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【ライブレポート】AUTUMN BLUES×新宿Cat’s hole共催「解放厳禁2020」

文:アップルパイ中西

東京メトロ副都心線、都営大江戸線 東新宿駅から明治通りを北へ進み、閑静な住宅街に繋がる路地を曲がると「こんな所にライブハウスがあるんだ!」と誰もがリアクションしそうな一角に堂々と門を構える新宿Cat’s hole。入口の階段を下って中に入ると、受付を目の前にしてスタンディングで軽く15人は入れそうなゆったりとしたBARスペース。椅子も常設されていて、長丁場のイベント時に参加されたお客様の休憩場所としても利用ができる。

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要となるライブスペースはオールスタンディングであれば150~200名ほど入れそうな長方形式のフロアで、ステージとの高低差もほぼない平行な作り。オーディエンスとの距離感を肌に感じれる空間になっている。広々としたフロアなので、イベント出演者・主催者が自分達の意向に合わせて物販ブースを自由に配置できたり、プロジェクタースクリーンも完備しているので転換中にプロモーション動画を流す事も可能。

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そして、アマチュア・インディーズバンドのモチベーション向上に繋がる一つの要素としては「楽屋の広さ」も挙げられる。出演者とお客様どちらもストレスなくライブを楽しむ事が出来るハコと言えるのではないだろうか。

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AUTUMN BLUESデジ配記念イベント「解放厳禁2020」

今回は、そんな新宿Cat’s holeにて2020年2月27日に行われたAUTUMN BLUESとの共催イベント「解放厳禁2020」のライブレポートを公開。同月16日に配信開始したAUTUMN BLUESのファーストアルバム「想いから沈む心へ」のデジ配(デジタル配信記念)イベントであり、対バンには円盤少女黒船ジェネレーションが名を連ねた。

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本イベントはAUTUMN BLUESボーカルである島田と、新宿Cat's holeブッキング担当の薗田氏が企画したイベントで、当日はフリーチケットという斬新なチケット方式も導入。

※フリーチケットとは
お目当てのバンドがいらっしゃらないお客様に購入チケット(当日券)。当日のライブを観た上で気に入ったバンドを受付にお伝えいただければ¥500キャッシュバック。結果として前売り券と同等のお値段でご入場いただける新しいチケット方式。

そんな挑戦的な手法も取り入れた今回のイベント、スリーマン形式で行われた当日の模様をお届けする。

【1番手】大阪発。『円盤少女』が伝える「”すこしふしぎ”な世界」と「人生哲学」。東西問わず精力的に活動を行う彼らのステージをレポート!

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トップバッターで登場したのは2011年に大阪で結成し、今もなお精力的なライブ活動を行うロックンロールバンド・円盤少女。

ジャンルを「S.F.(すこしふしぎ)ロックンロール」と定義づける彼らは過去にgo!go!vanillas「SHAKE」TOURに参加、同TOURにて爆弾ジョニーや黒猫チェルシーと対バンするなど現在のライブハウス音楽シーンにてその音楽性を果敢に発揮している。2019年に初期メンバーとして活動していたドラマーの脱退を機に活動拠点を東京に移し、同年に新メンバーを迎え4人体制として新たに始動した。

以前、都内のライブハウスでAUTUMN BLUESが円盤少女と共演した事をきっかけに、今回のイベント出演へのオファーを出した。

AUTUMN BLUES島田曰く「日本人に慣れ親しんだ楽曲性に溶け込ませた独特の歌詞で独自性もしっかり見出していて、技術の伴った無駄のないステージング能力にも長けていて、勉強になったし、すぐにファンになった。ストレートなメッセージを伝えているように見えて、歌詞を分解していくととてもセンシティブで後ろ向きな気持ちが含まれているものもある。しかしそれをポジティブな楽曲性質と掛け算する事で、初めて聴いたリスナーの”入り込みずらさ”を完全に払拭している。これは人間性に加えて芸術性が伴わないと絶対に出来ない事だと思う」との事。

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ファーストフルアルバム1曲目に収録されている「バンバンバン」からスタートしたステージ。『僕の心も体も本当は全部君のものだったら』という歌詞に見え隠れする”現実では口に出す事のできない繊細な男性の心情”を、ノスタルジックな雰囲気を漂わせながらもVo.の和田がポップに歌い上げる。

