
学んでも行動しないのはなぜか?
「ずっと前から飯室さんのブログも日経の連載も読ませていただいています、とても腹落ちして大好きです」と言われて喜ぶよりも当惑した。
いや、ありがたいことだと感謝はしている。読んでいただけてこそ執筆する甲斐はある。でも読んでもらうために書いているのではない。読んで、気づいてもらって、何らかの行動を起こして結果につなげて欲しいから、あえてきつめの言葉を選び、面と向かっては言いにくい言葉を並べているのだ。何も世間に文句を言ったり愚痴を並べているわけではない、マーケターの行動に変化を起こしたい、そして日本企業を復活させたい、それくらいの野望は持っている、と言うか、それだけなのだ。だから書いている。
ずっと気になっていたのは、私のブログでの投稿や日経の連載記事、Facebookライブでの発信が、マーケターの皆さんにそれほど影響を与えていないのではないか?ということだった。
8月から500人以上が登録した「マーケティングをDNAに組み込む」コミュニティでのFacebookライブでは毎朝8時から15分の精力的な発信を12月まで続けたのだ。使ったスライド枚数は2000枚近くにもなり、録画された見逃し配信ビデオも50〜60本を超えている。が、私の思考方法や失敗経験をベースにした半学半教の精神を、日々の仕事で活用してくれている人は、ほんのわずか、おそらく100名にも満たないのかも知れない。
2017年に独立してから契約した12社の企業でも同様に感じている。おかげさまでわずか1年で数千人に向けて発信できたのだが、会社の予算を使った強制的な社員研修の一つとして受講しただけで(あるいは受講させられただけで)、今となっては実際には学んだことを駆使していないのではないかと感じる部分が多かった。
今年から始めた有料のコミュニティに参加してくださっている50名の皆さんは、まさに日々の仕事で活かそうと奮闘中なのが日々見える(測れる)ので、この人たちだけが私にとっての心のよりどころだ、と言っても良いくらい「学んだことを実行できない・しないマーケター」が圧倒的に多いなと感じる。
それは、ちまたにあふれるバズワードにまみれたハウツー本や、ハウツー無料セミナーも同じだ。あれだけ、カスタマーサクセスだの、サブスクリプションだの、アカウントベースドマーケティングだの、ティール組織だの、マーケティング4.0だの、デジタルマーケティングだの、ビジネスモデルジェネレーションだの、ジョブ理論だの、CSVだの、ファンマーケティングだの、デザイン思考だの、ペルソナだの、なんだかんだと話題にすれど、それはまさに「話題」にするために本を買って読んでいるだけで、教養は高まって、意識も高まって、知ったかぶりは得意になって「飯室さん、これからはカスタマーサクセスですよ」とかなんとか言っているが、本当に実行できているマーケターには、ほとんどお目にかかったことがないのは、どうしてなのだ。私が出会えていないだけで、実は世の中には、成功したマーケターであふれているのだろうか? 私の付き合いが狭くて、視野狭窄で、知らないだけの井の中の蛙なのだろうか?だとしたら、こんな文章を書いていることをお詫びしなくちゃならない。
いや、それでも言わせて欲しい。書いたものを読むだけなら、通勤電車の中や、待ち時間でスマホを開けば誰でも読める。飯室さんの記事、知っていますよ、読んでいますよ、楽しいですね、痛快ですね、大好きですよと言われるよりも(これはこれで言ってもらえると励みになるからうれしいんだけど)、あそこに書いてあったことを試してみました、やってみて失敗したけど多くを学んで格闘中です、と言われた方が何倍も狂喜乱舞のうれしさなのだが、なかなかいない。
だから本当はこう聞きたいけど、つい飲み込んでしまうのは「それで、読んでみて、あなたは何か行動してみましたか?」というツッコミだ。顔を見れば、なんとなく答えがわかるので、こちらも勇気がなくて聞き出せない。別に喧嘩を売るつもりはないのだが、聞きたいのは、つまりそういうことだ。
だから、身銭を切ってでも、変わりたい・行動したいと願う人たちだけとグループを作っているけれど、この人たちは、私なんかがお構いしなくとも、変われる素養を持った人たちなのだと思う、きっと。
1) 気づきは必ずノートにとろうと言えば、しっかり行動に移してノートをとる
2) 1日後、1週間後、1ヶ月後に見直して欲しい、と言えば休日を返上してでも見返している(でも、休日は休んでね)
3) アウトプットしてね、といえばしっかり行動に移す
たったこれだけで、「行動の習慣化」すなわちDNAに組み込めるのだ。
