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#24 やっとの、やっと、、、ボリビアの障がい者施設にてアートワークショップをしてきました。

2022年5月8日 domingo
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仕事でのモヤモヤ、ことごとく約束事がまもられないことに対するイライラに加えて、プライベートでも絶賛低空飛行中の私を元気づけるかのような出来事が次々と起こった、この二週間。大きな動きでいうと、私の提案しているプロジェクトのひとつに進展があった。
この一ヶ月ほど、障がい者施設への訪問申請の手続きに奔走してくれていた生徒 Belén から、「訪問の許可が認められなかった。ごめんない。」との連絡を受け、却下の内容を見ると、どうやら訪問の理由が曖昧で、その必要性が感じられない、というような感じ(だと思う)。申請却下の書類を取りに、再度、SEDEGES(という社会福祉に関する様々な活動を管轄している機関)に出向く、というので「私も一緒に行って話をしてみる」と、Belénにメッセージを送った。担当者を説得するための追加資料を用意して。

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連絡を受けたその次の日の午後、Belénと学校で待ち合わせし、歩いて一緒にSEDEGESへ向かった。私は担当者を説得するために、奈良のたんぽぽの家、ふうちゃんの山嵐Tシャツを着て「ふうちゃん、私に力を貸してくれ!!」という思い。

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SEDEGESに到着し、IDを提示して担当者のいるオフィスへ向かう。申請手続きで何度か来ている Belén の誘導で中へ入ると、ヒソヒソと「Japonesa...(日本人)」と話されているのが聞こえる。担当者のおじさんのデスクに向かい、書類を受け取るBelén。そして私は「私がプロジェクトの代表者です」とあいさつし、自分の経歴、プロジェクトで今まで実施したリサーチから、今後想定している活動の可能性について具体的な例を交えて、話した。
「内容はわかったが、どういう(障害を持った、いくつくらいの)子どもたちを対象に活動するのかが明確じゃない」と言われたので、「それも、会ってみないとわからないし、実情を知らないと進められない」と返すと、「じゃあ、一度施設に行って、どういう子たちと活動できるか確かめるといい、私が施設に連絡する」とのことば。そして「明日の朝、(決定権のある)ディレクターと話をしに、再度来てくれ」と。
SEDEGESを出てから「イエーーーーーイ!!」とハイタッチする私たち。その後すぐに、プロジェクトメンバーとのミーティングがあったので、そこに急ぐ。「閉まりかけたドアに足をはさんだ状態よね!」と言った私の表現にいまいちピンときていない Belén。私にとっては、ボリビアに来て一番うれしい瞬間だった。その後、学校へ戻って「施設訪問の可能性をつなぎとめた!明日また交渉に行く」と、他のメンバーに話すと、一人の男の子が「Somos bolivianos. (僕たちはボリビア人だから)」と、もしうまくいかなくても大丈夫だよ、と、やさしい言葉をくれた。

次の日の朝は、私一人でSEDEGESに向かった。

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入り口でもたもたしていると、前日に「日本人がきた」とヒソヒソ話していた女性が「この日本人、、、」と、私の用件を伝えてくれた様子で、オフィスに通してくれた。着くと、ディレクターはいなく、昨日のおじさんが「一人で来たのか?」と。「すでにディレクターに話はして、下見の訪問が認められたから今から行ってきて、子どもたちを見て、来週月曜日に具体的なプランを再度提出して。」と言われた。「生徒の子と一緒に行きたいので明日の午前でもいいですか?」とお願いし、次の日、満を持して、施設の中に入ることができた。
中に入ってみると、まずは小さな子どもたちが広場でイベントに興じている。私と Belén を見て手を振る子もいたり。2階のオフィスに通され、看護師さんたちに資料を見せながら、プロジェクトの概要を説明する。そして「日本では障害を持つ人たちがこんな活動(仕事)をしています。」と。この日はまた別のTシャツを着てアピール。

