いいコンテンツを作り続けられる世の中に。100万人を突破しても変わらず目指すこと。
こんにちは、本を耳で聴けるサービス「audiobook.jp」を運営するオトバンクです。
この度、「audiobook.jp」の会員数が100万人を突破しました!!2018年12月に60万人突破をお知らせしてから9か月でこのようなお知らせができて大変嬉しいです。ご利用くださっているみなさん、本当にありがとうございます。
とっても嬉しいのですが、会員数はあくまで一つの指標で、「本を聴く文化の創造」の実現まではまだまだこれから。
とはいえ、100万人突破という大きな節目ではあるので、この機会にオトバンクのこれまでとこれからについて一度お伝えさせてください。
オトバンクのはじまり
創業者であり現在オトバンク会長・上田渉の祖父が、緑内障で失明してしまい本が読めなくなってしまいました。その姿が忘れられなかった上田の「本を耳でも楽しめる世の中を作りたい」という想いで、オトバンクは創業されました。
当初、対面朗読のNPOを検討していましたが、いろいろと調べたところ海外では2000年代前半から伸びている「オーディオブック」があるが、日本にはない。
社会課題の直接解決に向けたNPOを立ち上げるのも大事だけれど、「耳で聞く本」は新しい娯楽として広く楽しまれるのではないか。そうして持続可能なビジネスモデルを構築する先に、祖父のような人が喜ばれる世界はあるのではないかと考えたので。大変そうだけど、自分たちで作ることに決めました。それが「FeBe」のはじまりです。
※当初の名前は、「audiobook.jp」ではなく「FeBe(feel enjoy by ears)」という名前でした。
1から築き上げてきた、オーディオブックのスタンダードモデル
実際に作り始めてからは、発見ばかり。日本でオーディオブックはほとんど作られてこなかったので、権利関係やどのように作るのがいいのかだれも正解をもっていない状態でした。「これがスタンダードです」という前例がなかったので全部ゼロベースで作り始めました。
たとえば、音声コンテンツのなかでもそれぞれ適したフォーマットのようなものがあるのを見出しました。
音楽はだいたい1曲あたり数分程度、ラジオドラマも1~2時間程度のことが多いと思うのですが、オーディオブックの場合完結までに6時間くらいかかります。
ラジオドラマのように芝居を強めにいれたり、BGMをこまめに入れたりすると、オーディオブックの長尺フォーマットに合わないんです。1時間であればいいですが、ずーっと聴き続けるのは疲れてしまう。こういった試行錯誤を重ねていって、オーディオブックに適した作り方を模索していきました。
”ベスト"が何か、ビジネスモデルの模索
当時は目が回るような状態。「これがベストだ」と自分たちで思ったとしても、自分たちで決められるものではない。決まっていないものを決めていき、作家さん演者さん出版社さんなどにご理解いただき書面で交わさなくてはいけません。
新しいビジネスモデルを立ち上げるとなったとき、たいていなにかしらのフォーマットがあると思いますが、オーディオブックの場合はなかったので、その点に関しても様々な方の状況を踏まえながら作っていきました。
今決まっていないものについて、フォーマットとして双方が納得感を持つまで相談しながら、並行してコンテンツの研究もして、サービスも開発して。
ありがたいことに10年以上続けてきた結果、業界内での認知も広がり、フォーマットやフローも固まってきています。制作のクオリティやインフラも磨き続けてきているので今はそんなにその点が問題になることはなくなってきました。
いい体験を届けるというこだわり
コンテンツの作り方でいえば…ユーザーのことを考えると絶対いいものを聴きたい。作家さんも音声になった場合、どんな作品になるんだろうと想像されていると思います。なので、絶対に適当なものは作りません。「この作品の面白さを音声で伝えるならどんな形がいいだろう」「どうすれば原作の世界観を立体的に伝えられるか」という点に徹底的にこだわっています。
ユーザーさんに届くまでに、ディレクター、エンジニア、校正、必要な場合には方言指導や校閲的な方など、メンバーが複数人関わっていて、ナレーターだけでなく関わる全員が原作を読んでいます。
