DX Column 第二回:”DX”のカオス化から抜け出すには?【後編】~プロセスに着目して気運を高める!~
前編では、カオス化するDX施策、そしてその統合の難しさについて例を挙げて紹介してきました。難易度の高いカオス化の解消には、DXを強力に推進する機運を高める事が不可欠です。
気運を醸成する“プロセス”の重要性
気運を醸成するには、ありたい姿やロードマップの“アウトプット”ではなく、“プロセス”に着目すべきです。検討プロセスを通じて、“問題認識”や“目標”を共有化することで気運が醸成されていきます。
例えば、経産省から提示されている指標等を参考にしながらDX成熟度アセスメントを実施したものの、気運の醸成にはつながらないケースが多く見受けられます。「同業他社よりも低い結果を共有することで危機感をつくり出そう」としたものの、「共有された側は自分事とは思えず冷めた反応を示す」ということが良くあります。
これは、「関係者が集まって“自社の課題は何か”、“目指す方向性は何か”を腹落ちするまで喧々諤々の議論を行う」といった、“危機感を醸成するプロセス”、“目指す方向に向かうベクトルをつくるプロセス“をないがしろにしていることが原因です。
ここからは、「全社・全部門を巻き込んで短サイクルの試行錯誤を行いながら、全体として変革に統合していく」ための、戦略立案・計画フェーズのアプローチとその中における3つのポイントを紹介していきます。
【現状分析】
全社でデジタル施策を統合しトランスフォーメーションの姿を明確にするために、現状のデジタルに関する課題だけでなく、世の中の状況を正確に把握し、自社の現在地を明らかにします。
現状の取組み課題抽出
経営課題の整理を行うだけでなく、個々のデジタル施策の取組み状況を把握し、その推進上の課題点の洗い出しを行います。洗い出された課題点に対して解決に向けた論点を整理します。外部情報収集
DXに関する先進企業と呼ばれる他社のトランスフォーメーションに至った事例や競合他社の取組み等を調査し、成果に至ったポイントや難所等を踏まえた成功要因を整理します。アセスメント
デジタル施策を全社的に推進し、トランスフォーメーション至る成果をあげるために、現時点で自社がどのような立ち位置にいるのかを把握します。組織的なDX成熟度を把握する事で、強化すべきポイントや維持すべきポイントを明らかにし、組織成長計画のインプットとします。
※POINT!:バラバラの施策をマッピングし、課題を浮き彫りにする
関係者で議論する上で、まずは「自社の現状をしっかり整理して見える化する」ことが重要です。各部門がバラバラに実施している施策をマッピングすることで、自ずと課題が見えてきます。
現状を整理した資料を元に関係者が議論することで、“課題”や“目指す姿”についての議論が活性化します。そして議論を重ねることで、危機感の醸成、DXに向かう気運が醸成されていきます。
【DX戦略コンセプト策定】
現状分析の結果から、デジタルを活用した目指すべき自社のTo-Be像を整理し、戦略としてのコンセプトを明確にします。このコンセプトは、自社が実現すべき全体像となり、社内合意形成を必要とします。
To-Be具体化
【現状整理】の結果を踏まえて、DX施策によって将来的に自社がどのような姿となっているべきか、なっていたいかという観点で、目指すべき姿を整理します。DX戦略コンセプト案作成
DXによってTo-Beを実現する事で、自社だけでなく、外部のステークホルダーや社会を含めて実現すべき全体像をコンセプチュアルに表現し、整理します。コンセプト・ワークショップ
整理したコンセプトを、経営層や関係部門だけでなく社内有識者間で、自社の理念や戦略に合致しているか。経営計画と合致しているか等を討議し、その結果を踏まえてコンセプトをブラッシュアップしたうえで、合意形成を図ります。
※ POINT!:コンセプト化した目指す姿を元に関係者で合意形成する
「To-Be具体化」で現状の課題や目指す姿の議論をしっかり行った上で、次にポイントとなるのは、目指す姿のコンセプト化です。できるだけシンプルな言葉とイメージで表現し、それを関係部門、有識者、経営層と討議しブラッシュアップしていきます。
