米国発世界同時株安 ~予測経路のミッシング・リンク~

 ミッシング・リンクと言えば、例えば古生物学の世界で、進化の過程の古い段階と新しい段階の中間に位置する化石が発見されていない状態を指して使われる言葉です。

ミッシング・リンクは、それが過去に属する未発見の部分を指して使われる分には、既に決定されている現在の状態に何ら影響を及ぼしませんが(例えば、どのようなミッシング・リンクが発見されようが、されまいが、現生人類は現生人類)、将来のまだ起きていないこととなると、話は全く変わってきます。未来を予測する筋道(経路)の中に、見過ごしにできない大きなファクターがミッシング・リンクとして潜んでいると、当然、その予測の導き出した結論は間違っていた、ということになるのです。そのミッシング・リンクを考慮に入れていれば、違った結論が導き出されたはずなのです。

 前置きが長くなりましたが、米国発の世界同時株安が進行する中、日経電子版だけでも連日力の入った記事・リポートが掲載されています。ご存知の通り、それらの論調は、大別して次の二つに分かれます。

・今回の株安はフラッシュクラッシュであり、ファンダメンタルズに変わりはない。押し目買いのチャンスである。
・今回の株安は本格的な調整局面の始まりであり、リスクオフの流れが加速する。

どちらの陣営にも説得力があり、「結局分からない。腹をくくってどちらかを採るしかない」と思いかけていた時出会ったのが、みずほ銀行国際為替部 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔さんの投稿『世界経済と米株の危険な関係』でした。この投稿のさらに詳しい内容が東洋経済オンラインにリンクされていたので、さっそく拝読したところ、昨年来の円安ドル高説の欠点を指摘されている件が大変印象に残ったのです。それは、FRBの利上げによって米金利が上昇した後、日米金利差拡大を考える前に、株価下落等のリスクを考えに入れないといけない、という指摘でした。

つまり、予測経路の中にミッシング・リンクがあったのです。

・(フェーズ1) FRBの利上げ
・(フェーズ2) 米金利上昇
・(フェーズ3) 日米金利差拡大
・(フェーズ4) ドル円相場上昇(ドル高円安)

という当初のシナリオは、私も、特に深く考えることすらなく、そうだろうと思っていたシナリオです。ところが、実際には――

・(フェーズ1) FRBの利上げ
・(フェーズ2) 米金利上昇
・(フェーズ3) 【ミッシング・リンク】米株価下落
・(フェーズ4) (その後の展開は全く変わってくる……)

そのような下地のあった所へ――

・(フェーズ1) 米国の1月雇用統計の平均時給が予想を上回る。
・(フェーズ2) インフレ懸念
・(フェーズ3) 【利上げ加速】の観測
・(フェーズ4) 株売り(大幅下落)

となりました。

 今後の展開はさておき、私は、今回の一件で、『予測経路の中のミッシング・リンク』という事に、強く思いをはせました。

今までは、世に流布される将来予測なるものに、「本当にそうなのか」と、ただ無闇に行き当たりばったりで疑問を投げかけていたのですが、これからは、人の将来予測を分析する時には、その予測経路のどこかに【ミッシング・リンク】が潜んではいないか、という切り口で考えてみようと思うのです。

・(フェーズ1) AAAAA
・【ミッシング・リンク?】
・(フェーズ2) BBBBB
・【ミッシング・リンク?】
・(フェーズ3) CCCCC
・・・・・・・

https://comemo.io/entries/5205

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