しかし、このお金を払ってでも変わりたい人たちは、ともかく、ちまたのマーケターは通常業務に戻れば、本を読んだことも、無料セミナーで学んだことも、ブログに書いてあったことも忘れて、Thing To Doを端から処理するジョブ・マシーンへと変貌を遂げて生産性と効率の権化となって残業も厭わずに、我が身をすり減らして、成長とは最も遠い働き方で、命の時間を浪費する日々だ。
だからせっかく学んでも何ら問題も解決せず、毎日は変わらず、ますます不安と焦りは募って、だからまた本を買っては読み漁り(もしくは読まずに積んでおくだけか)、無料セミナーに参加しては「安心」するだけで、何も変わらぬ日々をこれからも続けていくのだ、死ぬまで。
そもそも本を読むのも無料セミナーに参加するのも、何か目的があったはずだが、その目的を忘れて、本を読むことが目的化し、無料セミナーを受講することが目的化している、そうあれだ、手段が目的化しているのだ。
そうやって次から次へと新しいネタを仕入れて、時代に遅れないようにするのが目的となってしまい、本来の「活用して」自分を変えよう、今の働き方を変えよう、自分の人生をより良くしようという想いは忘れてしまうのだ。もはやインプットが多すぎて、人間の脳では処理しきれていないのだ。脳はLIFO(後入れ先出し)でどんどん忘れていくし、脳はいくら繰り返しインプットするよりも、アウトプットすることのほうを大切な情報だと認識するので、学び放題に学んでインプットを繰り返してもちゃんと忘れるようにできている。
そして、やらない理由をできない理由に差し替えて、自分に言い訳して自己欺瞞に落ち着く。特にマーケターは実行できないことを正当化することに賭けては、極めて熟練しているから、実行できなかったのは、それが自分の仕事や職場や業界や働き方や専門分野にはフィットしていなかった、もっと良いハウツーを探そうと、もっとピッタリとあったものを見つけよう、と次から次へと新しいことを学ぶだけで、何も結果を残せない。だから余計に焦燥感が募り、何かを学んでいないではいられなくなって、読みかけの本があふれて、セミナー三昧の日々に、残業が重なって、寝不足となって、脳のパフォーマンスは落ちて、ますます仕事の効率も品質も低下して、上司の覚えも悪くなり、評価もされなくなって、給料も上がらず、モチベーションが維持できない、時間がない、仕事が多すぎる、人手が足りない、最悪の職場環境だ!と叫べど誰も変えてはくれないのだ、自分を変えられるのは自分だけだし、そうやって命の時間を削って、何年経っても成長せず、なんとなく仕事に慣れ、スキルが上がって、忙しいから仕事をした気分になっては、自分にご褒美とか戯言を吐いては自分を慰める日々なのだ。
せっかく手に入れた知識やハウツーや知恵を仕事に活かせないのは、「自分が仕事に活かそうと変わろうとしないから」であって、ハウツー本や無料セミナーのせいじゃない。
厳に「マーケティングをDNAに組み込む攻略ガイド」で学ぶ50名は、日々コツコツと反復して着実に行動につなげている。特別に目新しいこともシェアしていないし、きっとどこかのハウツー本に必ず書いてある・あるいはハウツーセミナーでずっと昔から言われ続けている世界中で1億人くらいが知っていそうな当たり前のことをシェアしているだけだ。あっと驚くハウツーはなく、ただ毎朝15分間のライブに参加して、繰り返して、気づいて、行動して、結果を出して、学び、を繰り返すだけで「習慣化」しようとしているだけなのだ。
50名とのコースは6ヶ月ほど続ける予定(未定)なのだが、スタートして2週間で変化も見え、行動も見え、成果も見える化できて、何が起きているかが測れる状況になってきた。また、次は何が起きているのか、シェアできればと思う。
測れれば改善できる、測れなければ改善できない。
自分自身を測れないとしたら、体重計無しでダイエットするのと同じだから、まず変革も成長も難しいし、ハウツー本で学んだことも、ハウツーセミナーで聞いたことも、どういじくり廻そうとも、どうにもならない。だから徹底して自分を測るのだ、先ずはそこからだ。
言いたいことを書いたが、まさに私もそういうダメダメなマーケターだったので、自分のこととして書き連ねただけで、何もこれを読んでいる皆さんがそうだと言っているわけではない、私自身の「学んでも行動しないのはなぜか?」と言う体験から、ダメな自分を書いてみただけなのだ。
じゃ、どうすればいいのだろう・・・まだまだ つづく
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