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作業用BGM、好きな音楽、ドイツ語のこと

 中学生になって自宅の中で自分一人で使う部屋を与えられてから、音楽を聴きながら勉強するようになった。私は普通よりも音に敏感なようで、周りで話し声が聞こえたり特定の種類の物音が聞こえたりすると集中できなくなる。そういった雑音を防ぐためにもイヤホンをつけて音楽を流すことが有効だった。

 勉強しながら音楽を聴くとしたら邦楽はあり得なかった。日本語の歌詞が聞こえると脳が音楽を単なる音ではなく言語として受け取ってしまうようで、勉強の内容が頭に入ってこなかった。だから何と言っているのかさっぱり分からない英語の曲を聴いていた。

 父親がStevie WonderなどのCDを持っていてパソコンに取り込んでいたのでその曲をよくかけていた。Balllad Collectionというアルバムを最も頻繁に聴いていた。当時はFMラジオもよく聴いていて、そこで好きになった曲の入ったCDをお小遣いで買って再生するようにもなった。

 そうやって聴いていた曲の一部は歌詞が実は性的に過激だったりシリアス過ぎたりして10代には早すぎたかもしれないけれど、当時はほとんど歌詞を理解しないで聞き流していた。それにしてもこんな曲を聴くとはやはり病んでいたなと思うこともある。

 また私は10代の途中でドイツに関心を持ち、NHKラジオの放送でドイツ語の勉強を始め、インターネット上のストリーミング放送を通じて少しずつドイツ語の楽曲を聴くようにもなった。しかしそれらの音楽を聴きながら勉強することができたのは、実際のところ英語やドイツ語がほとんど聞き取れないからこそのことだった。

 大学生活の後半になってTOEICやIELTS試験を受けたり実際に海外に行ったりして、これまで聞き流していた英語・ドイツ語を聞き取ろうとするようになった。これまで楽器の音のように頭の中で扱っていた音声を意味のある言語として理解しようとするのだから、最初の頃は難しくてほとんどできなかったけれども慣れることで少しずつできるようになった。

 そうやって聞き取れる内容が増えるにつれ、音楽を聴きながら作業に集中することが難しくなっていった。それは脳が日本語と同じく意味を持った言語として英語とドイツ語を認識するようになったということだと思う。

 それでも周りの物音や話し声は遮断したいから今もイヤホンをつけて音楽を聴いている。Spotifyなどでランダムに音楽をかけながら勉強などの作業に集中することは難しいが、何十回も再生して歌詞がほぼ完全に頭に入っている曲たちならば聴いていても集中力が低下しないと分かったからだ。

 だったら別に邦楽を再生しても良さそうだけれど、なぜかそうはしたくない。なぜかは分からないけれども歌詞を覚えるほど何度も再生した邦楽の曲は飽きてしまって聴く気にならない。これは本当にただの感性や好みの問題で、考えてみれば不思議なことだ。

おまけ

 というわけで元々書きたかったことは以上ですが、せっかくなのでここまで貼ってきた動画のドイツ語楽曲それぞれのアーティストについて簡単に紹介します。

 まずXavier Naidooはマンハイム出身の男性歌手で、1998年にアルバムNicht von dieser Weltでデビューしました。Xavier自身はドイツの生まれですが両親は南アフリカ、インド、アイルランドのルーツを持っていて、そのため彼の風貌は日本人がドイツ人と聞いて思い浮かべる人物(白人)とは異なります。Wild vor Wutという曲のMVを見ると顔つきがちょっとアジア人らしくも見えるでしょう(ちなみにこれはとあるCG映画の楽曲でもあったのですが映画自体は全くヒットしませんでした)。彼の歌詞は大抵シリアスで、例えば先ほどのBist du am Leben interessiertの曲名は「君は人生に関心を持っているか」という意味であり、歌い出しの歌詞は

Hör nicht auf, für das zu leben an was du glaubst 
己の信じるもののために生きるのを止めるなよ

というものです。

 アフリカ系のドイツ人アーティストといえば他にも例えばAndreas Bouraniという人がいて、ネットで適当にドイツのラジオ放送を聴いてみると彼の曲は頻繁に流れます。

 また僕はCassandra Steenの曲も好きでよく聴いています。他ではあり得ないほどアメリカのR&Bっぽい曲が多いと思っていたら彼女自身は在欧米軍の兵士の子で、生まれる前に両親が離婚しドイツ人祖母の元で育ったとのことです。このことはWikipediaを読んで今初めて知りました。

 Laith Al-Deenはカールスルーエ生まれの男性歌手で、2000年に先ほどの動画のBilder von dirでデビューしました。彼もまた移民のバックグラウンドがあり父がイラク人だそうです。僕はDein Liedという曲が大好きで、この歌詞を理解するためだけにでもドイツ語を学びたいと思ったほどでした。個人的には今もこれが「神曲」です。歌詞の内容を簡単に言うと、遠くにいる大切な人に思いを馳せて「もし君がどこかにいるならこれは君の歌(dein Lied)だよ」と語っているような感じです。

 Jennifer Rostockはベルリンを拠点に活動するロックバンド。Rostockとはドイツ北東部の都市で、ボーカルのJennifer WeistとキーボードのJohannes Walterがそこの高校を出ているらしいです。ただ出身はUsedomという別の場所です。個人的には歌詞が難しくて、というのは学校で習ったりニュースで読んだりして目にするようなドイツ語との違いが大きくてよく分かりません。ちなみにJenniferは全身にタトゥーを入れています。

 Silbermondは4人組みのロックバンドで、ここで紹介している中でおそらく最も日本人にとって馴染みやすい曲が多いと思います。Wikipediaには日本語の記事もあります。先ほどのLeichtes Gepäckが気に入ったら勢いのあるMeer sein、あるいはKrieger des LichtsHimmel aufといったしっとりした曲もおすすめです。それと個人的にはインタビューやオーディオコメンタリーを聞いていると4人とも人柄が良さそうな感じがします。

 GlasperlenspielはCarolin NiemczykとDaniel Grunenbergの2人からなるデュオで、バンド名はとんぼ玉の遊びのことです。最も有名な曲はGeiles LebenNie vergessenですが、僕としては先ほどのEchtや最新シングルのImmer daが好きです。ちなみにこの2人は恋人同士でInstagramを見ているとほっこりします。あと、Carolinは僕と同い年です。

 ここまで駆け足で好きなドイツのアーティストについて紹介してきました。ドイツ語の曲が好きというとクラシック歌曲のことだと思われることがありますが、そちらは中学校の音楽の授業で聞かされた以上のことは分からなくて第九の「歓喜の歌」の歌詞もあまりよく知りません。

 おまけのつもりで始めましたが、書いてみたらこちらの方が本編のようになりました。初めてこれほどまで自分の好きなものについて語れて、それだけで書いていて楽しかったです。

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