批判的思考は知能よりも学業成績を予測する
物事を考える時というのは,自分が思っている以上に感情に左右されるものです。しかも自分ではなかなかそのことに気づかないのですよね。困ったものです。
適切な基準や論理に基づいて,偏りのない思考を行うことを批判的思考(クリティカルシンキング)と言います。もちろん,実際にそのような思考を行うことができればいちばんよいのですが,「じゃあやってみなさい」と言ったとしても,なかなか簡単にできるわけではなさそうです。
技術と態度
批判的な思考は,一種の技術(スキル)のようなものとして捉えることも可能です。「頭の良し悪し」とか「知能」とか,そういったことではなく,情報に対してそれをどのように扱うかという「やりかた」として捉えることができるというわけです。そして,技術として捉えることでそれを「学ぶことができる」というニュアンスをそこにこめることもできるようになります。「能力じゃなく技術なのだから,教えることもできる」というわけです。
もうひとつは,批判的な思考を「行う傾向」として捉えるやり方です。普段から批判的思考に結びつきやすい思考をする「個人の傾向」として批判的思考を考えます。これは態度や性格に近い概念の捉え方です。
批判的思考と学力
こういった物事の考え方をすることは,勉強に役立ちそうですよね。きっと,批判的思考で物事を捉えやすい人は,学業成績も良さそうです。でもその一方で,「あれこれ考えずに,とにかく情報を受け入れて覚えていく」という態度が成績を上げていくんだと考える人もいそうです。
では,実際に批判的思考は学業成績と関連するのでしょうか,またもしも関連するとすれば,その関連の大きさはどれくらいなのでしょうか。この論文で確認してみましょう(Critical thinking predicts academic performance beyond general cognitive ability: Evidence from adults and children)。
研究1
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