【小説】『フラッシュバック』#38
遠くで波の砕ける音が聞こえ、気がつくと、海岸の波打ち際に打ち上げられていた。ぼくは砂浜に伏せって倒れていた。倒れたまま海水を口から吹きだして咳き込み、鼻が強く痛んだ。しかし頭と胸は不思議と痛まなかった。
世界が終わる日の朝を迎えていた。
ふと気がつくと、いつも見かける幼い女の子が、しゃがんでぼくを見下ろしていた。だれかいてくれたのか……と、ぼくはふとほっとしてそう思った。
あたりには打ち上げられたヒトデが散乱しているだけで、恐ろしい終末の雰囲気とは束の間無縁だった。