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「本題 西尾維新対談集」 感想2

「本題 西尾維新対談集」について続けて書いていきます。

創作とハードル(西尾×小林)

西尾さんがアドリブで小説を書いた時に、展開は無限にあるはずなのに逆に「何をしてもいい」となると「いちばん効率の良い方法」ばかりを選んでしまい作品が似通る可能性が高いと感じられたそうです。
そうならないために作品を作る際には、事前に何かしらのハードルを設けることであえて自由にかけないようにしているそうです。

西尾:アドリブ的に小説を書く、つまり先のことをほとんど決めないで書くという小説に長くチャレンジしていたんですけど最初のほうこそ、「……第一章はこんな引きで終わったけれども、これを第二章でどう受け
るの?」みたいな無理難題を解決していくのが楽しかったんですけれども、ただ、それを何回も繰り返しているうちに「あれ?」とも思ったんです。完全なアドリブですから、次の展開に関する選択肢って無限にありそうなんですけれど、「何をしてもいい」となると、「いちばん効率のいい解決方法」ばかりを選びかねない、結果、できあがるものが前作とよく似たものにな
りかねないな
、と……。もしかしたら、やっぱり最初の段階できっちりハードルを設定してはじめたほうがいいものができるし、楽しく書けるのかもしれないな、と思いはじめたところなんです。
(ソフトカバーP28)

漫画「HUNTER×HUNTER」のネテロの百式観音に似ているなぁと思いました。
(※ここからHUNTER×HUNTER28巻のネタバレ含みます)

ネテロというキャラクターは「百式観音」という技を持っています。
その技を使うと、めっちゃたくさん腕を持った観音様が具現化されて、ネテロの体の動きに従って超高速に相手(メルエムというキャラクター)を攻撃します。
攻撃パターンは、ネテロの動きの分だけあるので実質無限にあります。
しかし、実際の戦いでは百式観音の動きはメルエムに見切られ、攻略されてしまいます
メルエムはこう言っています。

「個には必ず特有の呼吸がある。
無意識の内に好む型・嫌う型があり自ずとその者独自の流れを形作る
呼吸の流れを掴めさえすれば幾多ある技の枝から奴がどれを選択するかを探るは十分に可能」
(HUNTER×HUNTER28巻 P41)

「貴様が無意識に嫌う型・・・その存在が本来無限であるはずの選択に標を示すのだ」
(HUNTER×HUNTER28巻 P131)

無限の選択肢の中から自由に選び取っても、人はそれぞれが持つ好み・嫌いによって選ばれるものが偏ってしまいます
西尾さんがアドリブ小説を書いた時に感じた事とメルエムの百式観音が攻略された話はその点で共通していると思いました。

創作とリア充(西尾×羽海野)

西尾さんも羽海野さんも充実した十代を送ることができなかったそうです。だからこそ、今の創作活動ができているそうなのですが、やっぱりリア充を見ると敵わないなぁと思うそうです。

西尾: 充実した十代を送っていたら、小説を書いていないはずだというのはある。今だってそんなところがありますよ。小説をいっぱい出させてもらって、お仕事をさせてもらって、しあわせに過ごしていると思っていい状態にいるはずなんですけど、それでもどう考えても、学校帰りにわいわい仲間と盛り上がりながら電車に乗っている高校生のほうが、今の僕よりも楽しそうなんですよ(笑)
羽海野:(笑)わかります。不思議なことに、いまだにそうなんですよね。
(ソフトカバーP138、P139)

西尾さんや羽海野さんが充実した青春時代を謳歌していたら、おそらく「偽物語」も「ハチミツとクローバー」も生まれなかったわけですから、読者はお二人が充実した青春時代を送らなかったことに感謝するべきなんですかねぇ。


西尾さんと羽海野さんの「才能」に関する話とかについても書きたいのですが、ちょっと自分の中でまとまっていないのでまたの機会に書きます。

以上


























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