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日々是好日・心理学ノート

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#おすすめ本

2023年に読んだ本(3)

2023年に読んだ本の第3弾です。 今回は『自殺の思想史』という本を取り上げてみましょう。 目次まずは目次です。ざっと目次を見てわかるように,過去の人類の歴史の中で,自殺というものがどのように捉えられてきたのか,時代の中で自殺が肯定されたり否定されたりしてきた歴史が描かれています。

リサーチクエスチョンの4つのタイプ

以前,リサーチクエスチョンについて記事を書いたことがあります。こちらの記事です:『良いリサーチクエスチョンを立てるためには』。実はこの記事は私のnote記事のなかでも,一番読まれているもののひとつになっています。それだけ,多くの人が必要とする話題なのでしょうね。 オススメ本最近,リサーチ・クエスチョンについて,面白い本が刊行されました。『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』です。 よいリサーチクエスチョンを立てるこ

世界一孤独な日本のオジサン

心理学のなかで孤独感は,青年心理学の研究テーマとしてよく研究されてきた歴史がある印象もあるのですが,高齢期においても重要な概念です。 日本の社会も変化してきて,人口のボリュームゾーンが変わってきたということも背景にあるのでしょう。仕事をリタイアして孤独感を抱いて,あるいは本当に社会の中で孤立して死を迎えるという人もこれからますます増えていきそうです。 自分もなんて人ごとのように書いていますが,私自身もいい歳ですので,高齢期になったときの孤独のリスクは十分にあるわけです。今

Big Fiveパーソナリティ・ハンドブック

2023年6月,新しい本が出版されました。『Big Fiveパーソナリティ・ハンドブック:5つの因子から「性格」を読み解く』(谷 伊織・阿部晋吾・小塩真司[編著],福村出版)です。 Big Fiveビッグ・ファイブ・パーソナリティは,外向性,神経症傾向,開放性,協調性,勤勉性の5つの次元から人間のパーソナリティ全体を記述しようと試みるパーソナリティの枠組みです。現在では,心理学の研究だけでなく他の研究分野,多くの学問分野,教育場面,臨床場面,企業のマーケティング,就活などに

レイシズムの種類

レイシズムとは,「レイシズムは人や集団を目や髪や肌の色によって従属的な地位に置く態度,行動,制度,あるいは社会政策」を指すとされています。 今回は『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション』という本の中に書かれていた一節を紹介しましょう。 一口にレイシズムと言っても,その中身にはさまざまなパターンがあって複雑です。 個人的レイシズムまず,個人的レイシズムです。個人的レイシズムというのはよく見られるもので,普段の生活の中でもあからさまな形で表現されます。 たとえば…

首切りと企業解体で巨万の富を手にした男

ずいぶん前に買っていて,何年も(時には10年以上も)経ってから,ふと手にしてやっと読んだ本というのがたまにあります。今回はそんな一冊を紹介しましょう。 タイトルは『悪徳経営者』です。副題はこの記事のタイトルになっている,『首切りと企業解体で巨万の富を手にした男』です。著者はアメリカのジャーナリスト,ジョン・A. バーンです。出版年は2000年ですので,もう20年以上前の本となります。 チェンソー・アルこの本は,1990年代に株式市場で有名な経営者として名を馳せた,アルバー

自殺の思想史

警察庁の自殺者数を示したデータによると,令和に入ってから毎年2万人以上の人々が,自殺で命を落としています。 ちなみに,令和4年中の交通事故死者数は2600人ほどしかいませんので,いかに自殺者数が多いのかがわかるのではないでしょうか。 自殺の思想歴史のなかで,自殺についてはさまざまな見方がされてきました。古代ギリシャや古代ローマ時代から宗教の影響下ではどのような考え方がされてきたのか,そして現代に近づくにつれてとらえ方がどのように変わってきたのか,自殺をめぐる思想の変遷をま