円盤少女は”こんな事出来たら良いな”というIFの世界観がふんだんに盛り込まれた楽曲が多い。しかしながら藤子・F・不二雄の作品がそうだったように、S.F.(すこしふしぎ)で胸が躍るような世界を求めながらも、時に残酷で時に冷徹な人生哲学が実は込められているようにも感じる。

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和田の書くそんな独創的な詞に彩りを加えるように、木邑のパワフルながらも精密なドラミングに、メロディを奏でるような川崎のベースがドライブをかけてビッグバンにも似た爆発力のあるサウンドを作り出しフロアを揺らす。ことロックンロールバンドの場合は、ロックギターが前に出て、リズム隊が一歩後ろに下がりがちになるパターンが多いが、円盤少女はリズム隊の主張が激しく凶暴だ。”前に出る支柱”という言葉を用いるのが最適だろう。

勿論ギターサウンドも凶暴だ。Gu.キャイの奏でる音は往年の使い古された所謂”ロックンロール的”なものではない。円盤少女の楽曲をよりインパクトあるものにするために、前にただ突き抜けるのではなく、空間全体を包み込む事でハーモニーの飽和状態を作り出そうとする。アンサンブルを牽引しながらも個性豊かなサウンドを奏でていた。

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円盤少女は45分の持ち時間をほぼ休みなく進行していったが、彼らひとりひとりの表情から一切の疲れは感じられなかった。「あと2時間くらい続けても良いんだぜ?」と言いだしそうな程に、とても楽しそうなステージングを観せてくれた。

世の中には不条理な事が沢山ある。理想を願っても叶えるのが難しい事ばかりだ。だからこそ、円盤少女のS.F.ロックは心に響くものがある。芯を食ったメッセージとドライブ感あふれるサウンドは、フロアにいるお客様全員を”すこしふしぎ”な世界へと引き込んで離す事はないだろう

ラストの「33回転」まで全力で走り抜け、彼らは笑顔でステージを去って行った。

【円盤少女セットリスト】
1.バンバンバン
2.港
3.キューティー
4.あの娘のギターはタイムマシン
5.自由と自由帳
6.レイニーデイブルース
7.幽霊船
8.特急はてな号
9.大脱走
10.数学
11.33回転

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【2番手】多彩なロックサウンドを武器とするジパング代表ガレージロックバンド『黒船ジェネレーション』に観た「楽天の追求」

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円盤少女がその内なるメッセージ性への強さを持っているとするならば、黒船ジェネレーションは「そのバンドとしての概念」こそが強みであると言える。公式HPのプロフィール文章からもそれは伺える。

テキサス生まれのブルース☆ギタヤマは、黄金の国ジパングに売り飛ばされた妹を探すため訪日。荷物は銀貨5枚とバイソンの骨で作られたギターだけであ った。妹は獄中出産で既に他界しており、野生のGorillazに育てられたその子供は発見当初「俺は手島恭平、元CEOだ!」など意味不明な発言をしており巣鴨プリズンに幽閉される。

メンバー個人がどんな人生背景を持っているのか、何故今の音楽性に至ったのか。そのようなメッセージ性質を強めていく数々の要因を一切取り除き、”現在”の形、言うなれば”結果”のみでフルスイングする事が自分達のスタンスなのだと主張しているように思える。

円盤少女同様、都内のライブハウスでの共演をきっかけに交流がはじまり、AUTUMN BLUES側から今回のイベントへのオファーを出した。

AUTUMN BLUES島田曰く「楽曲を聴く前にそのバンドの事を好きになってしまう事がある。人間性、人柄が極めて良い人達である場合にそう言う事が起きる場合がある。それは現場にいる人間しかわからない。黒船と初めて共演した時、フロアにはお客さんがいなかった。そんな状況にも関わらず、全力でお互いのステージを盛り上げ合い讃え合った。”どうせなら楽しむ方が断然得だ!”というスタンスを彼らは貫いていた。打ち上げではただただ馬鹿話をした。もしも彼らがロックバンドじゃなくて4人組のコントチームだったとしてもイベントには絶対誘う。黒船がいてくれるだけでイベントを頑張ろうと言う気持ちになれる」との事。

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今回残念ながらBa.尾田が体調不良で出演辞退という事もあり、サポートメンバーを率いてのステージとなった黒船ジェネレーション。

