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日々是好日・心理学ノート

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2020年10月の記事一覧

2020年10月のまとめ

次第に秋も深まってきたように思います。今年は夏は暑く,その後も天気がイマイチでスッキリしない日が続きましたね。 東京も曇りや雨が多い秋でした。 夏休みの宿題昔は夏休みの毎日の宿題にその日の天気を書くコーナーがありましたよね。今もあるのでしょうか。そこにその日の天気をかなくちゃいけないのがとても面倒でした(だいたい夏休みの最初の頃に宿題を終わらせていたので)。夏休みの終わりに溜まった新聞を漁って,休みの間の天気を宿題に書き込む,という場面が描かれた漫画もあったように記憶して

無意識の世界から意識の世界へ

私たちが意識できる範囲というのはごく限られたもので,普段の生活の大半は意識せずに行う行動で占められています。 とはいえ,無意識なのですからそのこと自体にも気付くことは少なく,大半のことは意識して行なっていると思っていますし,覚えているものだと思っていますし,自分の行動はちゃんと意識的にコントロールできていると感じています。 自動車の運転意識せずに行うことの例のひとつは,自動車の運転ではないでしょうか。あの大きな鉄の塊を,一つひとつの行動を意識することなく行って,目的地まで

ナルシストは自分が賢いと信じている

自分自身について誇大で「すばらしい」という認識をもつ自己愛的な人物(ナルシシスト)は,きっと自分のことを「賢い」と考えるのではないでしょうか。 そう考えるのは,それほど突飛なことではないですよね。 エージェンシーコミュニオンとエージェンシーという対比は,心理学でもよく用いられます。コミュニオンは共同性と訳されることがあるのですが,他の人々の方向を向き,協調的で,親切さや親密さを表す志向性です。それに対してエージェンシーは作動性と訳されることもあり,達成や能力,他者から離れ

職場いじめの経験とダークな性格

人間が集団で集まると,どうしてもいじめのような現象が生じがちです。それは,子どもたちだけではなく,大人でも同じことが起きます。 職場のいじめとしてよくあるのが,立場を利用した精神的・身体的苦痛を与えることです。 何がパワハラに相当するのかについては,明確な基準があるわけではないのですが,「身体的攻撃」「精神的攻撃」「人間関係の切り離し」(別行動を強要する),「過大な要求」(過剰な仕事の要求),「過小な要求」(本来の業務ではない本質ではない作業の要求),「個の侵害」(プライ

ネガティブな感情はいつも悪者なのか

良くない出来事を経験すると,よくない結果が生じる。 何だか当たり前のように思えるかもしれないのですが,人による部分もあります。あまり良くない経験をしても,うまくその影響をコントロールして,自分自身に大きな影響がないようにすることができる人もいるようです。 そのひとつの要素が,感情調整(emotion regulation)と呼ばれるものです。抱いた気持ちを,うまく和らげてやることです。注意を別のことに向けたり,気分転換をしたり,ゆっくりと休憩をしたり……さまざまな調整の方

思考スタイルと知能指数

ものごとの考え方について,一定の方向性をもって処理する,好んで行う方法のことを思考スタイルと呼ぶことがあります。 思考スタイルには個人差があって,状況や時間を超えてある程度一貫するということが想定されています。まるで「性格(パーソナリティ)」のような概念の扱いかたです。思考スタイルもパーソナリティも,多くの場合は質問項目(文章と選択肢のセット)で測定されます。そういった測定方法もよく似ています。 また,パーソナリティの概念の定義の中には,思考スタイルのような要素が含まれて

研究者を評価する数字の話

一時期よりは収束した印象がありますが,最近おきた出来事の中で,研究者を評価する数字が話題になっていました。「この研究者はh-indexがゼロだからたいした研究者じゃない」とか,そういった話です。 今回は研究者を評価する数字について書いてみたいと思います。 大学・学部学科・研究室の選び方大学に進学した経験のある人は,ご自身の進学先を選んだ理由を思い出してもらうと良いかと思います。明確な理由で大学や学部学科を選んで進学した人もいるとは思うのですが,どうしても大学というものは,

