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アナコンダ先生へ ポチ太郎より

アナコンダ大先生へ

あたしは、考えた。

社会に対して、考えを述べるとき、真面目な文章しか書けなかった、批判的な内容になってしまっていた、よくないことだ。

諧謔が足りないのではないか。

お前の文章には、人間に対する愛情が足りないのではないか。

人間は不完全な生き物だ。

だから間違いを犯す。

慈しみを持って、間違った人間を、肯定的に書くことで、愛を持った、社会への文章が書けるのではないだろうか。

ふと、思い浮かんだのである。

ポチ太郎より。

次の日、アナコンダ先生の家におじゃますることになった。

「おじゃましまーす。ポチ太郎です。」
僕は玄関の両開き戸を開いて、中に入った。

「ポチ太郎くん。ポチ太郎くん、君の言うとおりだよ。批判は、人への愛の配慮が足りない、だから敵意が人を、おかしくし、文脈の読めないたちを刺激し過激化させてしまうのじゃ。」
 アナコンダ先生は、蛇と人間のハーフだ。

 顔は美しい整ったギリシャ鼻に半開き目、薄い唇をした容姿で、長い赤紫色の髪色をしている。

 身体は上半身が人間で、下半身が蛇である。

 透き通るような、お姉さんボイスだ。

 「よかった!共感してくれるのですね、アナコンダ先生に肯定されると、嬉ションしちゃいそうです。ワンワンはあはあ。」
 あたしは、嬉しくて、アナコンダ先生に食べられたくなった。

 「ははは。ポチ太郎くんは、あたしが本当に好きなんだねえ。食べちゃいたいよ。」
 アナコンダ先生は、微笑んだ。

 美しいお姿。

 「お国で暗殺がおこっちゃったことについて、素人ながら、文章なんかを書かせていただいたのですが、自信がなくて、あたしなんかが、触れていい問題ではないような気がしていましてな。」
 僕は、アナコンダ先生に相談した。

 「ああ、某暗殺事件ですな―、あれはやっちゃマズいやつですな、やらかしちゃってますなあ。ははは、あまり触れない方がいいでしょうな、あと一週間は我慢すべきだったと思いますよ。」
 アナコンダ先生は笑った。

 「どうして、一週間でして?」
 僕は、たずねた。

 「そりゃあ、まだ、事件の全貌がはっきりしておらんからですなあ。テレビジョンなんかでも、やりますが、本来、もうちょっと待った方がいいんですじゃい。」
 アナコンダ先生は、言った。

 「へえ。やっぱ、人々の気持ちが追いつかないとか、不確かな情報でものをいうとろくなことにならないからですかね。」
 僕は、きいた。

 「ええ、勿論。過激化するのが一番だめですからね。」
 アナコンダ先生は、答えた。

 「ただ、ちょっとばかし話題になっておる、宗教の名を借りた反社悪徳詐欺団体の問題については、別として、テレビジョンや新聞記事なんかでも、話題には取り上げた方がええでしょうな。」
 アナコンダ先生はつづけた。

 「コワくないですか。僕は触れたくもないです。」
 僕は、身を震わせた。

 「ええ。コワいですとも、放置したいところですわね、一般人は、言わなくていいと思うのですが、ま、ああいうのは、とっちめてやらないと、やっちゃうんですわね。」
 アナコンダ先生は言った。

 「やっちゃってますよね。ずっと前から政治家とも繋がっていただなんて。」
 僕は、返した。

 「ありゃあ、一部のお政治家連中の間じゃあ、一般常識でしてな。明るみに出ないと、問題にさえならないのが、このお国の素晴らしい性質ですじゃい。」
 アナコンダ先生は、お笑いになった。

 「へえ、いい国ですね。ま、僕は、言及したくはないです。かかわりたくないですし。」
 僕は、返した。

 「ええ、いいと思う。じゃが、一流のコメンテーターやらは、怪しげなお宗教の問題について、言及していかないと、社会への責任が果たせておりませぬと、あたしは考えておるがねえ。」
 アナコンダ先生は厳しい意見を言われた。

 「ええ。コメンテーターも大変ですねえ。」
 僕は、驚いた。

 「ああ、そりゃあ、あやつらは、テレビジョンに出たりしておるのだから、国民の皆様に真実をいち早くお伝えするのが、お仕事でしょうに。」
 アナコンダ先生は、鼻でお笑いになった。

 「あと、あまり、故人を叩かないようにしてもらいたいところではありますじゃな。」
 アナコンダ先生は、お悲しい声で言われた。

 「わかります。人間を失ったかのような悪意のある言葉を言われる、人間を逸脱した有象無象がいますものね。」
 僕は、うなずいた。

 「ええ。正直、あたしや、あなたが、言及せずとも、世界中で問題にされておりますから、本質的に書いたりしたところで、社会的価値はゼロですがね。いない方がいいくらいです。」
 アナコンダ先生は、自虐した。

 「うんうん!だから、あたしは、頭が悪いですわね。書く必要のない事を書いて投稿してしまったのですから―。」
 僕は、俯いた。

 「いえいえ。まあ、いいんじゃないの、自分の思いをちゃんと考えて綴ることはいい事よ。今回の事は特別、問題が問題なだけに、沈黙が一番の正解だというだけの話よ。」
 アナコンダ先生は、慰めた。

 「ありがとうございます。」
 僕は涙を流した。

 「あなたは、考えすぎるところがあるから、危険ね。意外に神経質だし。」
 アナコンダ先生は、僕の頭を撫でた。

  


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