「演奏できる楽曲も限られているので少し喋ります」と、単身ステージに上がり口上を述べるGu.北山。その手には昨年末に発売をするや否や、爆発的な人気からすでに50万部以上をも売り上げていると言われている田中みな実の1st写真集が。しかも表紙には黒船ジェネレーションの各メンバーのサインが添えられている。「これからジャンケン大会をして勝った人に差し上げます!」との北山の言葉に、フロアの男性陣からは歓喜と興奮がミックスされた歓声が沸き上がる。(※ジャンケン大会の勝者はAUTUMN BLUES島田に。惜しくも負けてしまった他の男性陣から「貸してくれ」とせがまれている一幕も)

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北山の「TRUE LOVE」の弾き語りカバーをSEに、各メンバーが登場。ドラムの合図で一斉に音を出すや否や、Vo.手島の切れ味鋭い歌声がフロアにいる全員の耳を突き刺した。この瞬間からCat's holeは黒船ジェネレーションの独壇場となっていく。

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北山のギターサウンドを一言で表すのであれば「オプチミスティック(楽天、楽観主義)」だと言えるだろう。世のギターサウンドを喜怒哀楽で例える事がある。例えばジョン・フルシアンテに見られる「乾いた泣きのギターサウンド」であれば哀。それに対して北山のサウンドやプレイスタイルは「くよくよしてないで楽しく弾いてれば良い」と言わんばかりの楽に満ち溢れている。ステージの彼を観ているとバンドでギターを弾く楽しさを全身を使って表現しているかのように思えるのだ。

心地良いドラムサウンドに惹きつけられてふとステージ後方に目を向けるとDr.上小鶴の「安定しながらも主張性の強いドラミングテクニック」の要因が良くわかった。パワフルに叩きながらも一つ一つの動作が非常に素早い。一目で彼のバックグランドに大きく影響を与えているジャンルがメタルかハードコア系統なのだろうという事がわかる。しかしながらも、彼のスタイルはガレージロックともとても上手く調和している。この理由は明確で、手数を加えてもグルーヴ感を崩さないからだ。まるでヴィニー・ポールかのような波のあるサウンドを作り出している。

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黒船ジェネレーションのステージに垣間見られる楽天主義的なスタンス。それは手島のMCによって確証に繋がっていった。「ギターの弦を張り替えないといけなかったんですけど、忘れてそのまま出てきちゃいました」。この一言に全てが凝縮されている。

音楽は「音を楽しむ事」。世の中は、物事全てに理論を用いて説明をしようとする傾向がある。しかしその傾向を黒船ジェネレーションにぶつけたところで彼らは微動だにしないだろう。45分のステージを持って黒船ジェネレーションが成した功績は、自分達以外のフロアのお客様に対しても楽しさを分け与えた事

彼らのステージングを観て酷評をする人間がいるならば、相当な天邪鬼か、嫉妬深い性格の持ち主であると言えるだろう。

【黒船ジェネレーション セットリスト】
1. Galileo
2. 1858
3. 月に吠える
4. Steppin’ Out
5. Disco Punk
6. I’m Going Down

【黒船ジェネレーションの音源視聴はこちらから!】
・Apple Music

【3番手】『AUTUMN BLUES』が唱える”フラストレーションパンクロック。「社会で頑張る全て人の負の感情を肯定する」ための確固たる意志とは。

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2月16日に配信開始をした1stアルバム「想いから沈む心へ」の楽曲をもってして今回の企画を立ち上げたAUTUMN BLUES。

フラストレーションパンクロック(フラストレーションが鬱積してパンク寸前の心を解放するために掲げられた彼らの独自ジャンル)を用いて社会の中で頑張る全ての人の負の感情を肯定し、「秋のような焦燥感」というテーマを帯びた哀愁溢れる楽曲が特徴的な彼ら。「解放厳禁2020」という今回のイベント名も”世の中で我慢を強いられるような心情を解放しよう”という皮肉が込められたものになっている。

円盤少女の世界観、黒船ジェネレーションのホスピタリティによってイベント全体の空気も温暖化された21:00過ぎ。AUTUMN BLUESのステージが始まった。

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『何のために今日も生きる、何のためでもなく』というインパクトのある歌い出しが特徴的なアルバム表題曲「想いから沈む心へ」。『闇だけが光っている』というAUTUMN BLUESらしいサビに続く本曲だが、セットリスト1曲目であるにも関わらず、Vo.Gu.島田は全ての体力を使い切ろうと言わんばかりに歌い上げていく。

