります-
黒の女王の行進を始めよう

スタイルに忠実に歩く
彼女は卑しく残虐で邪悪
ファイ・フォー!黒の女王!彼女のパイすべてに入れ墨をします

彼女は自ら煮て、焼いて、そして決して歩みを止めません
(彼女は私たちの先導者です)

みんなとの楽しい合唱や子守唄を忘れてください
ホタルの街に降伏しなさい
バンドとのビートにのって悪魔と踊れ
みんなと手をつないで地獄へ
しかしもう去る時間です-永遠に



まず、イントロで、「本気か?」と3回問う。

これは女王の歩み(マーチ)についていっていいのか、不安に思っている。

怒りや戸惑いが抜けても、行き先がわからずについていってしまう自分がいる。


これは、女王という得体のしれないものについていっていいのかというメンバーたちの疑心暗鬼な心境を表す。またはファンたち。

いくら悪魔的魅力があっても、すばらしくても、楽しくても、この女王を信じていいのか。馬鹿を見ないか。破滅への道ではないのか。

結局は地獄に連れていく(一歩手前まで行く)のだが、それが地獄かどうかというのは一元的な見方であり、全てパーティーが終わり、今こうして考えてみると、最終的には天国であったともいえる。


次に始まる物語はナレーションから入り、これはのちに結局は子守歌で、みんなで一緒に歌う歌だということだ。

真っ黒な夜を舞台に、女王の登場するちょっと怖いような物語(具体的に残虐なシーンはない)が始まる。

サウンドは阿鼻叫喚でダークかつ、イギリス古典主義的な、威厳を呼び戻すようなサウンド。


続いて、中心部分に隠されていたのは、まるで今までが悪夢だったかのような白い世界。

時空を超えたような空気感。

ここでも具体的な感じはないが、天使が現れたりする。

ほんの少しの愛(と喜び)を繰り返す。

男の一生みたいなのも予言され、フレディ自体の信じるミッションにも聞こえる。

これが女王の真意なのかもしれない。


そして、再び黒いおとぎ話の世界に戻り、バンドの宣誓みたいなものがなされる。

女王の忌まわしい復活宣言ののちに、歌えるメンバーの声によって忠誠が表現される。

フレディの声に至っては「(あなたの)悪い子になる」とまでという。

そして行進が再開される。


最後に、女王の容貌や性格についてぼかしつつ明らかにされ、意味の分からない言葉が並べられ、エンディング。

全パイにタトゥーし、自分のアイには決してドットしない!

行進は続く。


終わったかに思いきや最後に転調し、子守歌をすべて忘れ、現代の快楽に身を投じるような誘いがある。つまり、このバンドと一緒に地獄へのミステリー・ツアーに誘われるのだ。

つまり、女王の物語は怖くも美しいおとぎ話ではなく、現在につながっているということ。


さらに次の曲に続いていく。


まとめのまとめ

墓場まで持ち去られた謎が残り、50年近くたった今も詩の真意は分からないが、音楽的にもかなり魅力的な曲である。


忘れていた大英帝国やイギリスの威厳を思い起こさせるようなメロディが使われており、それが現代のロックと融合している。

ここがフレディの素晴らしいところだと私は思う。


私はオペラもバレエもクラシックも憧れるし、エクスタシー(恍惚)ではあるが、劇場に行って観たことはほとんどないし、テレビでやっていても退屈に感じてしまう。

好きなのに知りたくない。

とても苦しい。

それに白人の社会のものであり、見に行くのも形式があり、気おくれがあったり堅苦しく感じてしまう。


それをフレディはうまく身近なもの、現代的なものと融合し、楽しませてくれる。

しかも彼自体は純粋な白人種とはいえない。

むしろ白人種だと形式や慣習にとらわれて恐れ多くこんなことはできないかもしれない。それに、若い人はこういった世界をむしろダサいとも感じるかもしれない。よほど才能がないと多大な努力も報われないことが多い世界だとも思う。

フレディですら、躊躇しながらオペラやバレエの世界に入っていっている。

私の予想だが、恐らく衰退の一途をたどる一方だったこういう芸術にかなりの額の援助や寄付を裏で行ったに違いない。

今日、アジア人のバレリーナや黒人種のダンサーなどが現れ、活躍するのも、裏にフレディーがいるのかもしれない。

勿論当人の才能と努力のおかげだとは思うが。


そんなことを考える今日この頃だ。

もう感謝しかない。

ありがとう。


イギリスもきっと感謝している。

王室認定の記念コインにもなった。

素晴らしい音楽での貢献。芸術への貢献。


勇気をもって、色んな業界の風穴を開けた。


あちらで待っていてくれるというので、私も地獄に身を任せたいと思う。

これこそが天国なのだ。

だって天国産(メイド・イン・ヘブン)なんだから。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


Queen Official - The March of The Black Queen (Official Lyric Video)


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マーチ・オブ・ザ・ブラック・クイーン 字幕和訳付き クイーン The March Of The Black Queen lyrics Queen [Fan Art]


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