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”異常値な店”こそ、面白い

トレンド店の対義語は名店(老舗)だと思う。
同時に名店というのは「異常値な店」とも言えるんじゃないかと思っている。

これは「お店のこだわりがどこか異常である」という意味と、存在そのものがイレギュラーな「異常値」であるという両方の意味がかかっている。

名店でどこか異質だし、年々企業の寿命は短命になっていると聞く中で「ずっと愛され続けている」って、本当にすごい。というか異常。
統計的にめっちゃ外れている値のような存在が、言うところの名店のポジションに近い感覚を私はもっている。

生き残りがゲキムズな時代。
だからこそ、異常値になれた店の背景を探りたい。

どうして生き残れているのか?

戦略・戦術の話ではなくて、どちらかというと名店の「文脈(ナラティブ)」を体感したい。

そんな気持ちが高まった先週、名店を眺めたいなと思って(言い方は好きではないけど便宜上)名店にもA級とB級があるとするなら、その代表格はA級:とらや、B級は新橋の「ポンヌフ」かなぁと思い再訪してきた。(仕事の都合上、汐留と赤坂付近の店になったという経緯もありよりのあり)

ただの食べたもの報告ではありますが、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

新橋「ポンヌフ」の異常値。 
業務用トマト缶の数と、タイムスリップのかほり。

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JR新橋駅からそのまま汐留方面(電通や日本テレビ方面)に向かう途中にある老舗ビル、新橋駅前ビル一号館のB1にある「ポンヌフ」。

お昼頃になるば常時8名程度の列。
選べるメニューは5種類ぐらいで、シグネチャーメニューは「ハンバーグスパゲッティ¥850」

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入口から店内に入る時に「出合う」のが、調理場の熱気。
大量の麺を鉄鍋をふってからませる大柄の背中、その横にある「デルモンテ」の業務用トマト缶。その周りには40〜50代の女性たちが無駄なく機敏に動いている。

決してきれいとは言えない店内なんだけど、それが味だから仕方ない。トングという調理器具ではなく、大きな菜箸でパスタを器用によそう姿は、なんとも勇ましく感じる。

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注文して5分程度で味わえる「バーグスパ」。太めの麺でアルデンテの真逆を貫く柔らかさ。マッシュルームとたまねぎ、そして少量のベーコン。

ハンバーグは合い挽きだけど豚肉多め。だから予想以上にさっぱりしているし、ケチャップソースも中まではしみていない。フォークでハンバーグをカットすると、肉汁はほどよく出てきてしつこくはない。

うめーなー‥。
とスーツ姿の新橋サラリーマンに並んで食べて、外を眺めて
「私、いつもは、こういうもの食べない」ことを思い出した。名店にいくと自分の視座で判断する瞬間はなくて、名店に私自身を合わせにいく感覚。ってある。この”委ねる安心感”が心地よい。


とらやの異常値。
菓子屋の域を超えた、腹の据わりっぷり。

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もうひとつの名店として向かったのは、羊羹のとらや。
室町時代後期に京都で創業し、天皇の東京遷都にお供し、1895年に現在の赤坂に店舗を開設している。

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木をふんだんに使った開放的な空間は、ただ歩いているだけで心が高揚する。2階奥の「鐶虎(かんとら」のマークが際立つ壁は黒漆喰の磨き壁を初めてみたとき「こんな黒色見たこと無いな」と思ってしまった。

和菓子屋の佇まいというよりはアートスポットである。

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3Fの茶寮でいただいた、虎柄の特製羊羹「千里の風」。
正直、慣れぬ手付きでいただいたわけですが、久しぶりの羊羹の甘みは、なんだか染み入るものがあり、和菓子の世界の美しさに一瞬にして魅了されてしまった。

茶寮から見える赤坂氷川神社の紅葉を味わう時間。
すべてがデザインされている感覚を覚えた。

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”異常値”な店こそ、面白い。

異彩を放つ店こそ、今っぽいし体験する意味がある。
おいしいを大前提に、伝え方、注文の仕方、購買の仕方、いくつかの変数のなかで従来のルールから逸脱した「異常値」の店に、ファンが生まれるんじゃないかな。
歴史があるから名店なわけではなく、時間を超えても放つことができる価値が、名店の証なんだろうし‥。そんなお店を私は全力で応援していきたい。

まさに「食いしん坊、万歳!」である。



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