2020年5月に読んだ本

こんにちは。5月も終わりましたね。4月に引き続きたくさん読めるぞと思いきや、後半は仕事が忙しくなってしまい、同じようなペースで読むことができませんでした。6月は頑張っていきたいと思います。

森見登美彦『四畳半神話大系』

久しぶりにこの本を読もうと思ったきっかけは、pixivで5月31日まで開催されていた「ワンルームSS」という小説コンテストにあります。

優秀賞には高級椅子(かドラム式洗濯機か電動昇降机)が贈られるという太っ腹な賞で、かなり面白い作品が集まっていると思います。

この募集が始まった時、僕が真っ先に思い浮かんだのはSF的な作品たちでした。家にから出られないのであれば、家の中を拡張してしまえばいい……。そしてそれを体現している小説が、まさに『四畳半神話大系』だろうと思ったのです。

未読の方もいらっしゃるので詳細は省きますが、4話から成るこの本の最終話となる「八十日間世界一周」こそ、まさにワンルームSSの最たるものではないかと思うのです。

最初にこの本を読んだのは高校生の頃だったと思うのですが、当時感じた興奮そのままに読むことができますね。もちろん、自分が大学時代を経たことによって、この物語への「羨望」の目線が質的に変化していることは否めないのですが。とはいえ、下鴨幽水荘も猫ラーメンも樋口師匠も魅力的なことに変わりはないです。

米澤穂信『儚い羊たちの祝宴』

最近、「酒村ゆっけ、」さんというYouTuberの動画を見ておりまして。毎日ひたすら酒を飲むというただそれだけの動画なのですが、これがめちゃくちゃ面白いんですよね。

その動画の中で、彼女がおすすめしていたのがこの『儚い羊たちの祝宴』でした。実は米澤穂信作品は有名な「氷菓」シリーズも含めて読んだことがなくて……。ちょっと特殊な米澤作品入門だったかもしれません。ちなみに氷菓、アニメは見ました。

本作は、「バベルの会」というお嬢様読書サークルが登場する作品によって編まれた連作短編集です。そして同時に、それぞれの作品に謎が隠されたミステリ小説でもあります。とは言っても探偵役が事件を解決する古典的なお決まりのミステリではなく、読み終わったときに「ああ、これってミステリだったんだな」と気づくような作品がほとんどです。そしてそのほとんどの作品で、強いカタルシスを感じることができるでしょう。

斜線堂有紀『死体埋め部の悔恨と青春』

僕は蓼食う本の虫というWebサイトを運営しているのですが、そこで冷蔵庫さんというライターさんにこんな文章を書いていただきました。

この記事は僕が編集することになっておりまして、ちょうど読みたいと思って本棚に刺したままになっていたので、記事を編集する前に一晩で読み切ってしまいました。

本書の魅力に関しては上に貼った記事をお読みくださいという感じなのですが、個人的な感想を述べるのであれば、作品中のインモラルさというか倫理感というか、そういったものがちょうど良いなあと思いました。主人公は正しい倫理観を持っているように見えて、次第にぶっ壊れていく感じとか。ミステリーとしての謎解きの部分も面白かったです。

広野由美子『批評理論入門  フランケンシュタイン』解剖講義』

実は僕は文学部文学科を卒業しているのですが、学生時代にまじめに勉強していなかったので、文学理論みたいなものがほとんど分からないんですよね。この頃、仲間内で岸田國士の戯曲を読んだり、森見登美彦への興味が再燃していたので、もっと的確にテクストを読んでいきたいという情熱が生まれていました。これまでサボってきたけれど、批評についてまずは基礎的なところから概観してみようかな……ということで、この本を買ってみました。

