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《戦術プレビュー》チェルシーvsマンチェスターシティで起こり得る戦術ゲーム

今回はプレミアリーグ第6節の目玉、チェルシーvsマンチェスターシティの戦術プレビューを書いていこうと思う。

 この2チームは、いわゆる今シーズンのプレミア4強の中でも特に戦術的なチームだ。昨季のCL決勝と同カードでもある。その昨シーズン、チェルシーがトゥヘルを招聘してからの両者の対戦成績はチェルシーの3戦全勝。今の勝ち点差を考えたときにシティにとっては絶対に負けられない戦いだ。昨季の悔しい思いも相まってペップは相当な心意気でゲームに挑むだろう。

 では、この戦いで起こりうる戦術的な駆け引きを考えてみる。ただし、ペップが大一番を前に例の"突然変異"を起こす事は考慮しない。

シティの前進を妨げる方法

 今回のプレビューに際して、シティに関してはCLライプツィヒ戦分析した。チェルシーはPL5節スパーズ戦を分析している。
 この試合で最も気になったのがビルドアップだ。シティが大量得点できた理由がこの日のビルドアップにある。下図を見てほしい。

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これは先制点を奪ったCKに繋がったビルドアップ。ライプツィヒはシティの2CB+アンカーには2トップで対応しそれ以外はマンツーマン気味の守備をした。しかし2トップがどちらもCBにプレスをかけてしまったためにロドリが完全なフリーになっていた。偽SBで内に寄っていたジンチェンコに対しても人は付いているが、この形であればジンチェンコ経由でロドリにボールを渡せる。早い時間帯からアケがこれに気付いて幾度となくこれと同じような絵を見た。
ライプツィヒがこのビルドアップを抑えるシーンもあった。

このビルドアップを防ぐためのチェルシーの策は主に2つある。1つ目はマンツーマン。これは集中力があり体力が最もある序盤30分間で主に使われることになるだろう。もちろん1週間前のロンドンダービーでも用いられた手法だ。

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もう1つは2CB+アンカーに2トップで対応する人を意識した静的な守備。静的な守備とは、決して走って相手を追い込むプレスではなく相手のビルドアップにジワジワと追い詰めていくタイプの守備のこと。ここでチェルシーが気を付けなければならない重要事項がある。2トップの距離感だ。スパーズ戦でもこの距離感のズレで簡単に前進させてしまった場面があった。

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ハバーツとルカクの位置関係に注目したい。距離が空きすぎている上にハーフスペースでフリーになっている相手がいる状況。ピンクの位置が理想的だろう。この2人の役目はボランチを見ながら2CBにも圧をかけること。ここではジョルジーニョがボランチを見ているため、ハバーツはトップにいる意味がない。したがってポジションを下げておく方が良いだろう。シティは隙があればどんどん突いて攻撃に持っていくチーム。知将トゥヘルがどこまで修正しきれるかに注目したい。
また、しっかり守備をすれば簡単には前進を許さない事はライプツィヒが数少ない事例で証明済だ。

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このようにアンカーを抑えて、両SBとIHを適切な位置でマンマークした上で2CBに対して効果的なプレスをかけられている。結局ここではシティに前進を許してない。また、同じような形で5節のサウサンプトンも上手く抑えることに成功している。トゥヘルもこのような形を参考して策を練るだろう。

シティの鍵を握るのはデ・ブライネとギュンドアン

シティ戦で守備をするときに最も厄介な選手が両IHのギュンドアンとデ・ブライネ(以下KDB)だ。もちろんシティが擁する他の素晴らしいMFであるB.シルバやフォーデンもいるためチェルシー戦でスタメン出場するとは限らないが、記しておきたい。
先ずはギュンドアン。B.シルバよりも縦の動きが多い。

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ここでは1トップのF.トーレスが下がっているためCBが少しつられている。また右WGのマレズに対しては2人でマーキングしている上に、左の大外にはグリーリッシュ。この状況を把握したうえで一気に最終ライン裏に抜け出すアクションを入れている。カンセロの正確なパスがギュンドアンに収まりチャンスとなった。シティはスターリングやサネなどのスピード優位のWGからマレズやグリーリッシュなど、技術のあるWGを多く起用するようになった。このことでビルドアップ時のWGによる裏への動きが少なくなった。しかしギュンドアンがいることでこのアクションによる脅威があることに変わりはない。非常に厄介だ。

