就職率100%を達成する方法
以前,数値で示すことと,数値で示すことを重視することが,ことの本質からズレていく例についてかいたことがあります。
今回も,そんな内容です。
就職率100%達成
その昔,とある大学の前を車で通りかかった時,校舎に「就職率100%達成」という垂れ幕が下がっているのを見かけたことがあります。
そこは小規模な大学でしたので,きっと教職員一丸となって学生に真摯に向き合って,達成されたのだろうなと思うわけです。
効果的な取り組み
大学でどういう取り組みをしたら,就職率が向上するでしょうか。
学生のキャリアに対する意識を高め,自分自身の将来のイメージを明確にさせるようなガイダンスや授業を充実させます。
また,一人ひとりの学生の資質や興味・関心を把握して,就職や企業,進路の情報を提供します。
さらに,企業に対してもこの大学の学生について知ってもらう活動をする必要があります。大学での教育内容や取り組みを知ってもらって,企業の採用担当者と学生との交流の場を設けます。
できれば,企業との関係を作るための授業が展開できると良いですね。実際に教えに来てもらえば,より学生たちのことを理解してもらえるかもしれません。
学生たちのことを考えて,学生たちのより良い将来のための仕組みを作っていくことは、なかなか骨の折れる作業です。
まじめに取り組まなくても
その一方で,就職率を改善するという目的だけを考えるのであれば,次のようなことをしても改善されます。
それは,就職できなかった学生を卒業させないことです。
たとえば,進路決定を条件に単位を与えるような,キャリア教育の科目を作ってしまうのです。そうすれば,進路が決まっていない学生は卒業が難しく,結果的に就職率は向上します。
なぜなら,就職率は卒業生のなかの就職者数で算出するからです。分子ではなく分母を操作しても数字は上がるのです。
学生の人気企業ランキング
就活といえば,学生の人気企業ランキングも欠かせない情報(?)です。
学生の人気ランキングは,大学生にアンケートをとって,企業名を挙げてもらうことで調査が行われます。「興味のある企業名を挙げてください」といった形で調査が行われるということです。
この調査方法だと,とにかく多くの学生の頭の中にパッと浮かぶことが大切です。
学生の人気を高める
学生が「働きたい」と思う企業というのはどういうものなのでしょうか。
学生が就職に際して何を重視するかも,時代によって変わっていきます。その中でも最近は,「安定している会社」「自分のやりたいことができる会社」「給料の良い会社」など,まあそうでしょうね,という要素が高く評価されるポイントになっています。
こういう調査で挙げられるところを地道に改善していけば,学生の人気も上がっていくはずですよね。
でも,そういった本質的な取り組みは,なかなか大変なことです。また,一部に有利な取り組みをすることは別のところで歪みを生じさせるかもしれません。新入社員を優遇することは,ベテラン社員の不利益になるかもしれないのです。
人気を上げる
そして,そういう地道な取り組みは,けっこう「意外に良い会社」とか「穴場の会社」のように扱われてしまって,全体的な人気にはあまり影響しないことがあります。
それよりは,学生に企業名を周知させる方が手っ取り早いのです。
テレビで,特定の商品ではなく企業イメージだけを向上させようとするCMをどんどん流す,というのもその一つの方法です。会社の中身は同じでも,学生の耳に企業名は残っていくことになります。
同じようなやり方は他にも考えられます。ネットを使ってもいいですし,もしかしたらSNS上でフォロワーの多いユーザーにお金を払って書き込んでもらう......ということも有効かもしれません。
本末転倒
今回挙げた例も,手段の目的化とか本末転倒という言葉で表すことができそうな内容です。しかし,世の中では本当にこういうことがよく見られます。
それに,自分自身も「何か対処をしなくては」と思った時に,ついこの方向の対処を考えてしまうことがあります。ですから,人のことを偉そうに言うことはできないなと思います。
皆さんはいかがですか?
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