【Apple Watchとヘルスケア・第3回】ヘルスケアデータの活用とApple Watchの果たす役割
こんにちは!アツラエnote編集部、UXプランニングチームの小笠原です!
医療やヘルスケアの分野でも活用が広がるApple Watchですが、個人のヘルスケアデータを活用するためには乗り越えなければならない課題があると慶應義塾大学医学部循環器内科の木村雄弘医師は話します。
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プロフィール
木村雄弘医師
慶應義塾大学医学部循環器内科。最新ICTと医療を融合した診療環境の構築に取り組む。不整脈専門医としての診療とともに、ヘルスケアと医療の効率的な連係を目指し、AI(人工知能)を駆使したDigital Medicineの研究を行っている。
個人のヘルスケアデータは誰のもの?
──Apple Watchのヘルスケア機能を活用するにあたって、「メディカルID」の登録は必要でしょうか。
木村:緊急時、突然救急車で病院を受診した際に、医療従事者が必要最低限の情報を即座に収集するのに役立つ機能なので、設定しておくことはいいと思います。最初にiPhoneの「ヘルスケア」アプリでア
レルギーや、服薬情報、既往歴などを入力すれば、Apple Watchにも自動的に反映されるので設定自体は難しくありません。
──周りではメディカルIDを設定している人をあまり見かけない気もしますが、どの程度普及しているのでしょうか?
木村:具体的な普及率についてはわかりませんが、日本の医療DXは遅れているのが実情です。特に、誰もが当たり前のように利用できるデファクトスタンダードな規格がないことが課題と言えるでしょう。日本では「お薬手帳」にしても、マイナンバーカードを健康保険証として使える動きにしても、なかなか普及しているとは言えません。メディカルIDを含むすべてのヘルスケア情報を統合した管理が実現できればいいと思います。
──それが実現すると、どのようなことが起こると考えられますか?
木村:今年の7月から日本国内でもiPhoneで衛星経由の緊急SOSを使えるようになりましたが、転倒して緊急でSOSをしたときにメディカルIDが共有設定されていれば、救急隊員に対して医療情報を提供することができます。
ヘルスケア情報の規格化とApple製品への期待
──重要な問題提起をいただきました。個人のヘルスケアデータを必要に応じて医療機関などとデジタルで共有していくためには、今後何が必要となってくるでしょう。
木村:私は医療とITCの距離を近づけて、もっと便利に効率化して健康になれる仕組みを作りたいです。医療側では、いまだに病院の紹介状は手書きであったり、病院同士の連絡にFAXを使っていたりします。FHIR(医療情報交換の標準規格)を活用した情報連携が当たり前になってほしいです。
──身近な医療のDX化の例として、最近は「お薬手帳」のアプリも見かけるようになりましたね。
木村:はい。しかし、現状は調剤薬局ごとのアプリが多く、統一された規格にはなっていません。Apple Watchにも「服薬」アプリがありますが、日本国内では薬の情報を処方箋を見ながら自分で登録しないといけません。一方、アメリカでは医薬品やサプリのラベルをiPhoneのカメラにかざ
すだけで、医療データベースと照合して薬の詳細な情報を登録したり、複数の病院で処方された薬同士の飲み合わせの禁忌情報などが確認できるのです。
──ヘルスケア規格の共通化など解決すべき課題はまだ多いのですね。Apple Watchをはじめとしたデバイスの今後に期待されることはありますか?
木村:ヘルスケア機能を搭載したスマートウォッチは各社から出ています。しかし、これらが医療機器アプリケーションなのか? 誰を対象にした何を判断できるアプリケーションなのか?についてはユーザーと医療従事者が認識しておく必要があります。Apple製品はiPhoneもApple Watchもヘルスケアデータを安全に管理できる仕組みが整っていますので、よりわかりやすく使いやすくなることを期待しています。
──ありがとうございました。
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