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研究生活セット

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研究活動,研究生活,研究環境に関連するトピックを集めました。研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセットです。
研究者の生活についてまとめた,研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセット…
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#論文

面白い研究につながるリサーチクエスチョン

面白い研究をおこなうには,どうしたらよいのでしょうか。今回も『面白くて刺激的な論文のためのリサーチ・クエスチョンの作り方と育て方: 論文刊行ゲームを超えて』から,そのヒントを探っていきましょう。 ギャップ・スポッティングこれまでの記事で,リサーチクエスチョンを立てるときによく使われる,ギャップ・スポッティングについて説明しました。これは,先行研究の穴を埋める研究計画の立て方です。 先行研究ではここが押さえられていない,この研究領域は誰も踏み込んでいない,この方法がこの研究

読むべき論文もAIが教えてくれる時代

毎日,膨大な数の論文が世界中で出版されます。非常に限られた範囲だとしても,もはやそのすべてを網羅して確認することは,時間的にも労力的にも不可能な時代になっています。 「こういう研究があるんだよ」「へえ,知らなかった」と,たとえいろいろなことを知っている専門家であったとしても,研究者であったとしても,見逃している情報が非常にたくさんあるのが現代の状況です。 でも,膨大な論文の中からできれば「確実な数本」を確認しておきたいものです。議論の中心になっていて,そこを押さえればおお

引用するのは全体なのか一部なのか

世の中の情報は,どんどん多様化しています。旧来の媒体である論文,書籍,雑誌記事,新聞など紙媒体以外の媒体で提供される情報が,年々増加しています。 論文やレポートの著者となる際に,政府のプレスリリース,Podcastのエピソード,YouTube動画,Facebookページ,Twitterのツイート,ニュース記事のコメント欄など,従来ではあまり論文やレポートに引用することが望ましくないとされていた媒体であっても,利用する必要に迫られるかもしれません。 全体か一部か引用した文献

日本語版しかない本を英語のレポートに引用する方法

これは以前,論文を書いていて困ってしまった経験があることのひとつです。日本語しかない文献を,どうしても英語の論文に引用したいと思ったときのことです。果たして,どうやって書いたらいいのでしょうか……? 英語になっていない文献今回は,アメリカ心理学会の論文執筆マニュアルについてのブログ記事(When and how to transliterate titles in references)から,こんな時にどうすればいいのかを学んでいきましょう。 中国語の文献であれば漢字を使

ネット記事をレポートに引用すること

学生たちが提出するレポートを見ても,今や,ネットで見つかるものではない(印刷された本や論文)を引用するよりも,ネットで見つけた記事やpdfファイルをレポートに引用するのがあたりまえになっています。 それは学生たちだけではなく,研究者でも同じです。大部分の論文は,紙で印刷されるだけでなく,pdfファイルやhtmlでwebページの地の文でも提供されます。研究者たちも,ネットで情報を検索して自分が執筆する論文に情報を引用していくのがあたりまえになっているのです。 文献の種類もし

音楽をレポートに引用するときはどう書けばいいのか?

レポートや論文を執筆するとき,どんなものであっても引用できるものは引用するという姿勢で書いていくことが大切です。引用せずに文章を書いてしまうと「剽窃」(パクリ)とされかねません。 間接引用の多用ふだん色々な文章を書いているときに,直接引用よりも間接引用を多用していることに気づきます。多いときには,段落の中のすべての文章1つ1つに,引用文献がつけられるときもあります。 論文を読んでいくと,このような書き方がされていることに気づくのではないでしょうか。しっかり引用しながら文章

論文の中に一人称は登場するものなのか

「論文の中には『私は』とか『私たちは』とか,一人称を登場させるものではありません」 ……と,少なくとも私自身は学生時代に学んだように思います。 レポートの中にも,「私は」と著者自身が登場すると,ちょっと気になってしまいます。たとえば…… ◎私たちはBig Five尺度を用いて調査した。 ◎○○は××だと言われているが,筆者はこの考え方に疑問を抱いている。 こんな文章とか。 こういう時は,たとえば…… ◎Big Five尺度が調査に用いられた。 ◎○○は××だと言わ

