曲の構成に着目してアニソンを聴いてみる

Nassanと申します。
初めての投稿のため緊張しております。

最近何かと音楽理論、とりわけアニメソングに使われている音楽理論について人目に触れる機会が増えてきたように感じます。

何かと話題になるコード進行を始め、アニソンを構成する要素はたくさんあるわけですが、

本稿では、特に”曲の構成”について見ていきたいと思います。

アニソンに限らず、邦楽の大半の基本的な曲のフローは

イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ(Cメロ)

のようになっています。
(余談:なぜこのような構成が、"特に"日本で普及したのかを議論することはかなり興味深いことだと思います。)

アニメソングでもとりわけOPでかかる主題歌のTVサイズは、
89秒
という制約があります。
(なぜ90秒じゃないのかというと、頭と終わりに0.5秒の空白を入れなければならないためです。)

イントロをどうやって始めるか、
Bメロをどうするか、2番をどうするか・・・
というのは作曲家の楽しみでもあり、悩みのタネの一つでもあります。

フル尺ならこれらに、Dメロ(Cメロ呼称の人もいる)や大サビが加わってきます。

フル尺で聴くと印象が変わる曲などもありますよね。

それではまず、アニソンの1番の構成について見ていきます。


■前奏から始まるパターン

オリオンをなぞる
作編曲:田淵智也

少女交響曲
作編曲:田中秀和(MONACA)

オーソドックスなパターン。
前奏が気分を高めてくれます。

ライブなどでイントロが流れて
「うおおおおおおキタアアアア」ってなるのはこのパターン。

■前奏無しでいきなり歌から入るパターン

いきなり作品の世界観に引き込まれる感じがします。

-サビから始まる

Star!!
作編曲:田中秀和(MONACA)

Ready!!
作編曲:神前暁(MONACA)

SHINING LINE*
作編曲:石濱翔(MONACA)

とても王道な感じです。
いわゆる"全体曲"的な印象を強めています。


-Aメロから始まる

灼熱スイッチ
作編曲:田中秀和(MONACA)

なんの前触れもなくAメロから始まると
ふいをつかれたような印象を受けます。

クレッシェンドしていく展開がサビへの期待感を高めていきます。
詳しくは、初学者のための田中秀和[灼熱スイッチ編]


-印象的なフレーズを頭に持ってくる

イントロにA,B,サビとも違うメロディをもってくるパターン。
電波な曲に多い印象です。
この構成のアニソンも結構あるので、名前をつけたいですね。

クラシック的に言ったら”主題”とか”モチーフ”みたいな感じでしょうか?


ぼなぺてぃーと♡S
作編曲:y0c1e

恋は渾沌の隷也
作編曲:田中秀和(MONACA)

これはメロというよりもむしろキメフレーズに近い感じです。

桜のあと(all quartets lead to the?)
作編曲:田淵智也

はじめてのかくめい!
作曲:田淵智也 編曲:田中秀和(MONACA)


-Aメロにサビ後のメロをもってくる
個人的に赤いスイートピー構成と勝手に呼んでます。
安心感、安堵感を与えてくれます。

輝きのエチュード
作編曲:石濱翔(MONACA)
この曲は赤いスイートピーのオマージュですね。

16歳のアガペー
作編曲:広川恵一(MONACA)
上記の前奏無しパターン。


-Bメロから始まる

恋?で愛?で暴君です!
作編曲:田中秀和(MONACA)
先ほど紹介した、印象的なフレーズを頭に持ってくるパターンに若干近いですね。

■Bメロがないパターン

ン・パカ マーチ
作曲:有澤孝紀 編曲:外山和彦

今地球がめざめる
作編曲:池辺晋一郎

ライオン
作編曲:菅野よう子

Aメロの後すぐサビに向かいます
ちょっと洋楽チックな構成です。


■サビのみのパターン

ハム太郎とっとこうた
作曲:河井リツ子 編曲:岩崎元是

この曲はなんとサビだけを永遠に繰り返すという漢気溢れる一曲。
前奏のあと、ひたすらサビを繰り返します。


■アウトロにどんどん展開していくパターン

ようこそジャパリパークへ
作編曲:大石昌良

以前テレビ番組でも紹介され話題になっていましたが、

「89秒でいかに作品世界を説明できるか」

というアニソンの限界に挑戦したような曲です。

サビ後のアウトロの展開が凄まじく、Eメロ,Fメロと名付けてもいいくらい展開がめまぐるしく変わっていきます。

以下は、フル尺で聴いたときにインパクトのある曲の構成です。


■2番でガラッと雰囲気が変わるパターン

2番以降で1番と曲構成が変わるパターンを紹介します。

-Aメロがない

ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C
作編曲:前山田健一

間奏後、いきなりBメロに飛びます。
2番はB→A→サビと展開していき、電波な楽曲の雰囲気を助長しています。


-Bメロからサビに行かない

ドラマチックガール
作編曲:田中秀和(MONACA)

そのままギターソロなどにつながるパターンが多いです。

-1番と全く違うメロ

Wonderful Rush
作編曲:河田貴央

Rising Hope
作曲:田淵智也 編曲:堀江昌太

どちらも2番はラップのようなパートになり、メロも1番とは全く違うものになっています。


-1番と2番との間奏が長い曲

キングゲイナー・オーバー!
作編曲:田中公平

構成が変わるわけではないですが、とにかく間奏が長い曲です。
熱唱系のロボットアニメソングということもあり、間奏のギターソロが1分近くあります。
2番に戻るときのキメのフレーズがかなり強烈かつプログレッシブです。


檄!帝国華撃団
作曲:田中公平 編曲:根岸貴幸

同じく巨匠・田中公平先生の楽曲です。
ギターソロを含む長い間奏のあと、この曲の代名詞とも言えるダイアローグが挿入されます。

■Dメロ

「Dメロは日本固有の文化である」
と声優の山下七海さん(seibinさん)も言っておられます。(7:40~)

スキノスキル
作曲:田中秀和(MONACA) 編曲:広川恵一(MONACA)

Dメロと言えばMONACA、
MONACAと言えばDメロということわざもあるように(?)、
特にMONACAの楽曲はDメロで良い意味で裏切ってくれる曲が多いように感じます。

極北は

オリジナルスター☆彡
作編曲:田中秀和(MONACA)

2番サビ後、曲が変わったのでは!?というくらい
激しい転調のアップダウンを繰り返します。

ここまでくると前衛芸術の域です。


■落ちサビ

最後のサビの前に挿入される静かなサビのパートを落ちサビといいます。
楽曲最後のサビを存分に盛り上げるために、テンションを一度落とす意図があります。

伴奏の楽器がここでぐっと減り、ボーカルにスポットライトが当たります。
Dメロ→落ちサビ→ラスサビ(大サビ)と進行していくことが多いです。

Staple Stable
作編曲:神前暁(MONACA)

3:40~からが落ちサビです。
ここでアコギと歌だけになり、徐々他の楽器が加わって最後のサビにつながります。

落ちサビで下のキーに転調させて相対的にラスサビで上がるようにしたり、
逆にラスサビでキーを上げて盛り上げることもあります。


■まとめ

曲の構成だけをとってみてもこれだけバリエーションに富んでいることが分かりました。
これらの曲構成には、作家の好みや傾向・作品のもつ世界観など様々な要因があると思うので、

より深く考察すると新たな知見が見えてくるかもしれません。

MONACAしかねえじゃねえか!というツッコミは・・・許してください笑


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