オーディオブックのスタンダードが確立する前は、実験作をたくさんのひとに聴いてもらいながらつくっていました。その過程の中で、間や編集など、少しでも作品とそぐわない部分があると、それらは明確に耳に届いてしまうこともわかりました。
それからは、作品のクオリティに関するラインを設けて、エンタメコンテンツとしての遊び心も大切にしながら作るということも続けています。
最初に聴いたオーディオブックとの出会いを最高のものにしたい。コンテンツの中身が合う合わないもあるので100%とはいえないですが、できるだけいい体験を提供できるよう頑張っています。
「聴くという行為」の魅力をさらに伝えたい
今意識しているのは、聴くハードルを下げるということです。
現在オトバンクの代表を務める久保田は、家でテレビ見せてもらえない環境で育ったそうです。部屋に引きこもってもやることがないので、たまたまラジオをひたすら聞いていた少年時代。学校が終わったら夕方4時から朝の5時くらいまでラジオから音を浴び続けるということを10年くらい続けていたので、”聴くという行為”自体にすごく馴れているといいます。
でも、みんながみんな昔から習慣的に聴く生活をしてきたわけではない。考えてみると、何かしらを聴くという活動・行動自体、実はハードルが高いののかな、と久保田は感じています。
まだ「聴く」という行為のハードルは高い。なので、オーディオブックをあらゆる方に使ってもらえるようにするのをもちろん目指してはいますが、まず「聴く」という行為に馴れてもらう必要があると私たちは考えています。
たとえば、おにぎりが目の前にあって「これがおにぎりです。おいしいです。しかも100円です」なら、お腹がいっぱいになるなど効用もわかりやすいです。だけど音声コンテンツの場合、パッとメリットがわかりづらいので、まずは聴くまでのハードルを下げなくちゃいけない。
それをどう解決していくかを、今いろいろと考えています。
人の心を動かすコンテンツを作り続けられる世の中に
オトバンクがなぜそれをやりたいのか。生存という意味では、食う・寝ると比較して、コンテンツは必要ないかもしれません。
ただ、いろんな人と会ってお話を伺うと、何かしら人の人生でポイントや転換点になっているところで、本やラジオなどコンテンツがかかわっていることが多い。そしてそれをだれがつくっているのか?というと、演者さんや音響さんなど関わっている人がたくさんいます。しかし、たくさん聴いてくれる人がいないと潤いません。潤わないと、人の心が動くようなものを作ろうという余裕も持てなくなってしまうかもしれません。
押しつけがましい部分もありますが…オーディオブックも普及することによって収益が上がれば、コンテンツを楽しむ人に向けて「作品をもう少し練ろう」とか「本の装丁を豪華にしよう」などさらにいろんなことができるようになります。作り手さんの収益源の一つにしていくことで、おもしろいコンテンツが世の中に生まれていく手助けの一つになるのではないかなと私たちは信じているんです。
「audiobook.jp」では、今年夏にポッドキャスト配信者向けに配信・課金インフラの開放を発表しましたが、それもその一環と考えています。
これからも、たくさん聴いてもらえるようなプラットフォームをつくり、たくさんいいコンテンツが生まれるような世の中に少しでも寄与していきたいです。
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これからも私たちは、いいコンテンツが生み出せる世の中になるための少しでも力になるように。耳で楽しめるコンテンツをもっと生み出し、たくさんの方に「聴く」行為が馴染んでいくように。
音コンテンツの制作と配信プラットフォームのアップデートを続けてまいります。
▼音声でもこの想い、お聴きいただけます
先日、ポッドキャストの日(9月30日)に合わせて配信された「ポッドキャストのポッドキャスト」内「第四回【File2】audiobook.jpとポッドキャスト」にオトバンク代表の久保田が出演し、サウンドクリエイターのHARUさんを聴き手に思いの丈を語りました。
音コンテンツに対する並々ならぬ思いを抱えているという点でパッションもあったのか、大変熱いトークが繰り広げられ近しい話がされているので、こちらもぜひ。
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