M-1という純情と狂気

とある学会に向かおうとするときに,「どの本をもっていこうかな」と思って手にした本のうちの1冊が,この本でした。 『笑い神 M-1、その純情と狂気』(文藝春秋,2022年)です。 面白くて,出張の行き道程とその日に寝るまでの間に読んでしまいました。これまでよく観てきたM-1(2010年まで)の裏側の様子を描いた書籍です。 でも,この本を読んでいて痛感したのは,このことです。 競技の種類M-1が始まると,「M-1で勝つためにはどうしたらいいか」を考えるようになっていきます

「嫌なことを考えたくない」が基本

注意喚起をすると「そんな嫌なことを言わないでくださいよ」という反応が生じることは,よくあります。避難訓練なんかもそうですし,自動車の運転免許の書きかえなんかも典型的ですよね。 『人が死なない防災』(片田敏孝著)を読んでいたときに,こんな一節が出てきました。 日本の防災教育の間違いこの本の中には,日本の防災教育で陥りがちな間違いとして2点が挙げられていました。 ひとつは,脅しの防災教育です。とにかく「怖いぞ」「怖いぞ」と連呼して恐怖を喚起させようとする教育のパターンです。

映画を早送りで観る人たち

皆さんはオンデマンド動画を見る時に,早送りをしたり倍速視聴をしたりしますか? 「やる」という場合,その理由は何でしょうか……? 今回紹介する本は,この問題をまとめた『映画を早送りで観る人たち:ファスト映画・ネタバレ―コンテンツ消費の現在形』(稲田豊史著,光文社,2022年)です。内容は面白くて,現代論や(現代の)若者論としても通じる部分があるのではないかと思いました。 鑑賞と消費皆さんは映像作品を「鑑賞する」という感覚で観ているでしょうか。作品自体を味わって,没頭して,

キツネ潰し

その昔,ヨーロッパに「キツネ潰し」というスポーツ(というか娯楽)があったのをご存じでしょうか。 今回は『キツネ潰し 誰も覚えていない、奇妙で残酷で間抜けなスポーツ』(エドワード・ブルック=ヒッチング著,日経ナショナル ジオグラフィック,2022年)という本からの紹介です。 できるだけ飛ばす広い競技場に,男女が向かい合わせに立ちます。その間には細長い網か布が置かれていて,両端をその男女が持ちます。そうですね,着物の帯のような細長い布です。ペアになった2人が6メートルから7メ

運命か自己責任か偶然か

以前,遺伝と環境と運命論と自己責任論について記事を書いたことがあります。 才能や犯罪行為,美しさなどについて,私たちは「何が原因なのだろう」とあれこれ思いをめぐらせてしまいます。犯罪が起こると必ずと言っていいほど「遺伝なのか」「親の育て方なのか」「どう育ってきたのか」と追求が始まるものです。 しかし,いま私たちが「こう考えることが当たり前」と考えていることは,常にいつの時代でも「当たり前」ではありません。 格差という虚構今回は,『格差という虚構』(筑摩書房)の中に出てき

好奇心の育み方

今回は,フロー体験で知られる心理学者チクセントミハイの著書『クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学』から,好奇心や興味を育てるために何が必要とされるのかを見ていきましょう。 創造的であるために必要なことのひとつは,好奇心と興味を育むことだとチクセントミハイは述べています(p.389)。年をとっても創造的な人に共通するひとつの特徴は,好奇心を保ち続けていることです。 では,どうしたら好奇心を育むことができるのでしょうか。 毎日,何かに驚くように心がける見るもの,

創造性のステップ

今回は,フロー体験の研究で知られるM.チクセントミハイの著書『クリエイティヴィティ―フロー体験と創造性の心理学』から,創造性のステップを紹介してみましょう。 この書籍は,創造的な偉業を達成した多くの人びとへのインタビューから着想を得て,まとめられたものです。他の部分にも興味深い点がたくさんありますので,それはまた後日,紹介していきたいと思います。 以前から,創造性のプロセスは5つのステップで説明されてきたそうです。順番に見ていきましょう(p.90-91のあたりです)。