鈴木アツト

劇作家・演出家

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最近の記事

戯曲英訳プロジェクト 経過報告その2

前回までのあらすじ 2年連続、健康診断の「血圧」の結果が悪かったため、悔いのない人生を生きるために、自作の戯曲の英訳プロジェクトを思いついた鈴木アツト。英語が話せる友人たちに、SNSを使って、英訳プロジェクトへの協力を投げかけたのだが、友人たちからの返信はあるのだろうか。 戯曲英訳プロジェクト 経過報告その1|鈴木アツト (note.com) 前回のSNS経由のメッセージに先立つこと約1年前。自分でもすっかり忘れていたのだが、とある翻訳家のAさんに、私は、「『ジョージ・オー

    • 戯曲英訳プロジェクト 経過報告その1

      2年連続、健康診断の血圧の項目で「軽度の高血圧」の診断をもらった。まだ43歳なのに。しかし、年下の劇作家が、虚血性心不全やら脳幹出血やらで、急逝するニュースを目にすることも多くなった。43歳とは、人生の折り返し地点を過ぎたどころか、明日死んでもおかしくない年齢なのかもしれない。 残りの人生を考えて、自分は何をしたいのだろうか? まだ、やっていないことは何か? 考えてみた。考えてはみたが、特別なことは思い浮かばなかった。可能な限りたくさんの人に自分の作品を見てほしい、聞いてほ

      • 読書日記「タトゥーママ」

        「タトゥーママ」 ジャクリーン・ウィルソン作 小竹由美子・訳 ニック・シャラット絵 「これがあると、自分が特別に思えるの。」と言って、全身にタトゥーをいれまくっている、かなりクレイジーなママを持つ娘ドルフィンの成長物語。 そうか、世界に一つしかないタトゥーをいれることが、この母親のアイデンティティの根幹なのかと驚いていると、内容はどんどん、ズシリと重くなっていく。この作品は、ユーモアを持って描かれているものの、ネグレクトやヤングケアラーといった題材を扱ったものだからだ。

        • 『犬と独裁者』上演台本 第1場

          日時:2023年7月21日(金)~30日(日) 会場:駅前劇場 「犬と独裁者」 | 劇団印象-indian elephant- 公式サイト (inzou.com) 作:鈴木アツト 2023年7月14日版 上演台本 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります 第1場 1938年9月 モスクワ ミハイル・ブルガーコフのアパート。下手に廊下へ出る扉、その横に来客用のソファーとミニテーブルがある。部屋の中央に書棚、そのやや手前に円形の食卓と椅子二脚。上手に台所と寝室へ

        戯曲英訳プロジェクト 経過報告その2

          タイニイアリス・西村博子先生との思い出

          新宿の小劇場タイニイアリスのオーナー:西村博子先生が、2022年12月14日に亡くなられた。 西村先生との忘れられない思い出は、私が、生涯で一番の失敗作を上演した時のことだ。その作品は、2008年に『枕闇(まくらやみ)』というタイトルで、新宿二丁目のタイニイアリスで上演した。”主人公が、体温を失くしていくにつれて、愛もわからなくなっていき、最後に巨大な蝶になる。”という、よくわからない物語だった。 この時、私は、「よくわからないけど、凄い作品」を創ろうと思っていた。オリジ

          タイニイアリス・西村博子先生との思い出

          『カレル・チャペック~水の足音~』当日パンフレット・ご挨拶

          8年程前にタイに行った時のことだった。バンコクのとあるお寺で、仏像を見た時の“腑に落ちなさ”が、今も心に残っている。「なんか、違う。」 その黄金に輝く仏像は、顔は細長いが、肩はがっしりしていて、何より瞳がしっかり描かれていた。顔はふっくら、肩はなで肩、目は閉じている日本の仏像と、なんか違ったのである。一緒に見に行ったタイ人の友達は、その仏像の美しさに深く感動していた。私は表向きは同調する振りをしたが、心の底では、美しいと思えなかった。私は、自分が無意識の中で、「仏像」へ日

          『カレル・チャペック~水の足音~』当日パンフレット・ご挨拶

          『ジョージ・オーウェル ~沈黙の声~』上演台本 第1場

          『ジョージ・オーウェル ~沈黙の声~』 日時:2022年6月8日(水)~12日(日) 会場:駅前劇場 https://g-inzou.wixsite.com/orwell 作:鈴木アツト 2022年5月24日版 上演台本 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇エリック・アーサー・ブレア(1903年生・男)  筆名ジョージ・オーウェル。小説家。 〇アイリーン・ブレア(1905年生・女)エリックの妻。 〇フレドリック・ウォーバーグ(1898年生・

          『ジョージ・オーウェル ~沈黙の声~』上演台本 第1場

          『カレル・チャペック(仮)』準備稿 その1

          『カレル・チャペック(仮)』 出演者募集中・オーディション情報はこちら。 https://stage.corich.jp/bbs/78611 作:鈴木アツト 2022年3月14日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇カレル・チャペック(1890年生・男)劇作家、新聞記者。 〇ヨゼフ・チャペック(1887年生・男)カレルの兄。画家、舞台美術家。 〇フランティシェク・ランゲル(1888年生・男)軍医。 ○オルガ・シャインプフルゴヴァ

