さかや

Brasil-Japão ブラジルの文化について書いています。しばらくヨルバ由来の信仰…

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Brasil-Japão ブラジルの文化について書いています。しばらくヨルバ由来の信仰「カンドンブレー」のことを書き綴ります。ブラジルに関するブログ

最近の記事

エシュー・メッセンジャーはどう富を得て、そして罰されたのか

感染症の流行によって中止となっていたカーニバルが時期をずらして開催されました。2022年のブラジル・リオのカーニバルの優勝チームはGrande Rio/グランヂ・ヒオ。彼らが今年選んだテーマはなんと、カンドンブレーの神様「エシュー」でした。エシューについては別の回で詳しくご紹介しています。(写真はカーニバルでエシューを演じるデメルソン@Radio Jornal UOLより) エシューは「口が食べるすべてを喰らう」というフレーズで、どんなものでも貪欲に食べてしまうことで有名で

    • 狩りの神様 オショーシ Oxóssi

      狩りの神様オショーシは森に生きています。またの名前を「オデー」といい、狩りをすることから人びとを飢えさせない、豊かさの神様とされています。オショーシを守護神に持つ人達は、好奇心旺盛で、単独行動派、エレガントです。忍耐強く、友好的で、無邪気。見た目は陽気で、いつも何か探しているように見えます。約束に現れる義務を感じていません。(思い当たる人が何人かいますね…笑)オショーシは狩った動物、子ヤギ、トウモロコシとココナツでできた料理を好み、はちみつに目がありません。「オケー、アロー」

      • 戦いの女神・稲妻と風を司るヤンサン

         ヤンサンはとても有名な神様です。サンバの女神クララ・ヌーネスの“A Deusa dos orixas(オリシャーたちの女神)”で歌われており「Eparrei !!(エパヘイ)」というヤンサンの呼びかけを聴いたことがある人は多いでしょう。マリア・ベターニアも「稲妻と風の女」というタイトルで歌っています。  ヤンサンは赤に身を包み、戦いに向かう女性神です。稲妻と風、嵐を司り、激しい稲妻から人間たちを守ります。ブラジルで海岸沿いの家にいた時、「今日はヤンサンの機嫌が悪いから、風

        • ドキュメンタリー「カポエイラ イルミナーダ」オンライン上映!

           8月3日はブラジルは「カポエィリスタの日」。この日を記念して、歴史的なカポエイラマスターの一人、メストレ・ビンバのドキュメンタリー映画「カポエイラ イルミナーダ」を日本語字幕でオンライン上映します。(イベントページはこちら)  様々な映画やPVの中でも観る機会の多くなったブラジルの格闘術「カポエイラ」。ビリンバウの音色に乗せて、「ジンガ」と呼ばれるステップを踏みながら蹴りを繰り出すさまは、さながらダンスのようで、とてもブラジル的です。 あらすじ  メストレ ビンバ(本

        エシュー・メッセンジャーはどう富を得て、そして罰されたのか

          オリシャーの母、水の神様イエマンジャーIemanjá

          日本は冬ですが、ブラジルは本格的な夏を迎えています。1月からはたくさんのお祭りからカーニバルへと向かうブラジルの象徴的な期間で、その中でもバイーア州の人々にとって、1月のボンフィン教会のお祭り(人間を創った神さまオシャラーの日)と、2月のイエマンジャーのお祭りは特別です。 ドリヴァル・カイミの「ドイス ヂ フェヴェレイロ(2月2日)」の曲でも歌われていますが、2月2日はサルヴァドールのヒオ・ヴェルメーリョ海岸にたくさんの人々が集い、豊漁を願い、海の底に住んでいる女神イエマン

          オリシャーの母、水の神様イエマンジャーIemanjá

          ふたごのこどもの神様・イベジ

          ヨルバ由来のアフロ・ブラジルの信仰「カンドンブレー」には様々な神様がいて、よく知られている神様は20神、それぞれにシンボルとなる数字や、曜日、色、食べ物などを持っています。ある時「日曜日の神様っているの?」と聞かれて、そういえば、と思いましたが、子どもの神さま「イベジ」は楽しいことの担当、日曜日の神さまです。 イラスト©︎クルプシ イベジはふたごです。「Ibeji」のIbi(イビ)は「誕生」を、eji(エジ)は「2」を意味します。ヨルバの子どもは、なんと11人に1組、ふた

          ふたごのこどもの神様・イベジ

          11月20日「黒人意識の日」と漫画アンゴラ・ジャンガ

          11月20日は毎年、何か書こうと思いながら、ブラック・ライヴス・マター運動の時も、ブラジルの「黒人意識の日」である11月20日も、何も書くことができませんでした。「黒人意識の日」前夜にポルトアレグリのスーパー・カルフールでガードマンに取り押さえられた黒人男性が殴打された末に死亡し、サンパウロのカルフールには市民のボイコットによって火が放たれました。副大統領は「ブラジルには人種差別は存在しない」とコメントしています。  11月20日はブラジルは「黒人意識の日 Dia de c

          11月20日「黒人意識の日」と漫画アンゴラ・ジャンガ

          雷と法の神様シャンゴーXangô

          台風の季節直中となりました。日本の台風被害は年々大きな傷跡を残すようになり、年を重ねるごと地球の自然環境変化は取り返しのつかないものになっていっているように感じられます。現在ブラジルではマト・グロッソ州パンタナル国立自然保護地区で大きく火事が拡がり、豊かな自然地区の1割が消失、(1割といっても青森県全部くらいの広さです)ジャガーを始めとする多くの保護動物と植物が焼け死んでいます。行き過ぎた開発拡大によって森林が焼き払われ、森林が消失すれば乾燥地帯が増え、ますます地球は高温化し

