顧客接点強化:"顧客とは・接点とは"から目的を捉える (Vol.1)
CRM (Customer Relationship Management) という言葉はかなり定着してきたかと思いますが、これを皆さんはどのように認識・定義されているでしょうか。日本語では「顧客関係管理」となりますが、昨今ではITツールをイメージして、顧客マスタを登録し、取引履歴や案件、日報などが紐づくもの、あるいはMA (Marketing Automation) ツールも含めて捉えているかもしれません。
従来なかった言葉を使うことで、直接的に具体のサービスや商品を呼称することができ利便性は高まりますが、もう少し具体的に捉え直し、なすべきことや目的を再認識するために、当投稿では「顧客接点強化」と一貫して表記してみたいと思います。
顧客接点とは
「顧客」とはなにか?
皆さんは自分なりの定義があり、別の言葉で言い換えて説明することは可能でしょうか。例えば、文字には思想が表れることから、それぞれの漢字を見てみると、「顧みる」という訓読みがあり、「回顧」などでは思いを巡らす行為にもなるでしょう。一方、「論客」などで考えると何らかの人であり、「客観」というと主観以外、すなわち自身以外とも言えるかもしれません。総合すると、「自身以外の思いを巡らす対象の人」とまで言えるでしょう。
そのような顧客との「接点」とはなにか?
CRMを思い返して、顧客との関係であると捉え直すと、つながり・関わりといったイメージができるかと思いますが、ではどのようになったら、何をしたらつながりが構築されるのでしょうか。信頼の構築でしょうか、ではその信頼とはなにか。
それは、情報のやり取りの蓄積、ではないでしょうか。
相互に相手の言動やその意思決定に貢献する情報、それが顧客に蓄積されていけば信頼とブランドにつながり、事業者に蓄積されていけばさらなる商品・サービスの改善や各種施策の検討につながります。(当投稿では情報というものを、測定した結果や事実であるデータに意味付け・解釈を加えたものと定義しますが、その点では情報のみならずデータも対象となることもあります)
では、言動や意思決定に貢献できる情報とはなにか。
それは分かりません。所属コミュニティによっても、各種属性や嗜好単位のグループによっても、個人によっても大きく異なります。したがって顧客を定義し、知る努力・伝える努力を重ねるべきなのです。
加えて、その意味では対象とすべきは、顧客と日常的につながっている商流上の取引先など他社かもしれませんし、その顧客が日常的に利用している商品・サービスにも思いを巡らす必要があるかもしれません。あるいは、顧客の所有物で自身の一部であるとすら捉えているケース、例えば製造現場の設備・道具や自動車など、については個別具体の現状や今後の見込みについても頭に入れておくべきでしょう。(この意味では、遠からず生成AI自体もコミュニケーション媒体・基盤となっていくことが想像されるが、この論は別の機会に譲る)
情報を知る・伝える情報の媒体は、ご存知の通りオンライン、オフラインで大きく切り分けられます。
ここで改めて留意するべきは、概念が二つに切り分けられているだけであろうと想像し、オンライン側の影響力を軽視しないことでしょうか。例えば、世界で生成・消費されている情報流通量について、以下を見ると人類は指数関数的に増加する情報に晒されていることは明白です。
加えて、その情報を生成・消費している主要な端末・媒体はスマートフォンであり、その中のアプリケーションです。こういう切り口では主に小売業やBtoC事業者が、SNSなどを活用しWebマーケティングを行っている印象が強いかもしれません。
しかし、BtoBの製造業などにおいても従業員個々人が取組みや技術的な潮流、取引先について調べる、あるいはその顧客企業においても担当者個人が情報収集する、といったケースではネット上で検索する行動は定着しており、SNSでの投稿内容やそのリンク先に辿り着いた経験も少なくないはずです。
これら膨大な情報の海の中、皆さんはその情報量の増加に伴って、情報の収集・活用や意思決定のあり方を変えているでしょうか、組織内での変化を促しているでしょうか。
意思決定するための情報源や情報量が変わっていることから、従来とは異なる形で、戦略的に価値ある情報を収集・生成・伝達していく必要があります。これは近視眼的な戦術・施策の積み重ねだけでは、効果や効率の面で極めて難易度が高くなってきていることを背景とし、下図の様に自社以外も含めた俯瞰した視点を持ちながら、さらに時間軸も伸ばした高い視座のもと、包括的に整理・検討をしていく必要があることを意味します。
顧客接点を強化するとは(次回へ)
それでは、これら広範な顧客接点の対象において、強化を施していくとはどういうことなのでしょうか。
量的・質的という両側面があり、多くの組織において運用や仕組み(それこそCRMなどのツール)の工夫を積み重ねることで改善・革新を図ってきました。これについては、次回の投稿で歴史的な文脈を理解しながら、ツールの位置づけとその活用の意義、難しさを捉え直していきたいと思います。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。皆さんの気づきにつながる内容があれば何よりです。
投稿者:
アットストリームコンサルティング株式会社 マネジャー 兵頭 卓
複数のコンサルティングファーム、DX/AIコンサルティングのベンチャーファームでのコンサルティングサービス事業部長、独立系ファームでの関西拠点責任者などを経て、アットストリームへ参画。顧客接点強化やAI活用などを中心としたコンサルティングサービスを提供。
問い合わせ先:scnote@atstream.co.jp