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映画「皮膚を売った男」断片情報での鑑賞の限界とそれでも敢えて観ること

 「皮膚を売った男」はミステリーとしても上手に纏められ、そのエッセンスに使うにはあまりに過酷なシリア情勢があった。
 シリアが位置する所も国旗、政情が不安定な為多くの難民が生まれていることも知ってはいる、が、そこ止まりの私の断片情報。その時々のネット情報で刹那シリアのことを気にする程度に過ぎない。

 作品の中でサムの母親が「シリア人は瓦礫に埋もれるか海で溺れ死ぬかなのだから」と電話の向こうにいる息子サムが生きていることを喜ぶシーンがあった。女性は婚姻という手段でシリア脱出方法があるとはいえそれは幸福と必ずしも結びつかない。
 シリアに残る選択も、一方脱出を希望してもその先に何一つ幸福の確約がないその行動は寧ろ死と隣り合わせで賭けに近い。
 生きることがとても困難だ。
 それでもサムは故郷であるシリアを捨てることはできない。

 シリアのことが気になり調べた以下サイトからの情報:

【シリア危機6年  2016年は子どもの被害が過去最大 ユニセフ報告書発表】
 2016年は子どもの被害が過去最大
 
昨年、全土で暴力が激化する中、確認されているだけでも、子どもたちの殺害、傷害、徴用・徴兵の事例が急増しました。
・少なくとも652人の子どもが殺害されました。これは2015年から20%増加、2014年に子どもの犠牲の正式な確認が開始されて以降、最悪の数字です。
・225人の子どもが学校で、あるいは学校の近くで死亡しました。
・850人以上の子どもが紛争で戦うために徴用・徴兵されました。この数は2015年の倍を超えます。子どもたちは前線で戦うために徴用・徴兵されており、処刑の執行、自爆、または刑務所の看守などの極端な例も含めて、前線での戦闘行為に就く事例が増えています。
・少なくとも338件*の病院や医療従事者に対する攻撃がありました。( WHO Syria Annual Report 2016より)
「かつてないほどの深刻な苦難が子どもたちを襲っています。シリアに暮らす何百万人の子どもたちは、日常的に攻撃に晒され、混沌とした生活を送っています」とユニセフ中東・北アフリカ地域事務所代表ヘルト・カッペラエレは話しました。「子ども一人ひとりが、健康も幸せも将来も無惨に奪われ、生涯にわたる傷を負っているのです。」

 いまだ一部の地域へのアクセスが難しいことが、子どもたちの苦難の全体像の調査や最も苦しい状況にある子どもたちへの緊急人道支援を阻んでいます。子どもたちは、爆弾、銃弾や爆発以上に、簡単に予防できるはずの疾患によって静かに命を奪われていきます。医療ケアや救援物資、その他の基本的なサービスへのアクセスは、いまも難しい状態が続いています。
 *ユニセフ公式H.P.【2017年3月13日  ダマスカス(シリア)/アンマン(ヨルダン)発】より

シリア危機勃発以降の状況】
 2011年のシリア危機勃発以降、欧米諸国などはシリア政府によるシリア国民に対する激しい弾圧等に対して、シリアに対する経済制裁措置を累次に亘り講じてきている他、アラブ連盟はシリア政府の同連盟参加資格を停止している(2011年11月~)。
 2013年8月のシリアにおける化学兵器使用を巡る問題を受け、シリアは同年中に化学兵器禁止条約(CWC)に加入し、2016年1月までにシリア政府が申告した化学兵器の廃棄を完了した。しかし、廃棄完了以降も、シリアにおける化学兵器使用事案は頻発しており、シリア政府の申告の整合性に疑念が生じている。こうした中、2020年4月、シリアでの化学兵器使用事案について、その使用者を調査していた化学兵器禁止機関(OPCW)は、2017年3月にシリア北西部で発生した化学兵器使用事案に関してシリア空軍の関与を結論づける報告書を発表した。
 シリア危機の政治的な解決に向けて、我が国や欧米諸国を始めとする国際社会は、安保理決議第2254号等に沿ったシリア危機の政治的解決に向けたシリア政府による真摯な対応を求めてきている。国連は、シリア政府や反体制派、関係国などの間での対話を促進するべく、安保理決議第2254号に沿う形で仲介努力(シリア人対話(Intra-Syrian talks)(2016~18年)、憲法委員会(2019年~)等)を行ってきているが、政治プロセスの進展に向けた見通しは立っていない。
 こうした中、シリア国内で戦闘を継続するシリア政府や親体制派民兵組織及び反体制派などの各勢力に強い影響力を有する露、トルコ、イランは、国連の仲介努力を支援すべく、シリア国内各地域での停戦等の実現に向けて「アスタナ・プロセス」を立ち上げた。同プロセスは、これまで、「イドリブや南西部等における緊張緩和地帯の設置」や「イドリブに関する露トルコ合意(ソチ合意)」等の一定の成果をもたらしたものの、シリア全土での停戦は依然として実現されていない。
 *外務省 シリア・アラブ共和国(Syrian Arab Republic)基礎データより

 未だ内戦が継続する中でこども時代を生き延び大人になったシリアの人々がシリア人であるが故に、またも差別という苦痛を味合わされるとするのであれば救いがない。
 コロナ禍の最初の時期は顕著にアジア人は世界の至る所でいわれなき差別を受けた。シリアの方々をはじめとする人種差別と同質で語るものではないが、少なくとも相手を知らないことで差別は生じ易い。
 こうして映画作品が契機になり、今一度シリア情勢を一過性のニュースの流れではなく知ることができたのは幸い。

 

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