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いつ役に立つかわからないから維持することが大切

私たちは,将来の予測がとても苦手です。でも,「うまく予測ができている」と思い込むことによって,安心を得ているんじゃないかな,と思うことがあります。

後知恵バイアス

その思い込みのひとつが,後知恵バイアスです。これは,何かが起きた時にあたかも最初からその結果を知っていたかのように思い込む認知的な特徴のことです。

この後知恵バイアスについては,これまでにも何度か記事にしたことがあります。たとえばこの記事は,私が東京に引っ越す直前に起きた出来事について書いたものです。

こういう経験をすると,いくら後知恵バイアスについて知っていたとしても,その瞬間には見事に後知恵バイアスにかかってしまうということが実感されます。気づけばそうだと分かるのでしょうが,後知恵バイアスだと気づかず過ぎていることもたくさんありそうです。

役に立つかどうか

研究や学問や勉強が将来役に立つかどうかという問題も,なかなか予測が難しいものです。研究者にとっても,いま流行っている学問が10年後も盛んに研究されているかどうかは,誰にも予想がつきません。

社会が変化して,それまで大して注目されなかった学問が突然注目されるようになることもあります。たとえば比較言語学が,コンピュータとネットの普及で自動翻訳が進むことでどんどん必要とされていくようになったとか。

パーソナリティ心理学だって,こんなに多くの企業が顧客のビッグ・ファイブ・パーソナリティの情報を集めてマーケティングに活用しようと試みるようになるとは,私自身も予想していませんでした。

その時に始めても

そして,流行り始めてから教育課程を作り始めても「手遅れ」になっている可能性があります。ある学問を研究する研究者を養成するのにどれだけ時間がかかり,次の世代に受け継ぐのにもどれだけの時間と手間がかかるか,考えただけでもそれは相当な時間です。そして,完成した頃には,その流行は去ってしまっているかもしれません。

なくしてしまう時は一瞬なのですが,つくるのはとても時間がかかるのです。そして,次の時代に何が必要になるかは予想がつきません。予想できていると思っても,たいてい外れるものです。

維持することの重要さ

ではどうしておくのがいいのでしょうか。ひとつの方法は,火を絶やさないように多様性を維持していくことです。多様性を維持していくことは社会にとっても大変なことですが,「何がいつ役立つようになるかわからない」ということであるからこそ,たとえ学問は一部にある程度は選択と集中をしなくてはならない状況になったとしても,できるだけ裾野を広げて維持していくことが大切だと思います。

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