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自作曲「ロス・アラモスに花束を!!」を解説してみる

2月に書いた記事が予想以上の好評をいただいており,自分でも驚いています.

こちらの記事の末尾でも紹介しているとおり,今年の3月に行われたM3にコンピの中の一曲という形で参加させていただきました.

この楽曲を通して,おかげ様でいろいろな方からの好評をいただけて大変自信につながったという貴重な体験をさせていただきました.同人とはいえ創作をしている者の端くれとしては大変な譽れであります.

DL販売も取り扱っております!

自分の作った曲について,聞かれてもいないのに自ら解説をするのはとても野暮なことと感じつつも,曲の作り方や歌詞の作り方を共有するということに何らかの価値を見出せるのではと思いnoteに書きなぐっている現状であります.

また,この曲を制作していた2019年9月〜2020年2月までの期間はスペイン・バルセロナに留学していた期間でもあり,留学中に得た知見・感じた事などをそのままストレートにぶつけた楽曲になっています.

さっそく,以下に歌詞全文と解説を載せます.

ぜひ曲を流しながら見ていただければ嬉しいです.


「ロス・アラモスに花束を!!」
  
せーの!

いちにの さんしで 靴ひも ほどけちゃった!
人生観 死生観 テイクイットイージーで! ノンノン

暴力!!抑圧!! トルネード投法で ポイポイ
お気楽!?道楽!? してみなさい!

調子乗って フルスピード
アバンチュール いいでしょ 結構サマになる
ちょっと待って! こっち向いて
余裕ノーマリゼーション、上等 見渡せる

ピンチはピンチ チャンスはチャンス
ってそれ全部トートロジーかもね
未来 ジブンのVISIONでしょ?

ちょっとハミ出す くらいで行こう (本気をだす)
隣の芝には ラウンド・アップを
お気に召しませ? 低空で飛行 (選りすぐり荷物)
やがて滅びる運命なんて 勝手が違うし…I don’t care!
夢のようでホントの世界 よろしくね、新世界

倒錯なLOVEの真実に うんざりなスピーカー演説鳴らして・・・
いつまで?

Ah 空の色、灰色
予報は晴れなし 予定はやむなし
おうちに帰ろう

Can’t say NO!!の法則に従い
つのる意味深長のイミテーション
なりふり構わず Claimつけさせない
それが我が闘争 We are the dreamers!

訳もなく悲しくなるとき 勇気づけてくれる
ファンファーレ 聞こえる
見ていて

裸足で駈け出すGoing My Way!(その地平の先)
ガレキの向こう 見える世界
鳴らせ!クラクション Take off、検討(法令は守れ)
よもや裏切る計画でも 格の違いってあるよね?
ハロワ表示だけじゃ楽しくないんだし
辞退表セット中

渚に寝転んで 脳内フル回転の堂々
One Chanceあるならばきっと 今可能性がBlooming! Blooming!

裸足で駈け出すGoing My Way!(その地平の先)
ガレキの向こう 見える世界

鳴らせクラクション Take off、検討(法令は守れ)
よもや裏切る計画でも 格の違い、見せつけよ!
午前8時 脱走計画で颯爽
逃げよ! 

■曲名について

まず曲名「ロス・アラモスに花束を!!」についてですが,「〜に花束を」構文は言わずもがなアルジャーノンから来てますね.

で,ロス・アラモスってなんぞやという事なんですが,これはアメリカにある国立研究所で,マンハッタン計画の中心となった研究所ですね.

ここで引用したのはイデオロギー的なことを言いたいというのではなくて,かの有名なデーモンコア臨界事故についてです.

この映画を見てわかる通り,この実験はとても杜撰な労働環境下で行われていました.つまり何を言いたいかというと・・・

この曲は,

他人の目を気にせず生きよう!

全てを忘れて旅に出てしまおう!

ブラック企業をはじめ社会の理不尽に全力でNOを突きつけてやろう!

という曲なんですね.

これだけ見るとすごく説教臭い感じになってしまうので,一見するとポップで楽しい曲なんだけど,よく聴くとロックな歌詞だよね‥‥というイメージで作りました.

テーマは以上ですが,楽曲の大まかなコンセプトは「電波ソング」で,Wake Up,Girls!「恋?で愛?で暴君です!」を大いに参考にさせていただきました.

それでは細かい部分にクロースアップして書いてみます.ちなみにこの曲は曲先で歌詞は後付けになります.

