『不便性』のベネフィット
日経電子版の記事【あえて不便に楽しさ生む 京都大特定教授、川上浩司氏】では、商品(モノ・サービス)の価値基準である『利便性』の正反対、『不便性』にベネフィットを見い出す、という考え方がリポートされています。『不便』であることが、ユーザーにとって価値ある体験となる、とはどういう事でしょうか?
そこで、『不便性』にベネフィットがあるような商品が世間にどの程度あるのか、思い付く限り列挙してみると、これが意外と色々ありそうなのです――
▶『不便性』にベネフィットがある商品
(モノ・サービス)の例
① 組み立てに何ヵ月もかかるような精密なプラモデル(帆船模型など)。
② 目盛りが素数表示のものさし。
③ 難攻不落(難しすぎて終わりそうにない)のゲーム。
④ 最後まで犯人の分からない推理小説。
⑤ 難解でどう解釈してよいか分からないような映画・ドラマ。
⑥ ハードなエクササイズ。
⑦ 辿り着くのが極めて困難な秘境の露天風呂。
⑧ 見に行くだけで何日もかかる秘境の遺跡。
⑨ 運転を楽しむためにマニュアルで車を運転する。など
『不便性』の定義を広く解釈すれば、まだまだいくらでもありそうです。これらの事例から何か共通項が浮かび上がってこないか考える前に、まず、『不便性』を考えるよすがとして、その反対の『利便性』について整理してみると――
▶『利便性』とは
① 早い、速い。
② 使い易い。
③ たいていうまく行く。
④ 簡単。
⑤ 用途にぴったし。
⑥ 手間いらず。
⑦ 役に立つ。
⑧ 丁度いい。
⑨ 具合がいい。
⑩ 都合がいい。など
これらから浮かび上がってくるキーワードは――
▶『利便性』の3つのキーワード
①『早い』
②『丁度いい』
③『容易な』
『利便性』をこのように捉えるなら、その対極にある『不便性』は――
▶『不便性』の3つのキーワード
①『時間がかかる』
②『なかなかうまく合わない』
③『困難さがある』
この3つのキーワードは、まさに、最初に考えた『不便性』にベネフィットがある商品(モノ・サービス)の例にピタリとはまりそうです。
つまり、時間がかかって、なかなかうまく合わず、困難なのに、それがかえって体験価値となるところに、『不便性のベネフィット』の本質がありそうです――
▶『不便性のベネフィット』の本質
①『克服』・・・困難を乗り切って得られる『歓喜』。
②『鍛錬』・・・困難を乗り切って得られる精神的、または肉体的な
『成長』。
③『挑戦』・・・困難に挑む(チャレンジする)ことで生まれるやりがい、
『意欲』。
『克服』、『鍛錬』、『挑戦』、そして、それらによって得られる『歓喜』、『成長』、『意欲』は、『利便性』ばかりが追求される世の中にあって、キラリと光る体験(UX)と言えるのではないでしょうか。
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