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スタッフの方々は親しみやすい印象で、私の紹介するものに対しても興味を示してくれている様子。そして、施設内のいくつかのセクションを案内してくれた。Instituto de Adaptación Infantil (IDAI) は、いろんな障害を持つ子どもたちが生活している。ここの子たちには家族がいなく、障害のレベル、種類もさまざま。一通り案内してもらった後、ドクターと話をすることに。再度、資料を見せながらプロジェクトの紹介をする。と、「ここの子たちは比較的、障害も重く施設外に出ることができない。プロジェクトの主旨を見るに、外にいるもっと軽い障害の子たちを対象にした方がいいのではないか」とプロジェクトの受け入れを拒否するような返答だったので「子どもたちを外に連れ出すことは想定していない」「一緒に作る何か(モノや行為)を媒体として、彼らの存在を外に示すことはできると思う」と説明したところ、「であれば、一度、試しにやってみて、ここでその活動ができるかどうか見てみなさい。創作活動の材料はそちらで用意できるんだね?」と、ぎりぎり承諾してもらうことができた。

5月4日水曜日、プロジェクトメンバーの生徒二人と、教員のWalter、私の四人で IDAIへ向かった。ワークショップの材料は私が用意して。

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ワークショップは15時半にスタート。食堂に10名の子たちが集まってきた。看護師さん曰く「何をするのか理解できる子たちを集めたので、この子たちと活動できるか可能性を見てみて」とのこと。絵を描く子、折り紙で遊ぶ子、音楽をかけて!と、私のケータイをいじる子、そして踊ったり、歌ったりしている子。みんなから離れて Belén と二人で静かに過ごす子。最初は様子を伺っている子も、徐々に打ち解けていく。私たちも同様に。

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帰る頃には何度もハグをしたり、手を繋いでくる子や、描いた絵を「思い出に取っておく」という子がいたり。「また会おうね」と、みんな何度も手を振る。この活動のあと教員の Walter は「彼らから学ぶことがたくさんある」と言っていた。
看護師さんから「具体的な活動プランについて、また話しに来てください」と。まだまだ形にしていくには時間がかかるけども、私がいなくなった後も継続できる活動になればいいな、とおもった。



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金曜日、職場での教員や生徒との交流の機会が限られている、と嘆く私に、同僚のダニエルが「エルアルト校の、自分のクラスの生徒にアツコを紹介したい」と、私を彼の授業に招いてくれた。私が普段通っているラパス校の他に、エルアルトにもキャンパスがあり、そこに通う生徒と接触する機会は、ほぼない。
夜の授業ふたつに参加し、私の過去のデザインプロジェクト、作品の紹介をしたり、日本とイギリス、ボリビアのデザインのプロセス、考え方の違いなど、ダニエルに導かれるままにプレゼンをするハメになる私。

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シンプルに見えてもコンセプトが作り込まれている表現の強さや、可能性をとことん探る、考え抜く、実験することの重要性など、特にダニエルが生徒たちに伝えたいことを中心に話す。「こんな機会は滅多にないから、聞きたいことなんでも質問して」と生徒に促すダニエル。全然うまく喋れなかったが、彼のサポートもあり、なんとか伝わっているか?という感じ。しかし少しでも多くの生徒に会えるのは、単純にうれしい。
授業が終わり、標高4000mを超えるエルアルトからテレフェリコで降りていく景色。(ダニエルのシルエット込み)

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お腹が空いていたので、カフェに寄ってコーヒーとサンドウィッチを食べる私たち。障がい者とのプロジェクトの進捗について話すと「ボリビアでは、障害を持つ人たちの環境はまだまだ閉ざされていて、難しいテーマだから、本当にすごい!」と喜んでくれた。私の身辺のことも色々と気遣ってくれる彼は「アツコは一人じゃないから、それは忘れないで」と言ってくれた。その後、私が一人で過ごしたスコットランドのクリスマスの話をして、二人でいっぱい笑った。


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土曜日、生徒500名近くと職場のレクリエーションのイベントに参加した。Valle del sol [バジェ・デル・ソル]にて野外のアクティビティをする、というもの。自分の受け持っているふたつのプロジェクトと、ひとつの授業の生徒たちも参加する、ということで、私は彼らに誘われるがままに参加。朝8時、学校の前に着くと、多くの生徒が集まっている。