その姿は「自分達が伝えようとしているメッセージは、誰かにとって必ず必要になるものだ」という強い信念にも感じられ、「そんな自分達の役割を一生突き通していく」という宣誓にも感じられた。ピッチシフトしたギターサウンドを用いた特徴的なギターソロもふんだんに披露し、AUTUMN BLUESの楽曲が持つ悲壮感や儚さの濃度をここぞとばかりに高めていく

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マイクに向かって自分が伝えるべきメッセージを高らかに歌う島田に対し、Ba.伊藤はバンドにおけるグルーヴ感を損なわない為に必要な”その他全ての役割”を一手に担う。時にドラムと向き合い、時に最前に立ち、時にギターとの張り合いを魅せる。終始メンバー2人の支柱となり立ち振る舞い、ボーカルがマイクから離れられない時にはフロアのお客様に対してアピールを図り、真っ向からの挑発にもしっかりと受け答えをしていく。自分にしか出来ない事を100%の力を持って全うしようとしている

楽曲によってはBPM200を越えるAUTUMN BLUESだが、伊藤はフィンガリングスタイルを一切崩さない。ピッキングが一般的なパンクロックのベーススタイルに対して、「俺はこうやるから!」という独自のスタイルを突き通そうとする一本気な人間性が見える。

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強い主観力を持つ島田、達観した客観力を持つ伊藤。性質は違えど双方共に確固たる自分を持つフロント二人の後方では、Dr.鈴木が小柄な身体からは想像も出来ないスラッシュドラムを奏でている。楽曲の性質上、45分休むことなく走り続ける事を要されるドラムだが、彼は「空調が効きすぎているんじゃないか」と言わんばかりの涼しい顔で終始プレイするスタンスを崩さない。

2ビートの疾走感あふれる楽曲もあれば、6/8拍子のスローテンポバラードまで持ち合わせているAUTUMN BLUESの楽曲達をいとも簡単に捌き、1曲1曲の世界観に合わせて強弱をコントロールしていく

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島田はMCで「こうしてる間にも、社会の中で心が追いやられてしまっている人達が沢山います。自分の信念を変えずに社会を渡っていくために必要な事はきっと、”何かに寄り添ってもらえる時間”なんだと思います。僕達の楽曲も誰かにとってのそうでありたい」と語った。

『万人に受け入れられる楽曲は他の人がやってくれるから、自分は”自分と似た経験をした人達”に届けられる楽曲を作っていきたい』。彼の先の発言は、そんな意思の表れのように感じた。

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「アンコールはありません!」と宣言し、用意していたセットリストを完走しても尚、フロアからは「もう1曲!」の声が。予定にないアンコールに驚いたメンバーだったが、スタッフからも時間の許可をもらい「脊髄反射」を持ってステージを終えた。

【AUTUMN BLUES セットリスト】
1. 想いから沈む心へ
2. 陽の出ていない頃
3. 二十五歳
4. 過去を振り返りながら
5. サードビアーを片手に
6. 其之儘
7.時代(中島みゆき COVER)
8.アイロニカルモラリティー
9.この身にさえも彩りを
10.薄暮
EN.脊髄反射

【AUTUMN BLUESの音源視聴はこちらから!】
・iTunes Store
・Google Play Music
・Apple Music
・Spotify
・AWA
・その他ストリーミング配信サービス

【最後に】

今回のイベント通して感じた事は「心に決めて突き通し続けるスタンスが、結局は自身の音楽性にも繋がっていく」という事。円盤少女も黒船ジェネレーションもAUTUMN BLUESも、これまでに培った自分達のスタンスをここぞとばかりにステージ上で解放していた。

近い将来この3バンドの共演をまた観てみたい。その時は、今より何倍もの規模のアリーナか、それとも小さな空間に大きな夢が溢れたライブハウスか。

【文】アップルパイ中西
1985年生まれ。横浜市出身。カウンターカルチャーの開拓を続け、フリーランスとしてライター、イベント運営などの活動をしている。パインアップル森安は彼の一番弟子に当たる。

円盤少女&黒船ジェネレーション photos by Shuzo Shimada
AUTUMN BLUES photos by Pansy Seki

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フラストレーションパンクロックバンド【AUTUMN BLUES】公式noteアカウント。主に運営スタッフによるライブを始めとした活動のレポートなどをアップしていきます。ボーカルギター島田修三/ベース伊藤昂志/ドラム鈴木貴之
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