■イントロ

せーの!

いちにの さんしで 靴ひも ほどけちゃった!
人生観 死生観 テイクイットイージーで! ノンノン

暴力!!抑圧!! トルネード投法で ポイポイ
お気楽!?道楽!? してみなさい!

まずイントロ.この歌詞を思いついたのは昨年11月,スペインはフィゲレスというフランス国境に近い田舎町を観光しているときに思いついたものです.

バルセロナから1時間ほどで行けるこのフィゲレスは,シュルレアリスムを代表する画家サルバドール・ダリの故郷で,ダリの世界観を体現したような「ダリ劇場美術館」があります.

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ダリしかりピカソしかりミロしかりガウディも・・・,スペイン出身の芸術家って奇抜な人が多いなぁなんて思うのは気のせいでしょうか・・・?

そんな影響が少なからず曲にも出たのかな,なんて思います.

イントロの変拍子はRush「YYZ」Dream Theater「The test that stumped them all」みたいな,プログレメタルな変拍子のキメフレーズで,7/8+7/8+4/4+4/4と拍子がスイッチするフレーズになっています.
ちょうどこれを作っていた時期にRushのドラマー,ニール・パートが逝去したというニュースを目にして,トリビュートのつもりで作りました.R.I.P......

■1番Aメロ


調子乗って フルスピード
アバンチュール いいでしょ 結構サマになる
ちょっと待って! こっち向いて
余裕ノーマリゼーション、上等 見渡せる

続いてAメロですが,これ以降のパートを作ったのは間が空いて12月の20日頃でした.というのも,留学先の大学からクリスマス休暇が与えられていたので休暇を使ったヨーロッパ旅行を計画しており,今回は初めてのボーカル依頼をしたかったので,休暇前に歌詞を仕上げて旅行中にボーカルデータが来たら良いなあという感じで計画を立てていたからです.旅行の前日にバーッと書いた感じです.

アバンチュールってフランス語で恋の冒険って意味ですけど,僕が好きな映画にゴダールの「勝手にしやがれ」って映画があって,高校くらいのときにたまたまBSでやってるのを見つけて見てみたら,話の中身(特にセリフ)は意味が分からないんだけどビジュアルが鮮烈で・・・という,そんな感じのイメージですね.

最後の,「余裕ノーマリゼーション」って何なんでしょうね笑

こういう一見意味ありげでナンセンスな感じの作詞は全体的にUNISON SQUARE GARDEN田淵さんの詞をに影響を受けていると思います.メロディーと発声・発音の心地よさがピッタリハマる言葉といいますか・・・

歌詞ってそれ単体で存在しているわけではないので,むしろ意味が通っていなくても良いというか,ある種,錯乱しているようなワードを当てた方が歌詞としては広がりが出るなと僕は考えてます.ただただ意味があるものを繋げても歌詞ではなくて文章ができてしまうので・・・(もちろん,文章のような歌詞でメッセージを強めたり,みたいな作詞方法だってあります)

これはちょっと極端な例ですが,作詞についてこんな動画があったり・・・(オチまで完璧すぎるのでお時間があればぜひ最後まで見てください笑)

■1番Bメロ

ピンチはピンチ チャンスはチャンス
ってそれ全部トートロジーかもね
未来 ジブンのVISIONでしょ?

この辺は,大学にまで入ってモラトリアムを伸ばしに伸ばしていながら将来に対して楽観的すぎる自分に対する自己嫌悪というか・・・,トートロジーって同義語反復って意味ですけれど,そういう論法を使って自分を納得させてるのってどうなのよ!という戒めなのか鼓舞なのか,みたいな意味合いですね.

■1番サビ

ちょっとハミ出す くらいで行こう (本気をだす)
隣の芝には ラウンド・アップを
お気に召しませ? 低空で飛行 (選りすぐり荷物)
やがて滅びる運命なんて 勝手が違うし…I don’t care!
夢のようでホントの世界 よろしくね、新世界

先ほどモラトリアムのお話が出ましたけど,サビでは社会に出た人間のことを歌っています.

ラウンド・アップっていうのは除草剤の商品名ですね.中学のときに見た,遺伝子組換え作物の脅威について描いたドキュメンタリー映画から着想を得ました.

