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ゲームの中で泳ぐネズミ

何年か前に,「あ,これは死んだな」と思わされた夢を見たことがあります。それは,立っている場所に波が押し寄せて,一気に水の中に飲み込まれる夢でした。水に飲み込まれた瞬間,「もうだめだ」と思って,はっと目が覚めたのを今でも思い出します。

ということを書いていたら,海に行って子どもたちと浮き輪に捕まりつつ,波に乗って上下動を楽しんでいたときに,いきなり大きな波が来て巻き込まれたときのことも思い出しました。

水の中で「これはもうダメだ」と思ってしまうことを想像するだけで,ちょっと怖くなってきます。

ラットを泳がせる

モーリスの水迷路試験(Morris Water Maze)という実験があるのをご存じですか?

私もそれほど詳しいわけではないのですが,ラットを大きなたらいのような水槽の中で泳がせて,空間学習能力を測定する実験です。

ラットを1匹,大きな水槽で泳がせます。そのラットは水槽の縁を登ることができないようになっているので,立つことができる足場をなんとか探そうとして泳いでいきます。

その水槽の中には,水から見えないようになっているのですが,足場が設置されていて,運良く底にたどり着くことができれば,ラットはそこで休むことができます。

水槽の周りにはヒントとなる図形が飾ってあります。色がついていたり,形が違っていたり。水の中を泳ぐラットは,何度か足場にたどり着くうちに,その図形をヒントに効率よく足場を探すことができるようになっていきます。記憶能力が高い個体ほど,早い段階で効率よく足場にたどり着くことができるというわけです。

次に,足場の場所を変えてまた泳がせます。ラットは最初に覚えた場所に行きますが,足場が見つかりませんのでその周辺を泳いで,また別の場所に行きます。運良く足場が見つかると,何度か泳ぐうちに次はその場所を覚えていきます。

このように,記憶の上書きについても実験で確認できるというわけです。

この実験をすると,メスよりもオスの方が課題をうまくこなすことができたり,加齢によって成績が悪くなっていったり,食べ物や栄養状態によっても成績が変わってくることがわかるそうです。

人間も泳ぐ

もしも自分がこのラットだったら,と思うと……なかなかの不安や恐怖に襲われてしまいそうですよね。

そして,ラットならこの実験ができるけれども,人間だと難しいよな,と思いませんか?

そんな中,ラットと同じような課題を人間にさせることにチャレンジした研究があるのですよね。この論文(Gender, videogames and navigation in virtual space)です。

どうやって人間にやらせるか?ということが最大の問題ですよね。

ゲーム内で泳ぐ

そこでこの研究では,3Dのゲームをわざわざ作っています。しかも,プレイヤーがラットになって,水槽を泳いで足場を探すゲームなのです。

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