目指す姿には、並行して実施される様々なDX施策を統合するための求心力を持たせなければなりません。そのために、「頭の中にすっと入るコンセプト化をすること」と、「できるだけ多くの関係者が参加して議論し、“納得感”、“使命感”、“ワクワク感”を醸成すること」が重要なポイントとなります。
【ロードマップ策定】
当然ながら、現状からありたい姿をコンセプト化するだけでは、そのありたい姿を実現する事は困難です。コンセプト実現のために必要な対応策を検討し、それらの関係性を踏まえて、いつまでに実現するのかだけでなく、実現するために必要な機能やリソースを想定し、組織化する事を検討します。
施策抽出
コンセプトを実現するために障壁となる課題を特定し、それらの関係性を整理すると共に、個々の課題に対する対応策を検討します。また、検討した対応策について、自社での実行可能性も検討します。ロードマップ案作成
課題対応策の前後関係を考慮しつつ、それぞれをプロジェクト化し、個々のプロジェクトを実行した結果、コンセプトのどこが実現できるのか、もしくはどこに影響を与えるか、どのような影響なのかを整理し、マイルストーン化した上で、全体のスケジュールを作成します。推進体制検討
課題抽出から得られた実行可能な対応策及びそれらの関係性を踏まえた推進スケジュールを実行するために、必要となる組織機能や必要となるリソースも明確にし、推進組織の立ち上げを検討します。
※ POINT!:DX推進組織を設計し、立ち上げる
ありたい姿に向かうロードマップ、スケジュールの作成は当然必要です。しかし、DXは試行錯誤が伴うため「思った通りに進むことは無い」と考える方が現実的です。「試行した結果、実施予定の施策の取り止め」もあるでしょうし、「新たな施策を最優先で実施するよう変更」するケースもあります。
そこで3つ目のポイントは、各部門で並行実施する様々な施策を取捨選択しながら、目指す姿に向かうための推進組織に求められる機能を定義し、立ち上げることです。推進組織は必ずしも1つである必要はありません。特に新たなサービスを立ち上げるような外部向けのDXテーマと、自社内部向けのDXテーマでは、求められる機能や関係する部署が異なるケースが多いため、それぞれに必要な管理機能を定義した上で、実効性のある組織を立ち上げる必要があります。
全社DX戦略立案支援サービス
今回は、「DXのカオス化から抜け出すには」というテーマで、戦略立案・計画フェーズの進め方のポイントを紹介しました。これから本格的に戦略立案・計画を立てようとしている企業はもちろんのこと、一旦実行フェーズに入ったもののカオス化から抜け出せずリスタートしようとしている企業も、参考にして頂ければと思います。
弊社では、DXアクセラレーションサービスのひとつとして、戦略立案・計画フェーズをご支援する「全社DX戦略立案支援」サービスを提供しています。
次回は、今回ご紹介した「全社DX戦略立案支援」以外の、DXアクセラレーションサービスの概要やアプローチについて、ご紹介していきたいと思います。
アットストリームコンサルティング株式会社
DXアクセラレーションサービス
投稿者:
アットストリームコンサルティング株式会社 シニアマネジャー 福本 修
前職のITコンサル会社にて、基幹システム刷新、需要予測システム導入、WMS導入など様々なプロジェクトを経験するとともに、WEB開発技術、データベース関連技術を習得し、2019年にアットストリームコンサルティングに参画。基幹システム再構築のPMO支援やDX推進支援を担当。DXアクセラレーションサービスリーダー
投稿者:
アットストリームコンサルティング株式会社 ディレクター 北山 雄介
(株)長谷工アーベスト、不動産系SI会社、PCWORKS(現㈱ベイカレン
ト・コンサルティング)、日立コンサルティングにて様々なプロジェクトの企画・実行を経験し、アットストリームへ参画。DXアクセラレーションサービス責任者。