          『カレル・チャペック(仮)』準備稿 その1

          「国家と芸術家」シリーズ、最終作は、『カレル・チャペック』

          今日、1月9日は、チェコの作家、カレル・チャペックの誕生日だそうです。それを聞いて、慌てて、この文章を書いています。 現在、劇団印象-indian elephant-では、「国家と芸術家」三部作公演と銘打ち、”第二次世界大戦時に、国家という枠組みに翻弄された作家や画家に注目し、国境を飛び越える“自由”な視点や思想、作品を創り出す芸術家たちが、なぜ国家や国民によって“自由”が縛られるということが生じるのかを描く”シリーズを企画・上演しています。 こちらの記事にあるとおり、

          「国家と芸術家」シリーズ、最終作は、『カレル・チャペック』

          短編作品『サラのあんこ』

          1.はじめにここに掲載する短編戯曲『サラのあんこ』は、2020年4月に書いた、モノローグ(一人語り)です。2020年4月と言いますと、東京は、新型コロナ感染拡大を防ぐための、”緊急事態宣言下”でした。そんな時に、イギリス在住の俳優のSusan Momoko Hingleyさんから、「世界中の作家を集めて、1分〜10分間のモノローグを書いてもらう企画、に参加しないか?」というお誘いがあり、それで書いた作品です。(企画者は別の方でした。) テーマは「Hope in Isolat

          短編作品『サラのあんこ』

          ゾウの鼻の読書会 設立のお知らせ

          劇団印象-indian elephant-では、2022年から「ゾウの鼻の読書会」を、開催していきます。 読書会とは? 読書会とは、参加者が、本を読んだ感想を、別の参加者に伝える集いです。「ゾウの鼻の読書会」では、課題本を設定し、それを読んできた参加者が、思い思いに感想を語り合う、読書会を行っていきます。 一冊の本を読んで何を感じたのか。それを誰かと語り合うことによって、頭の中にはあったかもしれないけど、自分が認識していなかった、自分の想いや考え方を発見する。そういった集

          ゾウの鼻の読書会 設立のお知らせ

          若い演劇人のための助成金講座

          この原稿は、とある団体の、「助成金」勉強会の資料として、書いたものです。 0.まえがき助成金とは何だろうか?当たり前すぎで今さら感はあるが、助成金とは「他者からもらうお金」である。この「他者からもらうお金」感が、お年玉のような、降って湧いた幸運を感じさせるのは、私だけだろうか。ジョセイキンという音が、音として、普通の生活では馴染みがないからか、なんか空から降ってくるお金のような気がしてしまう。しかし、それは間違いである。 助成金を考える上でまず、俯瞰して見るためにも、”助

          有料
          100

          若い演劇人のための助成金講座

          『藤田嗣治 ~白い暗闇』準備稿 その2

          『藤田嗣治 ~白い暗闇~』 出演者募集中・オーディション情報はこちら。 http://www.inzou.com/workshop.html 作:鈴木アツト 2021年5月20日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇藤田嗣治(男):画家。 〇ナタリア(女):娼婦。ポーランド(当時ロシア)からの移民。 〇村中(男):画家。藤田嗣治の後輩。 ≪物語の途中からを紹介します。≫ 第4場 1920年5月 パリ 藤田嗣治のアトリエ。嗣治

          『藤田嗣治 ~白い暗闇』準備稿 その2

          『藤田嗣治 ~白い暗闇』準備稿 その1

          『藤田嗣治 ~白い暗闇~』 出演者募集中・オーディション情報はこちら。 http://www.inzou.com/workshop.html 作:鈴木アツト 2021年5月20日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 登場人物 〇藤田嗣治(男):画家。 〇ナタリア(女):娼婦。ポーランド(当時ロシア)からの移民。 〇村中(男):画家。藤田嗣治の後輩。 ≪物語の途中からを紹介します。≫ 第3場 1917年6月頃。 第2場から三年後。ナタリア

          『藤田嗣治 ~白い暗闇』準備稿 その1

          【求む!】 制作・アシスタントプロデューサーを募集!

          劇団印象-indian elephant-は、この度、「国家と芸術家」三部作公演に向けて、制作及びアシスタントプロデューサーを募集します。下記の評伝劇を創作したいと考えています。 「国家と芸術家」三部作公演とは?古今東西の芸術家の内、エーリヒ・ケストナー、藤田嗣治、ジョージ・オーウェルという、第二次世界大戦時に、国家という枠組みに翻弄された三人に注目し、国境を飛び越える“自由”な視点や思想、作品を創り出す芸術家たちが、なぜ国家や国民によって“自由”が縛られるということが生

          【求む!】 制作・アシスタントプロデューサーを募集!

          「エーリヒ・ケストナー ~消された名前~」(仮)準備稿 その3

          出演者募集中・オーディション情報はこちら。 http://www.inzou.com/workshop.html 作:鈴木アツト 2020年7月1日版 準備稿 ※戯曲の内容は、公演時には変わる可能性があります。 〇ヴェルナー・ブーレ(男):ケストナーの同級生。後に映画監督。 ヴェルナー・ブーレ役での、応募が少ないため、ヴェルナー役のための、課題台詞を公開致します。 第3場 1933年11月13日・ベルリン (第2場から)四年後。同じケストナーのアパート。 ナチス(国

          「エーリヒ・ケストナー ~消された名前~」(仮)準備稿 その3