もう一人がKDB。ギュンドアンの縦の動きとは対照的に横の動きが厄介である。下図を見てほしい。

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ここはライプツィヒがロドリに対してマーキングしていた場面だが、KDBの動きでボールを効果的に動かせた場面だ。KDBは本来の位置ではなく、大外に動いていることが分かる。これでマーカーも動かしており、同時にロドリの前方向にスペースを生み出している。またKDBのマーカーはロドリとKDBを見ることになり数的不利。このようにしてシティのビルドアップがうまく行かなくても動き一つで局面を変えることができる選手だ。
また、この動きで一気に最前線までボールを送り込むこともできる。

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上図のようにKDBの横の動きで相手の2ボランチの距離感をズラし、一気にF.トーレスまで運ぶことができる。またこの動きでハーフスペースでフリーになることもできるのが相手にとって厄介なポイントでもある。

このようにこの2人は縦と横の動きをそれぞれ持っているため、組み合わさった時に威力は増すだろう。チェルシーの守備陣は十分に気をつけたい。

チェルシーの驚異

ここからはチェルシーを主に分析していく。まず脅威が言わずもがな、ロメロ・ルカクである。また彼を活かす周りの動きにも注目したい。ルカクにはパワー、スピード、決定力の全てが揃っている。それは開幕戦から見てきた人であれば誰でも分かることだ。

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さっきのKDBと同じだが、ルカクへのパスコースを空ける動きがある。状況によっては上図のようにその後に横を使った攻撃でチャンスを広げることもできる。

チェルシーの特徴の一つがマルコス・アロンソだ。

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このように左サイドを一気に駆け上がりダイレクトにゴールに向かうプレーをする。ハバーツがうまく左サイドのDF2人を引きつけていることが分かる。アロンソはボレーシュートも上手いから本当に危険。この攻撃は主に即行時に用いられる。シティはSBを内寄りにして攻撃するため、よりアロンソの駆け上がりには注意したい

最後にロンドンダービーで散見された攻撃手法を紹介したい。サイドに密集して、空いた中央のレーンを使う攻撃

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上図にもあるように、全列の選手が左サイドに寄って直線的で速いパス回しで前進する。すると、中央に広大なスペースが生まれる。ここで、広大なスペースを生み出すために逆サイドで行われていることにも注目したい。ルカクが右サイドでしっかりDFをピン留めしていることが分かる。このサイド攻撃が偶発的なものではなく、チームとして意識的に行われているのだ。下図も同じような系統の攻撃だ。ビルドアップ時にコバチッチがサイドに移動し、ヴェルナーがハーフスペースに移動。アロンソがボールを持って駆け上がるとヴェルナーがサイドの裏のスペースに侵入。結局、ヴェルナーは囮として使い、コバチッチがボールを受けて持ち前の推進力で一気に中に侵入した。ここからチャンスが生まれた。

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ただ、シティにはこのような攻撃に対して高い運動量で対抗する力があると勝手に思っている。果たしてどちらが勝つのか。注目したい。

結局はビルドアップ対決(スタメン&ゲームプラン予想)

最後にスタメンと基本的なゲームプランを予想したい。まずはチェルシー。基本システムは5-3-2を予想する。メンバーは5バックが左からアロンソ、リュディガー、T.シウバ、クリステンセン、アスピリクエタ。中盤3枚はコバチッチ、ジョルジーニョ、カンテ。2トップがハバーツとルカク。基本的にシティにビルドアップさせる形で勝負すると予想。その中で攻守でダイナミックな動きができるアロンソ、アスピリクエタ、コバチッチ、カンテは必須だと思う。

シティの基本システムはもちろん4-3-3。左からカンセロ、アケ、ディアス、ウォーカーの4バック。中盤はギュンドアン、フェルナンジーニョ、B.シルバの3枚でグリーリッシュ、F.トーレス、マレズがスターターとして得点を狙うだろう。ゲームプランはとにかくビルドアップで前進を狙う。

結局ビルドアップが鍵を握る対決になると予想した。知将同士の対決だから何が起こってもおかしくは無い。ゲームが始まってからのお楽しみだ。

まとめ

いかがだっただろうか。プレビュー分析はレビュー分析よりも高度。なぜかというと予想が入ってくるし、これに対してどうしていくべきかを完全に頭の中で想像するしかないからだ。カッコつけるなら現場の分析スタッフや監督コーチと同じ作業をすることになる。長ったらしいブログになってしまったが、ぜひこれらの分析を踏まえて楽しいサタデーナイトを過ごしてほしい。
最後にスケボに乗るAtsudのアイドル、ナーゲルスマンの画像で締めさせていただこう。

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