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«分析» 20/21 La Liga 1節 Atletico vs Sevilla Match Analysis

 こんにちは。Atsudです。今回はコロナの影響で延期になっていたラリーガ・サンタンデールの開幕節、アトレティコvsセビージャを分析します。他と2試合少ない状況にも関わらず2位に勝ち点差4をつけて1位の座に君臨しているアトレティコはこの試合でもCL圏内確保に挑むセビージャを寄せ付けない試合運びを見せたように思います。なぜセビージャはアトレティコに屈してしまったのか、という議題を中心に考察してみたいと思います。

 では、分析をどうぞ。

ラインナップ

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 アトレティコはいつも通りの5-3-2、セビージャも4-3-3でスタートした。とはいえ、両チーム共に局面や状況によって可変していくことには注意したい。

ビルドアップ:アトレティコ (ハイプレス:セビージャ) 

 主に序盤に見せたアトレティコのビルドアップは両WBが上がってピボーテのKokeが3or4バックのサポートをする形をとった。対してセビージャは4-2-1-3のような形でマン・オリエンテッドで静的なハイプレス(位置は高いが激しくボールを奪いに行くようなプレスではないもの)を仕掛けた。そして中盤3対に関してはマンマークで守り、GKやCBに、ロングボールを蹴らせることには成功していた。

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 上の図のようにセビージャは各々に明確な役割が与えられているため選手個人としても守りやすかったのではないだろうか(ロペテギがピッチの中に入ってしまっているこの情熱っぷりが好き)。セビージャが上手く対応している例として15:00のシーンをあげる。

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 ここではSavicが後ろ向きにボールを受けたことで圧をセビージャが掛けに行ったところである。しかしRakiticにマークされているKokeが機転を利かせ中央に大きなスペースを生み出したことが分かる。

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 セビージャの中盤3人はマンマークに徹していたため、Kokeの思惑通りに中央にボールが入ってもFernandoが上手に対応することができた。ボールを取り切ることはできなかったが、アトレティコのビルドアップを上手く封じた象徴的なシーンである。

ビルドアップ:セビージャ (ハイプレス:アトレティコ)

 アウェーチームのビルドアップにも注目したい。こちらはFernandoが最終ラインに加わり、両SBが上がる3-4-1-2の形を選択した。前線は、中央のSusoが下がり目の偽9番の役割を担った。アトレティコは基本的に引いて守ることが多かった。稀にハイプレスを掛けたが、セビージャのSBにボールが入るときにWBではなくIH中心に対応していたため、GKが持つ状況ではロングボールをあげさせるとボールを回収できたが、そうでない場合にどうしても意識の問題で中3人が広がってしまうことが多く、ライン間でSusoにボールを受け取られてしまうことが多かった。

ポゼッション:セビージャ(前半) (リトリート:アトレティコ)

 このような側面からセビージャはホームチームとは違って簡単にボールを敵陣に持ち込むことができたが、アトレティコの牙城を崩すことは簡単ではなかった。アトレティコは基本的に6-3-1でセビージャの攻撃を迎え入れた。既存の5バックにトップのCorreaが加わった6バックである。トップを最終ラインに組み込むことには少し驚きもあったが、おそらくシステムを可変させていく中で3枚しかいない中盤でコロコロメンバーを入れ替えるより、中盤は固定してCorreaに頑張ってもらった方が安定する、といった意図だろう。

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 セビージャの視点に立って分析してみよう。両ワイドにSBを配置している。6バックに対する最低限の幅を確保することには成功するかもしれない。セビージャは常に右サイドを意識しながら攻撃していた。(両チームの試合をよく見るわけではないので意図は分からない。)上の図にもあるがOcamposは常に右ハーフスペースの住人となっていた。アトレティコの中盤3人のワキということもありこのような状況でOcamposにボールが入ることは多かった。OcamposのレイオフでワイドレーンでNavasがボールを持ったり、中のライン間でSusoが受けたりと試合展開を予想した中で明確な意図をもって色んなパターンを用意したロペテギの手腕はさすがだなと思う。一方、セビージャのエースでもあるOcamposを封じ込めることはアトレティコのテーマでもあった。基本的にHermosoはマンマーク。CrrascoはNavasにボールが入ったら、ワイドレーンのコースを切って内側に誘導するような姿勢でOcamposへのパスを阻んでいた。セビージャに一貫して言えることは、バイタル付近でのパスを繰り返し、RakiticやJordanにスキをついたパスを出してもらうような状況を生み出せるのではないかということだ。特に20:40のシーンはアトレティコのような相手に対して繰り返されるべきシーンであった。

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 中央経由の細かなサイドチェンジを繰り返したことでアトレティコの守備陣形が完全に崩壊していた瞬間であった。幅をとっていたためWBを釣りだすことにも成功しており、ボックス付近では5vs3の陣容が3vs3の数的同数になっていた。このような形は引いた相手を崩す理想的な形である。そしてJordanの優れた視野と戦術眼による素晴らしい縦パスにつながっている。このように縦パスを入れることの選手がいるからこそ、もっとこのような形を作れば流れの中で得点できたのだろうな、とも思う。とりわけ最終ラインを広くアーチのように守るアトレティコに対し、サイドに固めて攻撃しようという攻撃はなかなか難しいだろう。

