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摂食障害と自尊感情の因果関係は?

割引あり

食に関する問題は,いくつかのものがあります。これらは摂食障害と呼ばれて,特に青年期の問題として多くの研究が行われています。

◎神経性食欲不振症:極端な食事制限や体重増加に対する恐怖など
◎神経性過食症:反復的なむちゃ食いとその後の代償行動(嘔吐や過度の運動など)を特徴とする
◎過食性障害(むちゃ食い障害):短期間に大量の食物を摂取するが,代償行動を伴わない

女性の約8.4%,男性の約2.2%が,これらの問題を報告するという統計もあるようです。潜在的には,青年期の若者たちの5人に1名がこれらの問題をもつ可能性もあるとされています。


自尊感情

自分自身を評価の対象とした際に,どれくらい肯定的な感情を伴うか,この程度のことを自尊感情と言います。いわゆる「自己肯定感」に近い概念です。

昔から,自尊感情は摂食障害に密接に関連すると言われてきました。自尊感情の低さは摂食障害の危険因子であることが,これまでの研究でも指摘されてきています。たとえば,低い自尊感情は外見に対するネガティブな評価の反映である可能性があります。この自己評価の低さを改善するために,体重や体型を自分の理想に近づけようとすることにつながっていきます。

逆の関係

自尊感情から摂食障害へ,という因果関係が必ずしも正しいとも限りません。摂食障害の症状を呈することが自己概念に大きな問題をもたらし,その結果として自尊感情が低下するという可能性です。

古典的に,自尊感情は自分の目標と達成とのズレで評価されます。理想の自分と現実の自分との差が大きいと自尊感情が低くなるという考え方です。自分は痩せたいという理想をもっているにもかかわらず,現実の自分は太っていると自己認識している(実際の体型とは無関係に)のであれば,当然ながら自尊感情は低下することになります。

また,自尊感情は社会的な需要を反映するシステムだという,ソシオメーター理論があります。摂食障害をもつ人は,自分自身を好ましくない存在だと考えがちですので,社会的に受容されていないととらえる傾向があるでしょう。この認識が自尊感情の低下をもたらす可能性があります。

因果関係

自尊感情と摂食障害傾向を,縦断的な調査によって検討すれば因果関係の推定ができるでしょう。これまでにそのような研究が数多く実施されていれば,メタ分析での検討も可能になります。

実際に,メタ分析で因果関係を検討した研究があります。どのような結果が得られているのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(The Link Between Low Self-Esteem and Eating Disorders: A Meta-Analysis of Longitudinal Studies)。

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