どんな性格の人が移民を嫌うのか

政治的な志向性と性格との関連については,これまでも結構多くの研究が行われてきています。政治的な議論,抗議活動への参加,投票,政治的な集会への参加などなどの研究があります。ただし,欧米での研究が多いのですけどね。 以前も書いたのですが,日本だとなかなか政治的な態度を把握することが難しそうです。できないことはないのですが,アメリカのように二大政党制でどちらにつく,という形ではないので,軸があまり明確に出ないと言いますか(政府よりorそうじゃない,だと出るでしょうか)。 移民と

どこかに所属したい気持ちとノスタルジア

昔のことを思い出して懐かしい気持ち抱いたり,失われた時間を悲しく思ったりする,複雑な感情を喚起する要素の一つが,ノスタルジア(nostalgia)と呼ばれる現象です。 ノスタルジアには,家族やパートナー,友人など親しい人々との意味のある交流が含まれることが多いそうです。確かに,私自身も,子どもたちが小さい頃の様子を写真や動画で見ると,明らかにノスタルジックな感覚が生まれてきます(年をとってきた証拠でしょうか)。 その一方で,ノスタルジアは感情的な不安定さや抑うつ的な感情に

難民に対する態度は性格に関連するのか

パーソナリティ特性が,特定の集団の人々に対する態度に影響するという研究は,これまでも多く行われています。 移民への偏見や排斥につながる性格の研究も,行われています。 ダークなパーソナリティは,移民に対する脅威や排斥に関連するようです。 しかしながら,より広くパーソナリティを考えた場合に,集団に対する偏見がどのようなパーソナリティ特性に関連するのかについては,あまり明確な結果が得られているわけではありません。 脅威移民や難民に対してどうしてネガティブな印象を抱いてしまう

回答バイアスを除いてから性格の日米比較をしてみると

パーソナリティは質問項目で測定されます。「私は○○である」という文章に対して,「当てはまらない」から「当てはまる」までの何段階かで回答していくやり方です。 この文章と選択肢のセットで測定するというやり方は,100年くらいずっと行われていることです。この測定方法についても,あれこれと「これではよくない」「もっといい方法があるのでは」と意見はさまざまあるものの,結局は回答の負担が少なく,それなりにそれらしいデータが手に入るという点で,結局はいまでもこの方法が世界中でよく使われて

妻や夫を亡くすと性格はどうなるのか

一緒に暮らしていた相手を亡くすというのは,やはり人生にとってつらい出来事ではないかと想像されます。自分自身には経験がないとしても,そこはある程度は想像できそうです。 この話題で思い出す本は,相川先生の『愛する人の死、そして癒されるまで―妻に先立たれた心理学者の“悲嘆”と“癒し”』です。43歳で奥様を亡くされた先生が,自身の体験から悲嘆と回復について説明していく内容の本です。 配偶者を亡くすとこれまでの心理学の研究でも,配偶者を亡くすことで起きることが検討されています。

読書をすると本当に知能が高まるのか

知能がどのような構造になっているかについては,歴史のなかでさまざまな説が提唱されてきました。 陸軍式知能検査知能の中身が分かれていくきっかけになった研究がどれなのかはよくわからないのですが,20世紀初頭にアメリカで開発された陸軍式の知能検査も,そのひとつではないでしょうか。陸軍式の知能検査は,第一次世界大戦でアメリカ陸軍が多くの人々を徴兵したときに用いられた集団実施式の知能検査です。作成したのは当時アメリカ心理学界会長だったヤーキーズたちです。 ◎陸軍A式(Army al

良い関係は一緒に何かをすることで保たれる

「恋愛関係がうまくいっている」と自分自身で考えることは,いろいろと良いことがあるそうなのですが,皆さんはどうですか?私自身はもう家族がいるので「恋愛関係がうまくいっている」という質問自体が適切ではないようにも思いますが……。あ,恋愛関係と書くからよくないですね。「愛情のある関係」であれば,夫婦関係でもその他の関係でも問題はないように思います。 恋愛なのか愛情なのか,何となく区別はつくのですが,このあたりの微妙な関係性は,日本と海外で表現の仕方が違うところもあって注意が必要で