ポゼッション:アトレティコ (リトリート:セビージャ)

 アトレティコのポゼッションについても触れておきたい。3-4-3でセビージャのゴールに迫った。試合全体として肝になったのがTrippierに対しての守備であった。先制点もTrippierがアシストしており、セビージャにとっては攻撃を封じ込められたこと以上に重要な反省点であったように感じる。最初はEn-Nesyriが下がってTrippierにパスが渡らないように対応していた(3:10)。しかし、これは守備意識の問題で、アトレティコのような極端なチームではないためEn-Nesyriを一向に責められる話ではないが、だんだんEn-Nesyriの位置が高くなっていった。そのためにTrippierにフリーな状態でパスを通されることが次第に増えていき、15:50の先制シーンに繋がった。

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 先ずは上手く抑えられているシーン。前進されたらリトリートしている。ここでは右サイドでEn-NesyriがTrippierをしっかりマークできている。パスは通っても簡単にチャンスメイクさすことはできないだろう。

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 一方、先制シーンは上の図にある通りTrippierがいつでもクロスをあげれる状態で待ち構えている。En-Nesyriをみると位置がかなり高くどうにもならない状況だ。この先制点はSuarezのレイオフに反応したLemarが美しいボールタッチを見せ、Trippierへのプレッシャーを減らすためにLlorenteがDFの間を走り、Correaのわずかな隙間を縫った素晴らしいシュートがあったから成り立ったものではあるが、その元栓をしっかり閉めていれば防げた失点だった。

ポゼッション:セビージャ(後半)

 後半は追いかけるセビージャが76%のボール支配率を誇り、多くがセビージャのポゼッションであった。後半に入ってロペテギがテコ入れしたのはセビージャの特徴でもあるサイド、特に右サイドの攻撃方法だ。前半は右サイドに人が集中したことでボールが回らない事態が発生してしまった。これを改善すべく、先ずは人の配置を変えた。Ocamposを左サイドに配置した。またFWが一人減ったことからアトレティコの守備システムも6-3-1から5-4-1に変更されている。

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 今までアトレティコのLWBとLCBの間にいたOcamposがいなくなったことで攻撃開始時にはハーフスペースには誰もいない状況を作っている。そしてサイドチェンジの後に右サイドでの攻撃が開始される。狙いは白い点線で描いたLWBとLCBの間を含むランコースをKundeが駆け抜けることだ。

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 ハーフスペースに元からいるのではなく、走りこまれることで相手の守りにくさは倍増する。状況の変化量が多いために状況把握に時間がかかるからだ。相手の守備組織を確実に崩したところで中へのパスが供給される。このことによりシュートを打つチャンスが与えられるわけだ。アトレティコは素早くボールホルダーに寄せる技術を有するためこの場面も満足にボールを蹴らせてもらえなかったが、シュートを打つ回数は増えていった。サイド攻撃に徹するにおいてこの選択は間違いではなかったと思う。Ocamposの配置には多少の疑問を抱いたが、最終盤にセビージャの主戦場である右サイドに戻したことからもロペテギを悩ませた問題であっただろう。また、後半においてはSusoは称賛されるべき選手ではなかろうか。ライン間で絶妙なポジショニングを取りMFを助け、ポゼッション時の攻撃をより潤滑にしていた。

まとめ

 不用意な守備によって無駄な失点を76分にしてしまったセビージャは最終版、クロスを手立てにゴールに襲い掛かったが結果的にポストを叩くまでに終わってしまった。やりようによっては0-0のスコアレスドローもあるいは勝利もあり得る試合だっただろう。ほんの少しの配置やたった一人のポジショニングでその試合は大きく左右される。戦力差を限りなく縮めることに成功したロペテギであったが、それ故にせっかくならばもっと細かに制度設計してほしかったなという欲が湧いてきてしまう。左サイドの守備、右サイドの攻撃、攻撃に関しては幅を広くとった攻撃。。。セビージャがもう一段階上のレベルで戦えるかどうかはロペテギの手腕に掛かっているのかもしれない。


感想

 いかがでしたか?今は個人的に忙しい日々が続いていてまとまった時間が中々取れない状況でしたが何とか解剖できたかなと思っています。

 それにしてもアトレティコは強い!!シメオネのサッカーも終わりが近づいてきたんじゃないか、と言われていた今季、ここまでの強さを発揮するとは思っていませんでした。この試合でもセビージャが見せたほんの少しのスキを見逃さずしっかり2点をゲットしました。

 この後のラリーガはますます楽しくなりそうです。今季はどのリーグも非常に面白い展開が続いていますし、CLもビッグクラブばかりが決勝トーナメントに名を連ねていて白熱したシーズンを期待したいところです。

 もしこの分析記事に何かありましたらコメント欄でお知らせしてくれると嬉しいです!!

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