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夫婦関係悪化の原因は発達障害?

「うちの夫は発達障害かもしれません」

夫婦関係の相談に乗っていると、そういったお話を聞くことが何度もありました。直接は言わなくても(もしかしたら発達障害なのでは?)と感じたことも。

関係性が悪化した夫婦をひもとくと、そこには発達障害の課題があった。

そう思うことが増えてきました。

先日、モラハラDV加害者の当事者会GADHA代表の中川瑛さんにインタビューさせていただいたんですね。

中川さんは加害者の変容をサポートしていますが、自身もASDとADHDの診断を過去に受けていました。そのため、中川さんは妻に対してモラハラ的な言動を取ることが多かったそうです。

今回のニュースレターでは発達障害と夫婦関係の関連性について深掘りします。

発達障害について理解することは、夫婦関係の改善に大きく役立つんじゃないかなと僕は思っています。

そもそも発達障害とは?

発達障害は脳の機能に起因する生まれつきの特性であり、一般的には多動傾向のある ADHD や、共感能力のとぼしい ASD などがよく知られていますね。

以前、夫婦関係学ラジオにご出演いただいたターナーさんもASDであり、妻との関係に悩まれていました。

アメリカ精神医学会が発行する精神疾患の診断と統計のマニュアル、DSM-5では発達障害を神経発達障害(幼少期から児童期に始まる脳の発達に関する障害)と位置付けています。

Chat-GPTに発達障害の種類をまとめてもらいました。

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①自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)

  • 特徴: 社会的コミュニケーションの困難さ、限定された興味や反復的な行動パターン。

  • : 他人とのアイコンタクトが苦手、特定のルーチンへのこだわり。

  • 診断基準: DSM-5ではASDと診断されるためには、幼少期から症状が現れ、日常生活に支障をきたすことが必要。

②注意欠如・多動症(Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder: ADHD)

  • 特徴: 注意を持続させることの困難、多動性、衝動性。

  • : 授業中に座っていられない、忘れ物が多い、順序立てた行動が苦手。

  • 診断基準: 持続的な症状が6か月以上見られ、複数の環境(学校、家庭)で影響を及ぼす。

③学習障害(Specific Learning Disorder: SLD)

  • 特徴: 読む、書く、計算するなど特定の学習領域での著しい困難。

  • : 読み書きの速度が極端に遅い、数学的概念が理解できない。

  • 診断基準: 学年相応の学業成績を達成できず、支援を必要とする場合。

④発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder: DCD)

  • 特徴: 運動能力が年齢相応ではなく、不器用な動きや運動タスクの習得が困難。

  • : ボタンを留めるのに時間がかかる、スポーツが苦手。

⑤言語発達障害(Language Development Disorder)

  • 特徴: 話す、理解する能力における発達の遅れや困難。

  • : 単語を覚える速度が遅い、文法的な誤りが多い。

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大人になってから発覚し、夫婦関係に影響を与えるものとして考えられるのは①のASDです。

社会的コミュニケーションの困難さという課題から夫婦間の情緒的な会話が苦手な傾向にあるからです。よく言われる人の気持ちがわからないというやつですね。

こちらはアメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータ。ASDの割合は増加しているように見えますね。

一般社団法人 日本自閉症協会ホームページより

実際には増加ではなくASDという症状が一般化し、症状を見つけやすくなったというのが正しいようです。

あと、中川さんのお話では発達障害の薬は利益率が高いため、製薬会社が研究者に発達障害が増えているという論文を書かせまくっているとか……。

信州大学の調査では、日本の自閉スペクトラム症の累積発生率は 5 歳で 2.75%。

https://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/chair/i-seishin/jamaopen2021pressrelease.pdf

約50人に1人ということなので、小学校で言えば1クラスから2クラスに1人はいるという感じですね。

ただグレーゾーンを入れると3割の人間が発達障害なんじゃないかとも言われているので、はっきりと出た数字は分からないところです。

診断サイトもあるので気になる方はチェックされてみてください。ちなみにぼくは15点でした。

なぜ発達障害者(ASD)は夫婦関係はこじらせるのか?

社会的コミュニケーションが苦手といわれる ASD 特性を持つ人は夫婦関係をこじらせやすい。この現象は容易に想像がつきます。

自分のルールにこだわりが強いので、他者との共同生活である結婚生活においては大きな課題を抱えることになりますよね。共感することも難しいので妻の感情に気がつきにくいという大きな課題も生まれます。

女性が抱える夫への不満として「察してくれない」というものがよく出ますよね。まさにこの察するということは共感そのものです。ASD 特性を持つ人間にとっては不可能なアクションなわけです。

お茶の水女子大学、順天堂大学、白百合女子大学の研究によると、ASD特性が高い夫婦では、配偶者からの承認があまりないため、結婚満足度が低下し、抑うつリスクが高まる可能性があるとのこと。

