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トラウマから成長しやすいのは男女どちらなのか

ストレスフルな出来事や,もっと悲惨な出来事が起きた後でも,全員が心的外傷後ストレス障害(PTSD)のような状態に陥ってしまうわけではありません。多くの場合はそれほど問題なくその後も経過していくという話もあるのですが,一定の割合で,何らかの問題が生じることがあります。

とはいえ,問題が生じたとしても,そこからまた多くが回復していくことも確かです。何かが生じたからずっと問題が生じてそのまま,とはならないわけです。

これは,身体的な怪我や病気でも同じですよね。多くの場合は治っていきます。

問題は,治らないとか進行していくとか,そういった病気の場合です。それが問題になるのは,身体でも心でも同じです。



回復の男女差

どうもこれまでの研究を見ていると,災害やテロ,がん,HIVなどさまざまな出来事に対する否定的な反応のあとで回復し,さらにそこから成長していくプロセスでは,男性よりも女性の方がうまくそのプロセスを進んでいくという結果が得られているようです。男性の方が,精神的なダメージを大きく受ける傾向があるようです。

もちろん,男女で差がないという報告をしている研究も多いのですが,性差を報告する研究の場合には,男性よりも女性の方が回復・成長を報告しやすいそうなのですよね。

ところがその一方で,PTSDの発症率を見ると,男性よりも女性の方が多い傾向があるようです。何だか矛盾していますよね。


心的外傷後成長

トラウマティックな出来事を経験して,自分自身の中核が揺さぶられるような経験をしても,そこから何かを学んで成長していくプロセスを心的外傷後成長(PTG)といいます。

このPTGに男女差があるかをメタ分析で検討した研究があります。PTGの研究はがんサバイバーや事故・災害の生存者など特殊なケースを扱うこともありますので,必ずしもサンプルサイズが大きくないという問題があります。そういったときには,メタ分析で統計的な結果を集約するのはひとつの有効な方法です。というわけで,この論文を見てみましょう(Gender Differences in Self-Reported Posttraumatic Growth: A Meta-Analysis)。

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