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稲作地域に住む人たちはより多くマスクをつけていたのか

実際にマスクは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染に対して効果をもつのですが,実際に効果があるということと,これをどのように捉えるかということは,なかなか難しい問題です。これは,ワクチン接種についても同じですよね。

「マスクをつけていないなんて許せない」「ワクチン接種していないなんて信じられない」「こんなに感染者がいるときに旅行に行くなんて」

……さまざまな「自粛警察」が登場したのも,COVID-19が流行した後の特徴です。

マスクをつける要因

COVID-19の流行が始まった頃,まだマスクがどれくらい効果があるのかはよくわかっていませんでした。布マスクと不織布マスクの違いも,社会的距離をどれくらいとるべきかも,どれくらい手洗いや消毒をすればいいのかもよくわかりませんでした。

でも,社会生活を営まなければいけない状況の中では,大きな「個人差」が生じます。つまり,「やる人とやらない人」が出てくるというわけです。研究をするときには,この個人差が重要な意味をもちます。「ばらつき」を何で説明するか,ということが研究のポイントだからです。

今回紹介する研究は,2020年1月後半の中国で行われた調査です。いくつかの地域で,マスクをつけているかどうかを調査したものです。そして,それぞれの地域のマスク着用率に,何が影響するのかを検討しています。

ここで注目しているのは文化的な要因です。タイトな文化とルーズな文化,という枠組みがあるのですが,前者は規範が厳しく人びとがルールを守ろうとする,守らない人を攻撃するような文化で,後者はもっとゆるいルールの文化です。そして,その土地の「歴史」がその文化を創っていくのではないかという仮説もあります。たとえば「歴史的に稲作地域は規範が厳しく,タイトな文化になりやすい」というのもそのひとつです。

では,稲作が盛んな地域は,感染パンデミックの初期により多くの人がマスクをしていたりしたのでしょうか……そんなことを検討した研究したのが,こちらの論文です(Historical rice farming explains faster mask use during early days of China's COVID-19 outbreak)。

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