また、特に夫のASD特性が高いと、妻は夫婦関係に葛藤を感じやすく、夫自身の結婚生活への満足度も低いといわれています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_93.20052/_pdf?utm_source=chatgpt.com

GADHA代表の中川さんは自身のモラハラを振り返り、「妻と道を歩いている時に自分が先に道を渡り、妻が渡らなかったことに怒った」とおっしゃっていました。

「一緒に歩けば話しやすいのに、なぜ自分と一緒に歩かないのか?おかしい」と。

ターナーさんも妻から「会話(なんてことのないただのおしゃべり)がしたい」と言われた時に、「今、我々は会話(人と人が言葉を交わす行為)をしているじゃないか。これが会話でないならこの行為は一体なんなんだ?」と言い、妻を困らせたそうです。

つまり、他者の行動の意図を読み取れなかったり、定義があいまいな表現に含まれる話者の意図をすくい取ることが難しいのです。

パートナーは自分とは異なる人間であるため、違う感情を抱くわけですよね。だから、お互いの言動に含まれる情緒的な意図を読み取ったり、もしくは自分も表現することで、感情面で理解し合えるようになります。

そのプロセスがASDの場合はスポッと抜けてしまっているんです。

では、どうすればいいのか?

中川さんは三つのプロセスがあると言いました。

発達障害者が夫婦関係を改善するための3つのステップ

一つ目は自分の傷つきの体験に目を向けるということ。そもそも、パートナーから傷ついたと言われても「そんなことない。そう感じるのはおかしい」などと、加害者は言っちゃうんですね。

なぜそんなことを言うのかというと、感情というものを大切に扱っていないからなんです。感情というものを見ようとさえしない。そんなものが存在するとは夢にも思っていない。

他者の感情に無関心な理由は、自分自身の感情にも無関心だからです。だからまずは、自分自身の感情にフォーカスを当てる。

次は情動調律と呼ばれるフェーズ。これは、悲しみや怒りという感情はいい悪いで評価するものではなく、「ただそこにある」と認識すること。

すると、自分がパートナーや子どもにそれをやっていなかったことを知れるわけです。そこで初めて自分の行動に気がつけるようになる。

「普通これぐらいできる」とか「これはやんなきゃダメだ」などと、相手の感情を無視する行動を取っていたことに。

すると、それが自分が変わろうとする動機になるわけです。

三つ目は共同解釈。何かに対して同じ解釈を持つようになるということですね。番組の中で中川さんは「いい父親」を例に出されていました。

いい父親というのは人によって解釈が異なりますよね。自分と妻では「いい父親」という概念に対して違うイメージを持っているかもしれない。

その概念に対してどういった解釈を持つのか、それを妻と一緒に作っていくことが大事だと。それが「共同」の「解釈」であると。

まとめると、まずは自分の傷つきの感情に気がつく。次に感情はただそこにあるという情動調律、最後に一緒に解釈を作っていく共同解釈。

このステップはASDを持つ中川さんだからこそ作れたものじゃないかなと思うんです。

情緒的な感覚が有利な人ならば、ここまで論理的に説明する必要はないわけですよね。だけど、情緒的な感覚が元々わからないという人には論理的に物事を整理しないと理解ができないわけです。

だからこそ、 ASD 特性が高かった中川さんはここまで分かりやすくブレイクダウンできたんじゃないかなと。

情緒的アクションとは習得できる技術

情緒的な声かけや行動、そしてケアというものは人間が元々持っている本能的なものだと思われがちですよね。僕もそう思っていました。

だけど、実はそれって後からいくらでも取得できる技術なのかもしれないなって今では思うんです。

なぜなら、加害も感情もケアも論理的に説明が可能な現象だからです。

番組の中でも出てきましたが、本質的にその人が変わったかどうかは誰の目にも評価ができない。言動からしか人は人を評価できないから。

だから、モラハラ加害者の言動が変わっても、本質的にその人が変わったかどうかは判断できない。

だけど、言動が変わることによってパートナーや子供たちが幸せを感じられるようになったのであれば、それは変わったと言えるのかもしれない。

夫婦の葛藤の背景には発達障害の課題があることもある。だけど、それは解決不可能な難題ではない。そう思っています。

モラハラする人に「変わる動機」を与えるにはどうすればいいか?

モラハラ加害者が変われるとしても、どうやって変わりたいと思ってもらえるかは別の問題ですよね。

「今回のポッドキャストはすごく参考になったけど、どうやってうちの夫にこれを聞かせればいいんだろう……」といった話を聞いたりします。

確かにこれはすごく重要な問題だと思います。変わる必要がないと思ってる人間に動機を与えるのはとても難しいですからね。

とはいえ、そこが変化の突破口になるわけなので、何らかの方法は必要になると思います。ということで、ニュースレター本編ではどうやってモラハラする人に「変わりたい」と思ってもらえるようになるか、その具体的な手法について書いてみたいと思います。

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今日のレターは20時頃に配信予定です。


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