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一体、「インスタ映え」とは何者なのか?

平成最後の夏、2冊の素晴らしい本に出逢えました。
山口周氏の「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」と、ダグ・スティーブンス氏の「小売再生 リアル店舗はメディアになる」です。両冊とも発売から時間が経っていますし、noteでも話題でしたが、なかなか手に取れずやっとのことでした。この本を読み進めて、なかなか「解」を出せなかった問題を導けた感覚を覚えました。

私をモヤモヤさせていたのは「インスタ映え」をどう整理するべきなのか?ということ。今回は、食べ物に関する「インスタ映え」について、どう受け止めるべきなのか考えてみました。

↓ 今回の目次はコチラ ↓
・二冊の本が教えてくれたこと
・自己実現的消費の象徴が「インスタ映え」
・食べ物の形容が「美味しそう」から「かわいい」へ変化した意味
・「インスタ映え」は終わらない

二冊の本が教えてくれたこと

グググーっと心臓をえぐられたところを抜粋します。

論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある。
※一部抜粋
多くの人が分析的で論理的な情報処理スキルを身につけた結果、世界中の市場で発生している「解のコモディティ化」という問題です。
長いこと情報処理のスキルはビジネスパーソンにとって必須のものだとされてきました。しかし、正しく論理的・理性的に情報処理をするということは、「他人と同じ解答を出す」ということですから必然的に「差別化の消失」を招くことになるのです。
世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある。
人類史においてはじめてと言っていい「全地球規模での経済成長」が発展しつつあるいま、世界は巨大な「自己実現欲求の市場」になりつつあります。このような市場で戦うためには、価格競争能力を形成するよりも、人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が必要となる。
人はふれあいを求めて買い物をする。
似たような店が2つあったとして、片方は客が入っていて、もう一方には客がないっていない場合、人は客が入っている店に入る。
これがショッピングの持つ社会的な本質である。人混みは、最も明快で端的な「社会性の証し」である。

二冊の本を通じて、日本人の欲求の歴史が脳裏を駆け巡りました。
日本がどんどん豊かになっていく中で、モノやサービスに執着する1970年代。飽和社会でモノやサービスに飽き始めた1990年代。
そして現代の欲求をマズローの五段階欲求でまとめて言えば、モノやサービスからワンランク昇格し、自己実現欲求へランクアップしていったということになるでしょう。(※マズローの五段階欲求フリー素材より)

自己実現的消費の可視化が「インスタ映え」。

ただ食べる、ただ楽しい体験をする、という欲求からワンランク贅沢者になった日本人は、「自己実現型消費」へ走っています。
これは、自己評価されることが目的で、そのための手法として食べたり、サービス体験を求めること。これまで、美味しいものを食べるのが目的だった昭和時代から欲求は変わり「いいね!などの自己評価されるために、パンケーキを食べる」という大きな欲求の変化が起きているのでしょう。
そう考えると、自己実現的消費が可視化されたものが、昨年流行語大賞となった「インスタ映え」と言えるのではないでしょうか。

あえて、食べ物に焦点をあてて例をあげてみます。
友人と週末にランチをする予定のあなた。インスタを漁って「この写真のカレー美味しそう!こんな写真を撮ってみたい!」と思ってお店を決めた場合、その段階ですでに自己実現的消費になりますね。カレーの風味を想像しつつも、決断の決め手が「SNSにあげる写真を撮ってみたい」だとしたら、それはすでにモノとしてのカレー以上の価値を、そのカレー屋さんから見出しているんです。
脳内でのこのような展開、結構日常生活にあると思いませんか?


食べ物の形容が「美味しそう」から「かわいい」へ変化した意味。

日本人はいつの頃からか食べ物を「かわいい」と言うようになり、最近では「映えている」と言うようになりました。
「美味しそう」は口に入れた時に魅力的な味わいを想像して発する言葉。対して「かわいい」や「映えている」は、あくまでビジュアルに対する評価です。日本人は食べ物を洋服のファッションと同じように、見た目に重きをおいていることが、使う言葉でもわかると思います。


「インスタ映え」は終わらない

よく「インスタ映え」の次に流行るものは何か?と聞かれたりしますが、インスタ映えは一過性のトレンドでは終わりません。インスタ映えに疲れて、「地味飯」が少し話題にもなっていますが、それはあくまで局所的な出来事。インスタ映えは、自己承認的消費の時代の幕開けを意味していて、今後は「インスタ映え消費」がより顕著に定着していくことでしょう。
SNSプラットフォームの成熟、副業解禁、パラレルキャリアなどで、自身の発信力が学歴以上に物を言う世の中になってきました。それは、自分自身のブランディングを強化していかなければならない時代ということを意味しています。
そこに紐づく消費行動のみが栄えていくことを、インスタ映えという言葉が教えてくれているようです。


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