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みんな質問が足りてない。

(そこまで聞かなくてもいいでしょ……)

仕事の打ち合わせのとき、ぼく、やたら質問するんです。

その人の言葉の意図が知りたくてどんどん質問するんですが、同席している人からはしつこいと思われているようなんですね。

そこまで聞く?と言う彼らの心の声が顔に出ることもあれば、実際にそう言われることもあります。

質問を繰り返して話をどんどん掘っていくと、その人の本音が見えてくるんです。

実はこれが嫌だった。実はこうしたかった。

本音があるんだけど、それをそのまま言えなくて分厚いオブラートに包み込んでるんです。

本音の上から不透明な膜を何重にも重ねている。

それは、ビジネスとして相手に失礼がないようにであったり、硬い言葉を選ぶことで賢く見られるためだったりする。

それが効果を発揮するときもあるんだけど、ぼくはいつもこう思う。

(それで、本当はどう思ってるの?)

言葉の表面にあるものだけを手に取り、それでわかった気になってしまうことが多いけれど、仕事でも夫婦関係でもそれは危険なことだと思うんです。

「離婚するぞ」と妻を脅していた男性が、実は妻から捨てられることを恐れていた。

彼の本音は「妻が嫌い」ではなく、「妻から愛されたい」だった。

そんな話を何度か聞きました。

なぜ、人は言葉の表面だけをとらえるのか?

なぜ、人は表面的な言葉を口走ってしまうのか?

ぼくは、多くの人には「質問」が足りていないのだと思う。

相手への質問と、自分自身への質問が。

呉服の販売員をしていた頃、ぼくら販売員は質問ばかりしていました。

質問を繰り返すなかでお客さまの本音が見えてくるからです。

実は別の着物が気に入っていたんだけど、自分から言えなかった。
着物を買っても着る機会がなくて困っている。
値段が自分には高くて困っている。
販売員の話がつまらなくて嫌がっている。

「販売員の話がつまらなくて嫌がっている」は、売り手にとってかなりの致命傷ですが、意外に本人は気づいていません。

売上を立てたい!という欲があるので、目の前のお客さまの感情が読めなくなるんです。

そんな時は、横からヘルプに入り、お客さまの横で「大丈夫ですか?この人ちょっとおしゃべりなんです。疲れちゃいますよね」などと伝えると、本音を言ってくれたりします。

他に不安に感じていることがないかを確認するため、質問を繰り返していきます。

「ちょっと高いですかね」「他の柄の方がいいですかね」「着る機会がないなあって、不安になっちゃいます?」

お客さまが購買心理のどの段階でつまづいているか?

顔色と声色をもとに感情を推測し、質問内容や伝え方を微調整しながら繰り出すことで、それを把握していくんです。

はっきり言って手間がかかるけど、(あ!そこだったのか!)と人の本音に辿り着けた時って、すごい心地いいんです。

それに、本音って本人でも気がついていないことが多いから、相手から信用されやすくなります。

「この人は私のことをわかってくれている」という信頼につながるんです。

自分でも気がつけない心の深淵に優しく触れてくれる人って、そうそういないんです。

だから、呉服屋のお客さまは用もないのにお店に遊びに来るんです。

ですが、呉服屋から商社に転職したとき、人の感情を深堀りしようとすると嫌がられてばかりでした。

「そんな当たり前のことを聞くな。バカだと思われるぞ」

上司から何度もそう言われました。

周りの人からは(この人、ちょっと頭悪いのかな?)と思われていたかもしれません。

一度話を聞いて理解できた方がスマートに見えますから。

ですが、商社に転職してびっくりしたことは、ほとんどの男性が「話を分かったつもりでいるけど、全然理解してない」ってことでした。

間違った理解をしていたり、自分に都合のいい解釈をしていたり、分かったふりをしていたり。

バカだと思われないために質問を控えているのですが、その結果、何も理解していない本物のバカになっているんです。

それもこれも質問が足りていないからです。

なぜ、そう思うのか?

なぜ、その言葉を使うのか?

なぜ、言いにくそうに話すのか?

言葉と表情に隠された本音を手繰り寄せる努力をすれば本当に知りたかったことがわかるのに、多くの人はわかった気になってそれをしません。

それからもう一つ。

自分自身に対しても「質問」が必要なんです。

不用意なことを口走ってしまい、相手に誤解を与えることって多いですよね。

本当は離婚したくないのに、言うことを聞かない妻を脅すつもりで「離婚するぞ」と言ってしまい、本気で妻が離婚を考え始め困ってしまう。

もしくは、仕事の打ち合わせ中にイラッとしてしまい、余計なひと言を言ってしまう。

どれも相手からの信頼を失う行為ですよね。

なぜ、そんなことをしてしまうんでしょう?

それは、「自分への質問」が足りていないからだと思うのです。

なぜ、自分の心は乱れたのか?

相手の言葉のどこに反応したのか?

その言葉はなぜ自分の心をざわつかせたのか?

自分に質問を繰り返し、心の奥底に降りていくんです。

相手への質問がの人の本音を引き出すように、自分への質問も自分の本音を引き出してくれます。

ただ、時間はかかります。

自分の本心に気がつくのって、認めたくない劣等感や羞恥心と向き合うことになるので、なかなか素直になれないんです。

ぼくも心を静かに揺さぶる出来事が起こった時は、その直接的な原因にたどり着くまで半日かかったりします。

でも、自分に対して素直になり、自分の心にインタビューをするようにマイクを向け続ければ、いつか本音を言ってくれるはずです。

それはきっと相手を傷つけるネガティブなものというより、自分の心が傷ついているという柔らかで繊細なものなんじゃないのかなって思うんです。

相手と自分への「質問」を習慣にすると、人の気持ちに敏感になりやすくなり、ちょっとだけ毎日が楽になるような気がしています。

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