研究発表会(三年生時)

毎年学期末に開催される博士学生の研究報告会の感想など。今年は少し遅く六月三十日(一日だけ)だった。

会自体の詳しい流れは前の記事に書いてある通りだが、今年はコロナの影響があってZoomでの開催になった。何でもかんでもZoomである(しょうがない)。私は午後に移民局にいかなければいけなかったので、一番最初の発表者にしてもらう。そういえば最近これまでに作ったスライドなどをまとめてアップしはじめた。元々学会などで発表したものは、自分のウェブサイトに載っけていたのだが、すると私の名前で画像検索すると実験結果の図ばっかり出るようになったので、Githubに移動。

発表内容(ざっくり)

今年の発表は去年の発表と理論的な部分では全く同じで、使った実験の素材が異なるため、いわば自分の最初の実験の追試をしたような形であった。自分にとっては特に目新しいものでもないが、他のラボの人はこの時ぐらいしか私の研究を知る機会がないので、それなりに新鮮に映っているかもしれない(いないかもしれない)。

① 熟達者は教える意図があるとき、よりゆっくり演奏するだろう/もしくは熟達者はアーティキュレーション(レガート・スタッカート)を教えるときだけゆっくり演奏するかも(これは前の実験の結果をふまえて)
② 熟達者は教える意図があるとき、それぞれの音楽技法を強調(誇張)して演奏するだろう。
→特に音楽がわかる人へ:レガートの指示があるところはより長い(深い)レガートを、スタッカートの指示があるところはより短いスタッカートを弾くはず。フォルテの指示があるところはより大きなフォルテを、ピアノの指示があるところはより小さいピアノを弾くはず。また、特にフォルテとピアノの差を強調するように弾くはず(これも前の実験の結果をふまえて)

追試なので実験結果の予測は前のものと比べてもう少し詳しいものになったが、根本的には内容も仮説も去年のものと一緒のことを調べて、追試が成功しましたねというような感じであった。

プレゼンのこと

これらのことを例年通り15分以内で説明し、5分間の議論があるという流れである。昔はプレゼン資料を作るのがとても好きだったのだが(デザイン的な意味で)、最近はちっともワクワクしないし何とも思わなくなった。むしろデザインを変えると気が散るので固定したいという気持ちである。Google Slides, Keynote, Power Point, RMarkdownと試したが今のところはRMarkdown (xaringan) で作成するのが一番楽だなと感じるようになった(レイアウトなど自分で手(マウスの配置など)で調節しなくて良いため)。共同でスライドを作るのであればやっぱりGoogle Slidesは便利だと思う。

一年前はそれなりに気負いしすぎずにでもちゃんと15分で収まるように練習したとブログに書いてあるし、なんとなく記憶も残っている。一応一言一句書き出して、スライドのノートには書いておいて気はする(困ったらチラ見した)。今年も同じような感じで、とりあえず全て書き出す前に一回フリーで喋ってみて、詰まったところから書き起こし始めて、一応全部のスライドに喋ることを書いておく。寝る前に練習して録音しておき、次の朝聞いて自分の発音が気持ち悪いなとかあ〜とかう〜とか多いなと思いながら、なるべく余計なフィラーを発しないように気をつけて練習する。一応発表者用のノートをつけておいたが、Zoomの画面共有でなぜかうまく見れなかったので、実際はスライドを見ながら何も見ずに喋った。

練習しているわけだから何も見なくても喋れて当然なのだが、修士終わる頃の心持と比べるとだいぶ成長したなと思う。いい意味だけじゃなくて、相当英語に適当になったのと聴衆が学部の人ということで気が抜けてるのもある。けれど、あまりにカチカチに練習されすぎたプレゼンというのは聴衆も固まってしまうのでそれなりに適当なのがいいと思う。最近は練習は絶対するけど、精神的に追い詰めないのを目標にしている(例えば修士や一年生の時にやった、一言一句記憶)。

自分だけなのかもしれないが、日本語でも発表が苦手なのに英語で話そうと思うとさらに頭が真っ白になる。研究内容は特にだが、日常会話でも自分の思考と言葉が密接につながっていないようなトピックだと、あ〜う〜みたいな返答が多くなって困る。なのでやはり英語力向上にはなるべく広い分野の書物を読んだり映画を見たり友達と議論したりするのがいいなと思う。

質問など

ディスカッションが五分しかないのでそんなにたくさん喋れないのだが、その中でも三つ質問をもらった。

①数値的には変化があるようだけど、演奏している熟達者(ピアニスト)自体はどういう感覚で弾いているのだろうか。質的なデータはあるか。
②熟達者は教えるという教育的な意図を持って演奏を変化させているのか、それともただ重要な点を強調しているだけなのかどっちなのか。(この質問はその後他の発表者の時にもでたが、私には意味がわかるようでわからなくて答えられなかった)。
③今回の研究は目の前に実際の生徒がいないから、いる状況と比べてどう違うのか知りたい。

こういうフィードバックもらうと先日リジェクトされた論文へのコメントと全然違って、やっぱ発表するところと伝え方によって全然もらえるフィードバックは異なるんだなぁという、至極当たり前のことを実感する。質的なデータはあまり見てなかったので、もう少し考慮に入れてもいいかもしれない。

先ほども書いたように良くも悪くも適当になってきたので、反省するのも適当なのだが、今年は特に可もなく不可もなくといったところであろうか。一番良くない評価かもしれない。しかしながらこれより移民局に行く方の不安があって(今後の滞在と給料に影響する事案があったので)、それを一応頭の隅にとりあえず置いておけたのは頑張ったなと思う。

例年だったらここから日本に帰ってパーっと休みたいところなのだが、全然データがなくて次の実験の用意をしなければならないのと、今日本に帰れる状態じゃないので今年はブダペストで夏を過ごすことになりそうである。