          雷と法の神様シャンゴーXangô

          疫病と治癒の神様 オムルー(オバルアエー)Omulu,Obaluaiê

           「ブラジル版アマビエ」こと、疫病と治癒の神様オムルーのお話から始まったこのnoteブログでは、アフリカのヨルバ由来のブラジルの信仰「カンドンブレー」の神様を7柱ご紹介してきました。20ほどのメインとなる神様にはまだまだたどり着けませんが、今日は8月16日が祝祭の日となっているオムルーを祝して、オムルーの別のお話をご紹介しようと思います。 イラスト©︎クルプシ ところで、この納豆の妖精のようなオムルーには他にも「オバルアエー」「シャパナン」「サパター」などの名前があります

          疫病と治癒の神様 オムルー(オバルアエー)Omulu,Obaluaiê

          虹と蛇の神様 オシュマレー Oxumaré

          ようやく長い長い梅雨が明けました。8月1日は「水の日」です。今日は虹の神さまで、蛇になった「オシュマレー」のことを書こうと思います。 この数年、日本は水害による被害が甚大ですが、地球温暖化に伴い、大雨や台風は今後まだ増えていくと予測されています。台風が起こり、河川の氾濫により地球が削られ、私たちの暮らしが壊されていくのを見るのは本当につらいものです。私は山と渓谷が好きなのですが、昨年の豪雨で多くの山が崩れ、すっかり姿を変えてしまいました。自然の姿に修復することは人間の力では

          虹と蛇の神様 オシュマレー Oxumaré

          美と愛の女神 オシュン Oxum

          いよいよこの神様のことを書く時がきてしまいました.... 満月の夜になると、白砂の湖「ラゴア ド アバエテー」に現れる美しい神様。オシュン・美神です。 黄金と愛の女神。イエマンジャーが海水の女神である一方、オシュンは湖などの淡水を司ります。オシュンを守護神に持つ人は、魅力的で、魅惑するのが巧み、取り入るのがうまいと言われます。 オシュンは孤独と貧しさが嫌いです。図々しく見栄っ張りで、美しいことを誇りに思っており、イラストにあるように扇の形をした鏡「アベベー」にいつも自分の姿

          美と愛の女神 オシュン Oxum

          ブラジルの神さまTシャツを限定で

          新型コロナウィルスが世界で感染拡大する中、日本では「アマビエ」という妖怪が話題になりました。ブラジルにもカンドンブレーという信仰があり、疫病と治癒を司る神様に「オムルー」がいます。ブラジル版アマビエですね。 ペストに感染して、あばたができてしまった肌を隠すために藁をかぶっています。(アマビエの髪の毛のようです)熱にうなされながらみずから勉強して病気を治癒したといわれ、手にもっている「シャシャラー」というほうきで疫病を追い払ってくれます。(オムルーのお話はこちら) ここに

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          戦いと技術の神様オグン Ogum

          ずっと書くことを迷っていたオグンのお話です。オグンは、イラストにあるように、武器を製り、その武器を手に戦いに出る神様です。 戦いと鉄の神、鍛造と技術の神で、道開きの力を持っています。 イラスト©︎クルプシ オグンを守護神にもつ人は不屈で、情熱的ですが根は冷徹です。たいへん働き者で、鋳型を取る手作業、技術的な活動が得意で、警察、兵士、メカニック、技術者などに多いと言われます。人生における発展を助け旅を容易にしてくれる神様です。 有名なブラジル料理「フェイジョアーダ」は彼の

          戦いと技術の神様オグン Ogum

          どうやってオリシャーたちはブラジルへやってきたのか(2)

          ここで語られていることの出来事の ずっとあとに 幾百万というアフリカのひとびとが、人狩りにあって 奴隷にさせられ、ブラジルへ連れてこられました。 ここ、わたしたちの国ブラジルでは、アフリカの人々は、白人の主人のために働き、植え、刈り、さとうきびを挽き、砂糖を精製して ブラジルは豊かになり、金を掘り、銀、ダイヤモンド、市場でお金になるものを作りました。 白人の主人の邸宅を手入れし、その子供らの面倒を見て、必要な奉仕はなんでもしました。奴隷は何を得ることもなく、身体的な酷い処罰に

          どうやってオリシャーたちはブラジルへやってきたのか(2)

          全てを食べてしまった神さま エシュー

           本当ならば、一番最初の最初にご紹介せねばならなかった神さま「エシュー」についてのお話です。エシューは動きを司るため、彼がいなければ何事も始まりません。巧みな神様で、とても働きもので、いたずらもします。何か書こうにもこちらも十分な注意が必要ですし、一仕事です。 エシューはいつも自分が「一番最初に」大切に扱われることを私たちに望んでいます。 イラスト ©︎クルプシ エシューといえば、カポエィリスタのみなさんは「ビゾウロ」というカポエイラアクション映画を見たことがあるのではな

          全てを食べてしまった神さま エシュー

          世界を作ったオシャラーとオドゥドゥアー

          今回は、カンドンブレーの言い伝えでの、私たちが生きているこの世界のはじまりについてのお話です。  オリシャーたちの世界にはヒエラルキーがあり、最上神をオロルンといいます。またの名をオロドゥマレともいい、この方はすごすぎて、人の目には見えないといわれています。オロルンに従属する神々として、私たちも知っている個性豊かなオリシャーたちがおり、主に20種類の神様が語り継がれています。今回はオロルンの二人の子ども、オシャラーと、オドゥドゥアがライバル争いをしながら世界を創造していくと

          世界を作ったオシャラーとオドゥドゥアー