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割り当てられたバスに乗り込み出発予定時刻の30分後に出発。予定通り、遅れる(笑)。目的地に着いてから、バタバタと諸々の用意をするオフィスのメンバー。予定はあってないようなもので、いつ何が始まるのか、よくわからないまま、ぬるりとイベントが始まっていた。

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特に仕事のない私は、みんなの動く様子を見つつ、「今何してるの?」と聞いたり、他の教員と話したり、エンジニアの同僚とふざけて遊んだりするだけ。気楽だ。

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普段ゆっくり話すことのできないグラフィックデザインコースの顔見知りの教員と話もできたので「ラパス市内を巡るツアー組んでよ!一緒に街歩きしよう。」と、お願いをしてみたり。
私の活動に参加している生徒に出会うと、みんな「アツコー!」とハグをしにきてくれる。2ヶ月半ほどの活動で、そんなふうに親しみを感じる存在になっていることにびっくり。みんなかわいい。

何をしてるのかな、と見ていると、チーム対抗でかけ声のコンペティション?があったり、ダンスバトルがあったり、

ただただびしょ濡れになる謎のゲームがあったり。(結局こういうシンプルな遊びが一番たのしい・・・)

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(↓私の生徒が「先生、これ持ってて!」と私に時計を渡し、濡れる準備をする。そして、しっかり濡れていた。)

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最後はダンスパーティと化す。私の横で踊っていた教員(この日初めて会った女性)に「ダンス教えて!」と言うと、ボリビアのダンスを踊れるクラブがある、と教えてくれ「今度一緒に踊りに行こう!」と。
どういうイベントなのか謎のまま、とにかく楽しかったからよし!そんな感じで終了。


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日曜日の今日、夕方にカフェで元生徒と待ち合わせ。彼女は2020年に日本とボリビア間で実施したオンラインの授業に参加していた生徒で、昨年3月に日本で開催した展示にも参加している。彼女はもう卒業しているのだが、私のインスタグラムを見て、今実施している「CLUB de INTERCAMBIO」に参加したい、とメッセージをもらったのだ。
今日会った彼女はとても明るく、たのしい女の子だった。15時にカフェで待ち合わせしていたところ、私より早く着いていた彼女。「日本人との待ち合わせだから!」と笑う。今はフリーランスで働いているらしい。トランペットも吹くという彼女は、東京スカパラダイスオーケストラが好き!と言うのでびっくりした。私が Emir Kusturicaの音楽が好き、と言うと、映画の「黒猫・白猫」とかね!と、ボリビアに来て、こういう話題が通じるのも珍しく、うれしくなる。いろんな話をし、気づけば18時近くになっていた。私の反応にいちいち笑う彼女、につられて私も笑いが止まらない。「なんかめちゃくちゃ笑ってるね」と、たのしい時間を過ごす。

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彼女は、障がい者とのプロジェクトで私がいま協働している Walter の生徒だったらしく、彼のインスタグラムでプロジェクトのことも見た、と。すごく大事なテーマだとおもう、と、そんなことも言っていた。(↓Walterが帰り際に撮っていた写真)

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彼女とは私がボリビアにいる間に何か一緒にできることがありそう、とそんなことも話して今日は別れた。

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ATSUKINO(アツキーノ)

2006年〜日本でグラフィックデザイナーとして働いた後、2013年に渡英。スコットランドの The Glasgow School of Art で修士号(Communcation Design: Graphic Design)を取得。帰国後はアートディレクター、キュレーターとしてデザインディレクションとともに現代アートの展示企画制作なども行う。海外での生活、旅を通じて得られる新たな表現や人との出会いが次の可能性につながると信じて動く、旅するデザイナーでありアーティスト。現在は南米のボリビア、ラパスにてJICAボランティア活動中。デザイン教育環境の改善にあたっている。
http://nakanoatsuko.com/
https://shadow-candle.com/

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