論文の中のポジティブな言葉

研究者を取り巻く状況は,年々厳しさを増しています。職を得たりよりよい職場への移動,上位の職へのプロモーション,研究費の獲得,他の研究者との比較,そして心理的なプレッシャー……どのような場面でも,他の研究者との競争にさらされていてその状況が以前に比べて厳しくなってきています。 論文数でいうと,1996年から2011年までの間に,1500万人を超える研究者が2500万本もの論文を公表したそうです。おそらくその後の10年間は,もっと多くの研究者がもっと多くの論文を執筆しているはず

テキサスのとんでもなく上手な射撃手の話

ある男性が,テキサス州のある家畜小屋のそばを歩いていました。 ふと家畜小屋の壁を見ると,小屋の壁一面にウシの絵が何頭も描かれています。そして驚いたことに,すべてのウシの目が見事に銃で撃ち抜かれていたのです。 男性は驚いてじっとその壁を見ていました。すると,後ろから少年が声をかけてきました。男性が壁を見て驚いていたんだと言います。 その少年は「ぜんぶ自分がやった」と言うのです。 男性はさらに驚いて,「どうやったんだい?」と尋ねました。 撃ち抜き方というストーリーが,テ

たくさんの著者がいる論文を書く時のガイドライン

他の研究分野でも同じではないかと思うのですが,心理学の研究でも1本の論文に示される著者の数は,どんどん増加してきた印象があります。私が大学院生の頃はまだ論文の著者が「1名」つまり単著であることが珍しくなかったのですが,いまでは少数派になっているのではないでしょうか。 メリット共著で論文を書くことのメリットはあれこれと考えることができそうです。 ◎執筆のスピードアップ……手が空いた人が作業することができる,共同研究者がいるとプレッシャーになって作業が進む? ◎ストレスの低減

2019年なのか2020年なのか……それが問題だった

今回は,とある先生からお問い合わせをいただいて確認したという経緯について,メモと注意喚起を兼ねて書いておこうと思います。 *なお,現在は修正されています。 何かと言いますと,以前にもこの記事で紹介した論文についてです。 J-STAGE日本心理学会が発行する心理学研究という雑誌は,J-STAGEで全文を読むことができます。先ほどの論文は,こちらのページに掲載されています。 第6号心理学研究は1年間に6号,刊行されます。2ヶ月に1冊の雑誌が発行されるというわけです。そして

論文の考察を書くときのポイント

これまで,いくつか(特に心理学の)論文を書くときに気をつけたほうがよいことを記事にしてきました。 たとえば,『良いリサーチクエスチョンを立てるためには』では,研究をしていく上で欠かせない「問い」を立てるときのコツについて紹介しています。 また『よい仮説を立てるコツ』では,研究結果を得る前に立てられる仮説を立てるときのコツを紹介しました。 今回は,これまた論文を書くときに欠かせないにもかかわらず,初めて論文を書くときにはどうしたらよいのかがわからなくなってしまいがちな,「

日本人の自尊感情は低下していることを示した論文のウラ話

日本人全体が,だんだんと自信を失っているのではないか,と感じている人がいるようです。学校の先生の中にも,「最近の生徒たちは自信がないのでは」と考える人がいるようです。 自信を失っているのであれば,なんとか対処しなければいけない,と考えがちですが,「そもそも本当にそうなっているの?」というところから疑問を抱く人もいます。 目次・信じるためには ・メタ分析 ・過去の記録を研究に ・記録にこだわる理由 ・メタ分析も過去の記録 ・時間横断的メタ分析 ・歴史を扱う ・何なら可能か?

卒論で結果が出ないとき

以前,次のような質問に答えました。「卒論で大失敗」ということについてです。 でもここに書いたように,もしも「望む結果が出なかった」ことであるならば,それをしっかり論文に書くのが良いと思います。 この「卒論での大失敗」がどういう状況なのかが分かりませんので,とりあえずは心理学で調査や実験をしたにもかかわらず,うまく結果が出なかったことを想定して答えています。でも,質問された方がそれを想定しているのかどうかは分かりません。 回答の前提回答は書いた通りなのですが,実はそこには