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人種への偏見とパーソナリティとの関連

偏見の二重過程動機づけモデル,と呼ばれるモデルがあるそうです。

このモデルでは,偏見を伴う集団間の態度が,ふたつの異なる動機によってもたらされることが仮定されています。

◎脅威によって誘発される権威主義・保守主義的動機:社会的な統制や安全を追求し,自律性や個人の自由に反対する態度
◎競争誘発性の支配動機:他者に対する優位性,権力,優越性を追求し,平等主義や利他的な社会制度に反対する態度

そして,パーソナリティ特性は,直接的に偏見を伴う態度に影響するというよりも,こういった態度に影響することで,偏見に結びついていくという仮説が成り立つのだそうです。

人種的偏見

アメリカ合衆国では,これまでに人種に対する偏見を大きく克服してきた歴史をもちます。ところが,現在でも警察による犯罪の取り締まりや社会のなかでのさまざまな場面で,人種による偏見や差別的な扱いが話題になります。いや,もしかしたらそういった問題が顕在化して,問題視されること自体が健全な状態なのかもしれません。「差別なんかない」と言い切ってしまう社会の方が,現実を直視していないとも考えられますので……。

アメリカでは2008年の大統領選挙でに黒人大統領が誕生し,2012年に再選されました。そして2016年の大統領選挙では人種差別的な態度を許容する大統領が当選しています。もしかしたらこのような変化が起きたタイミングで行われた調査では,パーソナリティと人種的な偏見との関連のパターンが異なってくるかもしれません。

性格は関連するか

では実際に,この時期に行われた大規模な調査データを分析することで,ビッグ・ファイブ・パーソナリティが権威主義や社会支配的志向性などを介してつながるかどうか,またこれらの要因があったとしてもパーソナリティ特性が直接的に偏見につながるのかを検討した研究を見てみましょう。こちらの論文です(Personality traits are directly associated with anti-black prejudice in the United States)。なお,分析の対象はヒスパニック系ではない白人アメリカ人たちです。

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