許す人は幸福になるのか
心理学の研究の中では「許し(forgiveness)」という心理的な反応も研究されています。
許しというのは,対人関係で生じた傷に対するポジティブな心理的反応であり,個人が自分に害を与えた人に報復しないことを望み,他者との間の将来の関係に積極的に期待する傾向を表すとされます。
自分に対してよくないことをされても根に持たず,これから関係がよくなるかもしれないと期待することを指すということですね。ふだん何気なく「許す」ということばを使いますが,あらためて説明されると「なるほど」という感じがします。許しというのは,一種の立ち直りとか,ネガティブな状態を乗り越える傾向とも捉えることができます。
許しの中身
もともとこの「許し」は,宗教的な意味合いの強い概念でした。研究され始めた当初も,そうだったようです。そして次第に研究が進んでくると,許しの中身がいくつかの領域で成り立っていることも明らかにされてきました。
ひとつは性格特性的な許しで,状況を超えてその人が多くの場面で人を許す傾向の把握しようとするものです。
もうひとつは状況的な許しで,ある出来事を経験してどれくらい許したかという,行動を把握しようとするものです。
許すと幸福なのか
もともと宗教的な意味合いも強い許しという概念ですので,「許す人は幸福なのか」という疑問が浮かぶのもわかるように思います。そして実際,これまでの研究では,他の人をより許す人ほど幸福感も強い傾向が報告されています。
でも,結果が一貫していない報告もあるようです。では,メタ分析の手法を用いて過去の研究を統合してみると,どれくらいの関連が見られるのでしょうか。また,許しと幸福感の関連は,国や地域によって異なるのでしょうか。
メタ分析で関連を検討した研究がありますので,この論文を見てみましょう(Forgiveness and subjective well-being: A meta-analysis review)。
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