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Moon River

この曲の題名と音を聴くと必ず思い出す。昔々のワタシの青い春。

皆さんご存知の映画『ティファニーで朝食を』で、主演女優のオードリー・ヘプバーンが劇中で歌った曲。柔らかくて優しい曲。この曲が素敵だなと思えたのは、この曲との出会いの、それからもう少し大人になってから。


中学一年生。いろんなことにキャピキャピしたい年頃のワタシ達は、入学してからすぐに「何年何組の〇〇先輩がカッコイイ!」と個々に「お気に入りの先輩」を見つけて楽しんでいた。小学校から上がってきたひよっこみたいなクラスの男子とは違って(スマン!)、少しずつ大人の雰囲気を醸し出し始めている先輩方はカッコよく映った。今振り返れば、中学一年生に感じたそれは、他の学年では思うことのなかった「たった2学年という歳の差から来る、大きな違い」が色濃いものだったと思う。

ワタシは2学年上の先輩に恋をした。まずは顔が好みだった。姉がちょうど2学年上にいるので、姉とは同学年。姉に言うのは何だか気が進まなかったので(と言ってもすぐにバレるのですが)、姉の友人でワタシを可愛がってくれていた「ひさえちゃん」に先輩の写真が欲しいと打ち明けた。先輩と同じクラスで、面倒見の良い姉御肌のひさえちゃんは何枚かの写真をワタシにくれた。その写真を切り抜いてワタシは筆箱に入れたり、こっそり家の引き出しに入れたりしていた。他の友人たちもそんな感じで、今思えば「身近にいる自分だけのアイドル」をキャハハ、ウフフと楽しんでいた、全く可愛いでしかない中学一年生女子達(笑)。

廊下ですれ違ったり、各々好きな先輩の移動教室の時間や、全校集会。もう楽しいでしかなかった。自分のお気に入りの先輩以外の、他の子のお気に入りの先輩の情報も、ワタシ達は純粋に楽しんでいた。田舎の、昔の、ただただ憧れだけでいい、そんな世界。

暑い暑い夏休み。先輩が見られないことがなによりもつまらなかった。音楽室の窓際で、外ばかりを見ている先輩を見たかった。話をしてみたかった。ワタシという存在を知って欲しかった。そう思ったワタシは先輩に暑中見舞いの葉書を出した。今思い返しても、何を書いたかさっぱり覚えていない。そして返事が来た。その返事が家に届いたのか、新学期が始まってからワタシの手元に届いたのか、正直定かではない。ただただ返事が来たことが嬉しかった。

先輩は東京から引っ越してきた同学年のとても綺麗な彼女がいた。細くて背が高くてちょっと冷たい印象の、どちらかと言えば不良の、美人な都会的な彼女。ひさえちゃんからの警告もなく、それを知っていてもワタシは相変わらず先輩に恋をしていた。姉がいて、ひさえちゃんがいることがワタシには大きな安心感だったのと、恋をしているからといって、それがどうこうなるという、そんな思いもない完全な子供。ただただ憧れてる、そんな恋。それが少しでも違えば、きっと呼び出しをくらっていたかもしれない。

バレンタインに初めて手作りチョコを作って(今思えば人生で最初で最後の)、下駄箱に入れてスルーされた友人や断られた友人を見て、勇気を出して直接渡そうと決めた。手紙を添えて、渡り廊下で。先輩といつも一緒にいる先輩も、もうすっかりワタシのことを知っていた。その後間もなくやってくる卒業式。本当に寂しくて、その後の学校生活はつまらないものになるのだろうなーと、暗い気持ちでいた卒業式の前日。先輩といつも一緒にいる先輩がワタシの教室に顔を出した。

「ちょっといいかな?」と言って手招きをしている。ん?なんだ?何が起こるのか?ドキドキしながら後をついて行くと、そこには憧れの先輩がいた。何をどう話したのか、全く覚えていない。一緒に写真を撮ってもらって、おそらくバレンタインのお礼としてラッピングされた箱を受け取った。

教室に帰ると放課後に残っていた女子達が大騒ぎで、どうした?何があった?何を話した?とお祭りのようだった(笑)。みんなで良かったね〜とか、こっちが緊張した〜など、本当に何て可愛い中学一年生女子達(笑)。

帰り道、いつも登下校を共にしていた友人と、その包みを開けてみた。中から出てきたのは手巻きのオルゴールだった。陶器でできたウサギさんのオルゴール。手で巻き上げると聞いたことのない曲が流れた。裏をみるとカタカナで「ムーンリバー」と書かれていた。

その時にアホなワタシは「こんな曲じゃなくて、例えばサザンとか、そんな曲なら良かったのに」と思ったことは覚えている。全く残念な発想の中学一年生女子である。

その後、思いもしない展開になり、色々と面倒なことが起き、中2の秋頃、ワタシの恋は終わった。その当時は携帯電話もポケベルもなく、インターネットもないから、ムーンリバーがなんの曲かをいつ知ったかどうかは定かではない。でもそれを知った時、先輩の素敵さが倍増したのは言うまでもなく、ちょっとキザで、この曲を選んでくれた先輩はワタシの中ではとても素敵な思い出として残された。先輩、カッコいいゼ!グッジョブ❤︎


因みに高校に入って友人と街の映画館に行き、「すごいワタシ好みのカッコいい顔の人がいる」と思って何度も何度も振り返って見ていた人が実は先輩だったというのは驚きの事実。先輩も笑っていたけれど(笑)。


追記

後日、やすこちゃんの企画「3行短文リライト」で続編として書きました。
お時間があればこちらも是非。







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