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心理学を学ぶこと

先日,心理学を勉強する学生がよく言われるセリフについて書きました。

定番のセリフとは,「考えていることを当ててみて!」です。言ってしまったこと(言われたこと)はありますか?

今回は,心理学を学んで知らない間に身につくようなことについて考えてみたいと思います。


心理学とは

「心理学とは何ですか」という答えはなかなか難しい問題です。

テキストや辞書にいろいろなことが書いてあるのはわかっているのですが,なかなかしっくりとこないのですよね。

自分のMacの辞書アプリで出てくる記述はこんな感じです。

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西周がpsychologyから訳した言葉だということも書いてありますし,実験的方法を取り入れて実証的科学となったとも書かれています。

教育システム

だいたい共通した心理学の教育システム,というものがあります。学部のカリキュラムには認定心理士を認定するための基本的なセットがありますし,国家資格になった公認心理師にも標準的なカリキュラムが設定されています。

公認心理師に必要な科目一覧は下のpdfに書かれています。

では,そのカリキュラムを学ばないと心理学を学んだことにならないのかというと,そういうわけでもありません。実際,私のところにいる大学院生たちもバックグラウンドは様々ですし,それでも問題なく心理学の研究活動には従事できています。また,いま所属している学部には体系的な心理学のカリキュラムが備わっているわけではありません。

研究法/統計/実験

心理学を学ぶカリキュラムのひとつの特徴は,研究方法を学ぶ授業にあると思います。

心理学研究法だとか,心理統計法だとか,心理学実験といった科目です。こういった科目では,知識として研究方法論を学ぶこともあるのですが,実際に模擬的な実験や調査,観察や面接をおこない,得られたデータを分析してレポートに書いていくという,模擬的な研究活動が行われることが多いと言えるのではないでしょうか。

暗黙の知識獲得

そういった学修プログラムの中で,心理学を学ぶ学生たちは,いつのまにか心理学特有の考え方を身につけていくと思うのです。

たとえば,実験計画を立てるときには統制群が必要であるとか,質問紙アンケートを計画するときにカテゴリカルな選択肢ではなく量的に測定しようとするとか,そういったことです。それほど明示的に示されなくても,いつのまにか「それが前提」であるかのように知識が獲得されている場合があると思っています。

それが良いことなのか悪いことなのかは,わかりませんが。

暗黙部分の可視化

スポーツでも芸術でも音楽でもそうだと思うのですが,体を動かして学んだことを言語化することで,その内容を伝えようとします。

学問でも特に方法論に注目すると,同じような過程があるのではないかと思うことがあります。実際にされることが先行し,何がされているのかについてはあとからまとめられ,検証されるという順番です。

研究活動そのものを研究対象にする,といっても良いかもしれません。研究者たちが暗黙のうちにおこなっていることを可視化することで,学びやすくするということですね。

こういう話をすると,「もっときっちりと決まっていると思った」とか「そんないい加減なことで良いのですか」という感想を持つ人もいそうです。でも,学問も人間が行う活動であり,各研究者が少しずつ工夫したり,「これがいいよね」と思いながら議論しながら研究する中で,やり方も少しずつ変わっていき,その学問独特のやり方が形成される,そういうものではないかと思うのです。

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