本書は二部構成となっておりまして、第一部は小説技法について、第二部は批評理論について書かれております。

小説を書いているという方は、第一部の方が参考になるかもしれません。「小説」というと大きなものを相手にしている気分になりますが、そこにどんな要素が含まれているのかを噛み砕いて説明してくれます。たとえば「syトーリー」と「プロット」はどう違うのかということであったり、小説の記述の方法には「提示」と「叙述」があるんだよと教えてくれたり。これらの概念をインストールすることで、自分が小説を書くときに使える道具がはっきりし、執筆活動がやりやすくなるのではないかなと思います。

第二部についても、さまざまな批評理論が概略的にまとめられており、非常に面白かったです。これ一冊で批評がはじめられるという本ではもちろんないですが、各種の批評理論への扉を開くことができてとても良かったなと思います。


森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

『四畳半神話大系』を読んだらやはりこれも……ということで、久しぶりに再読しました。だいたい四畳半神話大系と同じような雰囲気だと記憶していたのですが、読んでみるとそれなりに印象が違いますね。まず、黒髪の乙女による一人称が挿入されているところが全く違う。なるほど森見先生は黒髪の乙女文法も扱えたのか、とあらためて関心しました。腐れ大学生文法だけが大得意なわけではなかった。

京都を舞台とした幻想的だけど馬鹿馬鹿しい世界観が最高ですね。初期の秀作だよなあ、と改めて思います。

野矢茂樹『入門!論理学』

ずいぶんと前に買っており、何かの拍子に思いついたので読んでみました。むずかしかった。今もも半分くらいしか理解していないと思います。僕たちは「論理」という言葉を日常的に使っていますが、この本の中では限定的な論理体系を取り扱っており、それを厳密に定義していく作業が僕にはちょっと向いていませんでした。いや、じっくり取り組めばわかるのかもしれない。しかしまあ、半分くらいわかったところであとは未来の自分に任せよう……ということでとりあえず読み終えました。引き続き未来の自分に期待していきたいです。

森見登美彦『太陽の塔』

森見先生のデビュー作。読んだことがある気がしていたのですが、読み進めていくうちに全く読んだことがないと気付きました。冒頭から元交際相手をストーキングする主人公が登場するなど、なかなかこじらせ感があります。夜は短し歩けよ乙女よほど幻想的な雰囲気はなく、京大生のちょっと特殊な日常が描かれます。いや、本当に幻想的な部分がほとんどないんですよ。日本ファンタジーノベル大賞受賞作品なのに。もちろん少しはあるんですけど、これをファンタジーと呼べるんだろうか、と考えたりしていました。お話自体は面白いです。

橋爪大三郎『はじめての構造主義』

上に出てきた批評理論の本を読んでいるときに、ポスト構造主義という言葉が出てきたんですね。僕が学生時代に読んでいたサブカル批評とかの本にもポスト構造主義とかポストモダンとか出てきていたわけですが、雰囲気で理解していてどういった経緯のある言葉かは実はぜんぜん知らなかった。それで、ポスト構造主義なわけだから、まずはその前に来るはずの構造主義から理解するのが良かろうということで、この本で入門してみました。

この本はレヴィ=ストロースが中心となっており、ソシュールによる言語学からどのような影響をうけていかに論を展開していくのか、ということが書かれています。レヴィ=ストロースの仕事が概観できて面白かったです。

内田樹『寝ながら学べる構造主義』

こちらは、ソシュールをポスト構造主義前夜として語るところは同じなのですが、ポスト構造主義の知識人としてレヴィ=ストロース、ロラン・バルト、ジャック・ラカン、ミシェル・フーコーの4人に等しく紙幅を割いて語られているところが面白かったです。構造主義についての理解が深まったような気がしますが、もう少し入門しつつ、次の勉強の段階に進んでいきたいなと思っています。

これからいろんな思想を勉強していきたいと思うのですが、そのとっかかりとして、構造主義を使いたいなと思っています。ここを起点にして、歴史を下ったり上ったり、といった感じです。



以上、読んだ本たちでした。6月も頑張ります。

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