七月二十七日・二十八日@ブダペスト

七月二十七日

大学の引越しの日(一部だけ)。朝は忙しいだろうと思ってお昼前に行くとまだ少し作業をしていた。自分の部屋に行くとデスクが丸々なくなっている。当たり前なのだが、少し寂しい(とはいえウィーンにいけばそれが置いてあるわけだが)。

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同室の男の子(同じラボだけど、この子はブダペストに残ることにした)もいて、一体どうなったんだ悲しすぎると言う。今までうちのラボは指導教員がウィーンにいることもあってバラバラだったのだが、これからは先生とは会えるけど同僚とは会えなくなる(人もいる)んだなと思う。会えないことはないけど、同じ場所で毎日見ることはもうない。

大学が追放される兆候は私が出願した2017年にはすでにあったけど、まさか誰も本気で出ていかなければならないとは思っていなかっただろう。追い出されると考えると、それにまつわる手続き、時間の消費や心労でネガティブなことばかりを考えるが、逆に新しい場所(しかもウィーン)に行けるし新しい出会いを求める方が建設的な気がする。

私を学部で見かけると、こちらに残る人々がいつ引っ越すのか聞いてくる。八月末までだからあと一ヶ月あるけど、一ヶ月後には三年住んだブダペストとお別れなのかとしみじみ感じる。たくさんはいけないが、ハンガリー国内旅行なども計画しておく(幸いハンガリーはコロナが落ち着いていて自由に動けるようになった)。

午後はラボに行ってちょっと自分仕様に配置を変えたりする。今誰も使ってないので私のオフィスと化している。早く実験を始めたいが、なかなか準備にてこずり、また別のアイデアも浮かんだりして、このところは具体的に手を動かせるようになってきた。

どうでもいいけどラボのパソコンにもGitHub用にGPGとSSHの鍵を作っておく。今もいまいちよくわからないが、昔に比べたらまだ意味がわかるようになって、特に勉強したわけでもないのになんでだろうなと思う(同じマニュアルを読んでも読み取れる情報量が違うのかな)。

一年生の時は何が何かわからなくて必死すぎて一年が終わり、二、三年はだらだら何もやる気がなく終わったなという感想である。だらだらしながらも何か私も考えていたのかもしれないけど、普通だったらもうみんな博士号もらってるんだなぁと思うと私と私の大学の学生と、一般的な日本やイギリスの学生と能力にどれぐらい違いがあるんだろうと思う。もちろん一年生の間に授業があって実験できないのが遅れの原因なのだが、それにしたってどこの学部も大体五年ぐらい卒業ぐらいまでにかかっている状況は怠惰なのか、なんなのか。

七月二十八日

なんだか変な夢で目覚める。全く何をしていたか細かいことを思い出せないが、とても不快な気持ちだった。どうやら翻訳作業(?)を勝手に一人でやって、母親にそんなに非協力的だったら知らないと怒られたりしたような、そんな夢だったが、私はあまり母親と喧嘩することがないので、こんな夢を見るのは嫌だなという気持ちになる。

朝コーヒーを買いに行くと、ポスドクの先輩もそこにいて話しかけてくる。いつ引っ越すのと聞かれる。八月末だと答える。

次の実験の準備をした方がいいが、先にその次の実験の倫理審査書類を書く。これからはウィーンで実験するので、そちらに合わせた内容に書き換える(とはいえお金の単位が変わったぐらいなのだが、同じヨーロッパ圏内だし)。

ラボで作業してるのですぐに横にピアノがあって、疲れたらすぐ弾けるのがいい。久しぶりにモーツァルトのきらきら星変奏曲を弾いた。確かこれは私が小学校六年生の時に、ピアノの先生の家でのクリスマス会かなんかで弾いたと思う。

今日は特に気乗りしなかったのでいつも開きっぱなしにしてるSNSをあまり開かなかったが、やっぱりそうすると作業に集中できるなと思う(当たり前)。最近は陳情令もやっと数話見始めて面白味が出てきたし、漫画も読んでるし、SNSがなくても楽しいことが増えてるのかもしれない。とはいえ私は本当に今の状態だと誰とも会話しないので、SNSとかである程度喋った方がいいような気もするけど。

ウィーンの住処はもう決めていて、そこの大家さんから連絡がくる。入居日などの話をする。いつも必ず見に行ってどこに住むか決めるのだが、今回は少し前までは自由に旅行できなかったので、スカイプで大家さんと話をし、部屋を見せてもらい、決めたという流れである。直感でしかないが、今回も物件自体(大家さん含め)は当たりを引いた気がする。強いていえば大学から遠いのと洗濯はコインランドリーにいかないといけないのが気にかかるが、とりあえず数ヶ月住んでみたらどれぐらい困るかわかるだろう。次は再び一人で住みたいので、多少難があってもそこそこの値段で一人用のアパートメントを見つけられたのがよかった(ウィーンも単身用アパートはいっぱいあるが普通に探すとめちゃくちゃ高い、1000ユーロからなど…その代わり日本の部屋よりは広いけど)。

家にパソコンを持って帰ると無駄にSNSしたり、作業しなきゃと思ったりするのでラボにパソコンを置いて帰るようにする。私はパソコン作業が嫌いなのかもしれない。