低空で飛行(選りすぐり荷物)ってなんぞやってことなんですが,

留学中はバルセロナを拠点にだいぶヨーロッパ旅行をさせてもらったんですけど,LCCがたくさんあってかなり安く飛行機で移動できたりして,シェンゲン協定もあって本当に国内旅行みたいな感覚でEU間を旅行できちゃうんですね.(往復2000円でイビサ島まで行ったりしました)

ただ,航空会社にもよるんですがLCCは荷物の決まりがかなり厳しく,重量やサイズを超過すると罰金をかなり取られたりもするのでもし利用する場合は規約は穴が開くくらい読んでおいた方が良いです.(そういうところでお金を稼いでいたりする・・・)

■2番Aメロ


倒錯なLOVEの真実に うんざりなスピーカー演説鳴らして・・・
いつまで?

Ah 空の色、灰色
予報は晴れなし 予定はやむなし
おうちに帰ろう

Can’t say NO!!の法則に従い
つのる意味深長のイミテーション
なりふり構わず Claimつけさせない
それが我が闘争 We are the dreamers!

ここからのパートは1番の繰り返しでなく,全く別のパートになります.2番Aメロとざっくり書いてしまいましたが厳密には3パートに分かれていてそれがめまぐるしく変わります.

ギターのタッピングが印象的なパートはThe band apart「from resonance」みたいな感じで.

16ビートの超速なハイハットの刻みはBe mine!の間奏とかでもやってますね.

うんざりなスピーカーっていうのは,御茶ノ水行くといっつも街宣車が演説してるなあ・・・みたいな風景です.

続いてはメロトロンと軽快なピアノが印象的なパートですが,ここはモロビートルズですね.ちょっとモタった感じのタム回しなんかも意識しました.

ここの歌詞は天気について歌っていますが,ビートルズの故郷イギリスをはじめとして冬のヨーロッパってめちゃくちゃ天気が悪いのでそこから.

年中晴れてて温暖な地中海性気候のスペインからは想像できませんが,クリスマス休暇で旅行をしたドイツ・ポーランド・スウェーデンはどこも雨か曇り,下手したら雪も降っているぞということで,これから旅行に出るはずなのにちょっと憂鬱だな・・・なんて思いながら歌詞を書いていたと記憶しています.

そして次はジミヘンコード一発のブルースロックなオケの上でラップ!(っぽいパート)

「Can’t say NO!!の法則」って歌詞を思いついた時,ちょっとだけ自分を天才なんじゃないかって思ったんですが,気のせいでした・・・悲

こういう慣用句をもじったりするようなのも田淵さんが使う手法ですね.具体的にどんな曲で使われてたのか思い出せないので田淵ファンの方は後で教えてください・・・

イミテーションはアランチューリングを題材にした映画,「イミテーション・ゲーム」から(相変わらず映画からの引用が多い)

余談ですが,ヨーロッパの戦争博物館に行くと割とどこにでもエニグマが展示してあるのが興味深いです笑,結構簡単に手に入るものなんですかね.

「我が闘争」は言わずもがな例のあの人の自伝からですが,ベルリンとワルシャワを旅行する予定を立てていれば自然と作詞に浮かんできました.

■2番Bメロ


訳もなく悲しくなるとき 勇気づけてくれる
ファンファーレ 聞こえる
見ていて

ここでやっと1番と同じBメロに戻ってくるわけですが,いろんなところを巡ってきてまた同じところに戻ってくる,というのが旅行そのものですね.

「訳もなく悲しくなる」という歌詞はVガンダム最終回でのカテジナさんのセリフから.

■2番サビ


裸足で駈け出すGoing My Way!(その地平の先)
ガレキの向こう 見える世界
鳴らせ!クラクション Take off、検討(法令は守れ)
よもや裏切る計画でも 格の違いってあるよね?
ハロワ表示だけじゃ楽しくないんだし
辞退表セット中

「ガレキの向こう見える世界」は,ポーランドの首都ワルシャワのイメージです.

ワルシャワには素敵な旧市街があるのですが(宮殿があったり,ショパンゆかりの聖十字架協会があったり),このあたりって昔の様子を止めているようでいて,実は全て大戦後に再建した地区なんですね.(詳しくは↓のリンクを)

知らないで行ったら,「昔ながらの街並みで美しいですね」なんてうっかりスルーしてしまいそうです.(そういう意味でも,ワルシャワに来たらワルシャワ蜂起博物館には行くべき価値があると思います)

「ハロワ表示」は,「Hello, World!表示」を無理やり歌詞に詰めたんですけど(いったい何人に伝わったのか分かりません)

画面に「Hello, World!」に類する文字列を表示するプログラムの通称である。多くのプログラミング言語において非常に単純なプログラムであり、プログラミング言語の入門書で、プログラムを動かすためのプログラミング言語の基本文法の解説例として提示される
(wikiより)

つまらない会社の業務,みたいな表現です.

