記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

「TENET テネット」この映画の見方について

原題:Tenet
2020/アメリカ
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス、クリストファー・ノーラン
製作総指揮:トーマス・ヘイスリップ
音楽:ルドウィグ・ゴランソン
撮影:ホイテ・バン・ホイテマ
編集:ジェニファー・レイム
衣装:ジェフリー・カーランド
あらすじ:満席の観客で賑わうウクライナのオペラハウスで、テロ事件が勃発。罪もない人々の大量虐殺を阻止するべく、特殊部隊が館内に突入する。部隊に参加していた名もなき男(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、仲間を救うため身代わりとなって捕えられ、毒薬を飲まされてしまう…しかし、その薬は何故か鎮痛剤にすり替えられていた。昏睡状態から目覚めた名もなき男は、フェイと名乗る男から“あるミッション”を命じられる。それは、未来からやってきた敵と戦い、世界を救うというもの。未来では、“時間の逆行”と呼ばれる装置が開発され、人や物が過去へと移動できるようになっていた。ミッションのキーワードは〈TENETテネット〉。「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」。謎のキーワード、TENETテネットを使い、第三次世界大戦を防ぐのだ。突然、巨大な任務に巻き込まれた名もなき男。彼は任務を遂行する事が出来るのか?(公式HPより)


比較的冒頭でブルース・リー演じる科学者が「考えるな、感じろ」と言ってくれるので安心して馬鹿になりながら観た。というのは冗談で、この言葉、すごくズルイなとノーランに対して思った。理由は後述。

本稿執筆時点で3回観賞済み。2回以上みるとこの映画の全体像がようやく理解できる。まずこの映画のやりたいことは映画の映画化ではないかと思われる。過去のノーラン作品をみると、ざっくりこう記述することができる。

「インターステラー」→時間を伸長(設定
「インセプション」→時間を圧縮(設定
「ダンケルク」→時間を分解(演出
「メメント」→時間を逆行(演出

「TENET テネット」→時間を逆行(設定

「インターステラー」ではウラシマ効果として、「インセプション」でも夢の中は現実より時間が圧縮されて感じるというこれらは物語の設定として描かれている。「ダンケルク」や「メメント」についてはあくまでも演出であり登場人物たちの視点では時間は通常に流れている。今作については観賞した方はわかる通り設定だ。さらに「メメント」での演出を設定にしていると言える。思えばクリストファー・ノーラン自体が映画に対する愛が溢れているのは観ててわかる。これについては映画秘宝2020年11月号の「永久保存版! 町山智浩の『TENET テネット』完全解明!」でも書かれているのでそちらを参照いただきたい。

すなわち、この難解に感じる時間の逆行という設定を映画の演出として理解しようとするとこの映画の見方が変わる。具体的には登場人物の視点に立つこと。6時間戻るには6時間時間を逆光する必要があるので、それぞれ一筆書きで視点を追っていくと今この人物は何をしているのかがわかる。1回目は主人公の視点で物語を理解しようと追っていくので分からないことは多いのは確かだ。主人公も理解が追いついていない箇所があるからである(途中から主人公が受け入れているのでまた観客は置いてかれるわけだが)2回目を観る機会があれば是非セイターの視点を追っていくと、物語の全体像をようやく掴めると思う。なおニールの視点は映画上で描かれていない箇所が多いので想像で補完する必要がある。

以上より、設定と視点の考えの上で今作を観ると、この映画の難解さは設定のややこしさではなく、展開スピードの速さにあると思う。各シーンの意味を理解するために、じっくり考えているともう次のシーンに進んでいるので、脳のリソースが物語を追う一点に占められてしまう。これは2回目を見るとそれぞれの細かい伏線が目で追えるのでわかりやすくなる。

しかし冒頭でも述べた通り「考えるな、感じろ」でもこの映画は楽しめる。それは圧倒的な絵作りと俳優陣の素晴らしさにあると思う。エリザベス・デヴィッキの美しさ(映画によく出てくるムキムキマッチョなロシア人の下っ端より身長が高くて笑った)、ケネス・ブラナーが本当に恐くてちびりそう(本当に私生活でDVしてそう)、ロバート・パティンソンが渋すぎてカッコいいので次回のバットマンにかなり期待。ジョン・D・ワシントンも「ブラック・クランズマン」の時思ったけど、本当に静かで渋くてカッコよくてアクションが素晴らしい。などなど…
そして、それもまたこの映画の楽しみ方の一つでもあるので、ノーランはズルい

おわり



追記

3回観れば十分かなって僕は思いました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?