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ダークな選手とコーチの怒りや攻撃性

これまでにも何度も,ダーク・トライアドについて記事を書いてきました。ダーク・トライアドというのは,ナルシシズム,マキャベリアニズム,サイコパシーという3つのパーソナリティ特性の集合体です。

◎ナルシシズム:自分の誇大な感覚,権利意識,優位性の認識,他者に優越した感覚,独自性の感覚などを特徴とする。自己利益を重視する傾向がある。
◎マキャベリアニズム:過度に操作的で計算高い方法で行動したり思考したりする。行動を慎重に計画する傾向がある。
◎サイコパシー:衝動的でスリルを求める行動をとり,他者に対する共感性のレベルが低い。衝動的に行動する傾向がある。

スポーツにおけるダーク・トライアド

スポーツ心理学の文脈では,ダーク・トライアドのレベルが一般の人びとに比べてアスリートで高い傾向にあることが報告されています。では,高いダーク・トライアドは何につながるのでしょうか。

◎ドーピングに対するより好ましい態度に関連する
◎実際の不正行為に関与する可能性の高さに関連する
◎精神的なタフさとともに,競技者の身体活動レベルを予測する
◎スポーツトレーニングのパフォーマンスに関連する
◎スポーツの達成レベルに関連する

このように見ると,ダークな特性だけに不正の傾向にも関連するのですが,スポーツのパフォーマンスを向上させるような働きもすることがわかります。

感情

スポーツでは感情も重要だとされます。感情のなかでも,怒りはパフォーマンスを促進することもあれば阻害することもあると考えられることから,特に重要だとされます。

怒りは強いイライラした感覚,不快感,敵意によって特徴づけられ,自分自身のアイデンティティや自尊心に対する脅威を感じたときに認識されます。怒りはコントロールが難しい感情のひとつで,うまくコントロールできないとさまざまな問題を引き起こします。制御できない怒りや怒りを感じた過去のできごとを反すうすること(何度も思い出すこと)は,攻撃的な行動にもつながります。

スポーツでは攻撃性も,ときに役立ちますし時にパフォーマンスを阻害します。これも両面があると言えるのではないでしょうか。


アスリートとコーチ

スポーツ選手におけるダーク・トライアドと怒りや攻撃性にどのような関連があるのでしょうか。また,アスリートとコーチの関係性の中で,ダーク・トライアドや怒り,攻撃性がどのように関連してくるのでしょうか。スポーツ選手にとってコーチはとても重要な存在です。ダークなパーソナリティをもつコーチは,アスリートにどのような影響をもたらすのでしょう。

このあたりの関係について検討した,こちらの論文を見てみましょう(Don’t look back in anger: A cross-sectional and dyadic examination of the Dark Triad, anger, and aggression in athletes)。

ちなみに,”Don’t look back in anger”というのはイギリスのロックバンド,Oasisのヒット曲の曲名でもあります。なつかしい。こちらもどうぞ。

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