■Dメロ


渚に寝転んで 脳内フル回転の堂々
One Chanceあるならばきっと 今可能性がBlooming! Blooming!

「フル回転の堂々」の「堂々」堂々巡りから来てますが,メロ的に入らなかったので省略しました,という荒技です.

「Blooming! Blooming!」は・・・,MONACA好きの皆さんなら元ネタが分かりますね?笑

■ラスサビ


裸足で駈け出すGoing My Way!(その地平の先)
ガレキの向こう 見える世界

鳴らせクラクション Take off、検討(法令は守れ)
よもや裏切る計画でも 格の違い、見せつけよ!
午前8時 脱走計画で颯爽
逃げよ! 

「午前8時脱走計画」,言わずもがなCymbalsのオマージュですね.この曲が渋谷系の文脈にあることを示唆しています.

■アウトロ

この最後の最後の「逃げよ!」を合図に長い長い逃避行(アバンチュールが始まるわけですが・・・

この長いアウトロが,「現実を忘れて旅に出よう!」という楽曲テーマに即している,と言ってしまえば聞こえが良いものの,「間奏でギターソロいれ忘れたからアウトロに入れたれ!!!」みたいなテンションで出来上がった,というのが実情です・・・笑

このアウトロも4つほどのパートに分けられます.

1パート目は,若干のKing Crimsonっぽさも漂う3拍子のキメフレーズ.

2パート目は,ポストロックでミニマルなパートです.ギターやドラムなんかはToeっぽいかも.

それぞれのフレーズのアクセントをずらして配置するフレーズは,インドネシアのケチャスティーブ・ライヒをちょこっと意識しました.

ケチャ,実際に僕が組んでるバンドでやってみたんですけど難しかったですね・・・笑

ケチャについてはAKIRAの音楽を担当している芸能山城組の解説が詳しくて良いです.(毎夏に新宿都庁前でケチャまつりというイベントが行われているのでオススメです.今年はあるか分かりませんが・・・)

3パート目は,シューゲイザーなパート.

リードギターはひたすらノイズを鳴らしていますが,これはモンスターエナジーの缶を弦にひたすらこすって録りました.本当はみたいな感じにしたかったんですけどね・・・

アンプで爆音で鳴らせる環境がなかったのでちょっと厳しかったです.

4パート目はカッティングギターが底抜けにあかるいサンバチックなパート.ここはモロにThe band apartですね.

好きなんですよね,バンアパ・・・

■最後に

こんな与太話に付き合ってくださり大変ありがとうございます!!!!

動画をペタペタと貼りすぎて可読性が著しく低い記事になってしまいました.(オタクなので参考文献は示しておきたいのです)

歌詞解説などと偽ったただの旅行自慢でした・・・(留学中のお話については後ほどたくさん記事に書こうと思っています)

スペインを出発した2月ころはまだ日本や中国の方が感染者が多いくらいで,スペイン人の大学教授や研究室メイトからも「日本に帰るの気をつけなよ!!」と心配されていた側だったのですが,日本帰国後に状況は一変してしまいましたね・・・

こんなに遊び歩けたのは,本当に運があったとしか言いようがありません.下手をしたら帰国できない可能性もあったわけですから.

そうした偶然や運に感謝をしつつ,スペインでお世話になった人たちの安全無事を日本から祈りたいところです.

自分が作詞していたときに考えていたことをこうして明文化する作業(実際,とっても野暮なこととは思います)ってすごく難しいなとも思いつつ,逆に説明できない部分があっても良いな,とも思います.

文中で,歌詞は錯乱しているぐらいが良い町田町蔵先生の言葉をお借りして書きましたが,論理を超越したところにこそ歌詞の面白さがある,とも思うからです.

わざわざ歌に言葉を載せるということは,言葉だけで十分ではないニュアンスを音楽によって補完できるということなので.色々考えようがあるわけですね.

今回をきっかけに,作詞にも正面から向き合ってみようかなあなんて思いました.


おわり


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