海外留学のためのお金の話(イギリス編)

海外留学(大学・大学院)を考えた時に、一つのネックとなるのが勉強や生活のためのお金だと思います。どこの国に行くかによって、日本で学ぶよりもはるかに高い学費を払わなければならなかったり、あるいは非常に安い金額で学位を取得できる場合もあります。

ヨーロッパの一部の地域(例えば北欧、オランダ、ドイツなど)は、そもそも学費が無料のところが多いので、生活費さえ工面できればよいという場合もあります。もちろん大学や学部によりますし、学生の国籍や経済状況などにも影響されます。

ですが、日本で一般的に人気な国(例えばアメリカ、イギリスなど)は学費が信じられないほど高額な場合が多いです。そして往往にして生活費も高いです。私は修士号をイギリスの大学で、博士号をアメリカの大学で取ろうとしているので、振り返りも含めてどれくらいお金がかかっているのかまとめてみようと思います。今回はとりあえずイギリスの修士課程について。

ヨーク大学心理学部(修士) 2016 - 2017

日本の大学で学部を取得した後、三年ほど働き、イギリスのヨーク大学というところで一年間のTaught Courseで修士号(MRes)を取りました。Taughtというのは、一年の半分が講義で後半が研究(実験、調査など)と修士論文執筆というイギリスでは一般的な修士のコースだと思います。他にもResearch(研究主体)、Diploma(Taughtから修士論文を省いたもの)などがあります。

学費:£20,100(2,713,500円)
生活費:£8,061(1,088,235円)
ビザ・海外保険・航空券代など:384,503円
合計:4,186,238円
(※留学時のレート、1£=135円で計算しました。)
収入源:親に借りる、微々たる奨学金(£1,000)、クラウドソーシング(月一万円ほど)

私の留学直前にちょうどBrexitが起こり、急激なポンド安がだったので、留学する身としてはとてつもないラッキーでしたが、それでも400万強かかっての留学となりました。今留学したら500万を超えてると思います。

とにかく学費が高いです。毎年上がり続けていますので、今年はもっと高いと思います。ほとんどのイギリスの大学は、EU圏内からの学生と圏外からの学生とで学費が倍額以上違っており、私はもちろん日本人なのでEU圏外価格を支払わなければなりませんでした。

生活費に関しては、ヨークはイギリスの中でも比較的裕福な方が多く、土地代が高い方です(もちろんロンドンは比にならないほどもっと高いです)。私は六人でシェアハウスをして、一ヶ月光熱費・インターネット込みで£340(約五万円)でした。日々の食費などはほぼ自分で作り、これまでの人生で一番質素な暮らしをしていました。カフェ好きだったのでコーヒーはよく飲みましたが、服を買ったり旅行したりなど娯楽に費やすことはほぼゼロでした。

その他は、ビザ(Tier 4)の取得のために七万円ぐらい支払った気がします。手続きの手数料がそもそも高いのと、一緒に一年間のイギリスでの健康保険料を払わなければならないのと、さらに私の場合は時間がなかったので優先サービスという、追加で二万円払って早く手続きを処理してもらわなければならなかったので、高額になりました。あとは海外保険はかけておいた方がよいよという留学経験者の助言を鵜呑みにし、航空券代は往復分(ロンドン〜大阪・キャセイパシフィック航空)です。

重大な収入源ですが、私は三年働いたもののほぼ日々生きるための収入しかなかったので貯金もなく、親に頼んで借りることができました。自分の親が大学院進学に対して理解があったので、本当にありがたいことにすんなり出していただけました。感謝してもしきれません。

もし親に頼んでみてダメだったら、留学を一年先延ばしして、日本の奨学金に応募していたと思います。私が留学を決めたのが2016年の一月(同年の十月入学予定)で、そこから願書を書いて応募したのですが、すでに2016-2017年度の奨学金の応募は、前年の2015年の夏に終わっているものが多く、間に合いませんでした。(一つだけ可能なものがあったので応募しましたが、採用されず。)

私が出願した・してみてかったのは、下記あたりです。基本的に授業料と生活費、全部出してくれるところを考えていました。

本庄国際奨学財団
JASSO(給付型)
JASSO(大学院学位取得型)
フルブライト奨学金
----- 下記も興味あったけど、自分の専攻分野外でした -----
船井情報科学振興財団
中島記念国際交流財団

ちなみにイギリスで修士課程に奨学金を支給している大学・団体は、博士課程に比べるとすごく少ないです。もちろん日本と比べると圧倒的に奨学金(もちろん返済無用)の数が多く、専攻分野によっても様々な種類があるので調べてみる価値はありますが、その分競争率もすごく高いです。あと、意外と多いのがEU圏内に住んでいる人しかそもそも出願できないという条件とか、援助してくれるお金がEU圏内基準の学費と生活費のみ(ということは、余剰分の百万円以上を自己負担)というものがあるので要注意です。

下記のサイトに求人が多く集まっています。上から順に有名どころです。あとは自分が行きたい大学のウェブサイトをみるのは必須ですね。(他にも志願者が自分で出願するのではなく、大学が候補者として出願するというパターンもありますが、もともと大学とつながりがない限りは相当ハードルが高いと思うので、ここでは省略しました。)

Jobs
Find A Masters
Find A PhD
Economic and Social Research Council
Medical Research Council

ざっとこんなところでしょうか。含めていないところでいうと、今の大学に出願する前に、一度大学を見にハンガリーに行ったことや、ハンガリービザ取得のため一時帰国した際の日本での生活費ぐらいでしょうか。

イギリス留学中は、親からお金の援助をしてもらっていたものの、金銭的にも精神的にも余裕がなかったので、前期は強い不安を抱えていました。入学が十月なのですが、特に十一月と十二月は博士課程の出願をもう年明けすぐ出さなければならなかったこと(まだ修士に入ったばっかりなのに)、そして親に多額のお金を借りてるのに、この経験を無駄にしたらどうしようなど考えて相当プレッシャーが強かったです。そして冬場のイギリスの日照時間の少なさもあり、軽く鬱のような状態でした。侮るなかれ、太陽のパワー。

相当なお金がかかりましたが、それでも私は留学して得たものは大きかったなと思います。イギリスにいる時も、今いるハンガリーでも、語学学校などで教えている方の話を聞くと、日本人は夏の語学学校(三ヶ月だけとか)にはよく来るけど、大学の正規課程に入学する人が少ないと言っていました。イギリスの大学にいた時も、学部で私一人だけが日本人で、今の大学だとそもそも私が初めての日本人学生です。

海外留学の目的って、やっぱりみんな英語を喋れるようになりたい!って思うと思うのですが、単なるコミュニケーションとしての語学だけじゃなく、英語(他言語)というレンズを通してこれまで考えていた問題に取り組んだり、あるいはこれまで考えてこなかったことに挑戦してみるいい機会だと思うので、もっともっと気軽に海外で勉強できるシステムが整えばいいなと思います。少なくとも、お金が理由で諦めるのは勿体無いなと。今は奨学金だけでなくクラウドファンディングとか、色んな方法でお金を集めることができるようなので、私も少しずつお金の勉強をしていきたいなと思う今日この頃です。