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研究生活セット

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研究活動,研究生活,研究環境に関連するトピックを集めました。研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセットです。
研究者の生活についてまとめた,研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセット…
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#統計

基準とは何だろうか

その昔,大学院生の頃のことです。とある先生がこう言っていました。 「よくわからないのに『何々妥当性』という言葉を安易に使わないほうがいい」 ということで今回は,この『何々妥当性』のうち,基準関連妥当性(criterion-related validity)という言葉について考えてみようと思います。この話は,心理学で質問紙尺度を使おうとする時以外にはあまり関係のない話だと思うかもしれません。しかしこれは,テストを作ろうというときや,何かで人を選別しようとするとき,合格・不合

疑似相関を見つけることはできるのか

「疑似相関」(Spurious correlation)という言葉も,ずいぶん広まってきた印象があります。疑似相関について取り上げた記事やwebサイトもよく見かけますし,SNSでも何かの記事に対して「それは疑似相関ではないか」という書き込みを目にすることがあります。 このページ「疑似相関に気をつけろ!」でも,疑似相関について解説がされています。 目次・疑似相関コレクション ・疑似相関でも関連はある ・相関関係と因果関係 ・疑似相関 ・疑似相関はなかなか見つからない 疑似

「ただし○○に限る」を研究する

今回も,考えを心理学の研究に乗せていくコツを考えてみたいと思います。 今回のテーマは,調整(moderation)です。と言われても,研究のやり方に馴染みがない人にはなかなかわからないと思いますが……。 ただしものすごく俗な言い換えをすると,「ただしイケメンに限る」効果と表現することもできます。 なお今回の記事は,過去の記事の続きです。 シンプルな関連をどう考えるかについてはこちらに書きました。 そして,関連どうしの間をつなぐ媒介という考え方についてはこちらです。

原因と結果をつなぐ間を考える

今回も,考えていることを心理学の研究に乗せていく,ということについて書いてみたいと思います。前回は関連について書きましたが,今回は媒介(mediation)ということについて考えてみます。媒介というのは, [ 原因 ] → [何か] → [結果] という,間に何かが挟まったプロセスのことだと考えてください。 風が吹けば桶屋が儲かる,ということわざがありますが,それを思い浮かべてもらっても構いません。このことわざについては後ほど説明します。 あることと別のこととの間になにか

「小さい関連」なのに「意味がある」時とは

「相関係数が0.1しかないのだから,ほとんど意味はない」と言ってしまうのは簡単なことです。でも,「そんなに小さな関連でも意味がある」というスタンスで論文が書かれている時があります。 たとえばこの論文などは典型的なのですが,ビッグ・ファイブ・パーソナリティと身体的な活動性との間の関連は,標準化された回帰係数で0.1程度か,それを下回るくらいの関連しかありません。『The five-factor model of personality and physical inactiv

関連を検討するときの考え方のコツ

学生の研究の指導をしていてまずつまづくのが,自分が考えていることをなかなか心理学の研究に乗せることができない,という点です。 自由にあれこれと考えていることをそのまま研究に結びつけることができれば良いのですが,それを指導教員に言うとたいてい,「それは無理。研究にできない」という返事が返ってきてへこんでしまったりします。 何が足りないのかというと,基本的な,「検証可能な」仮説の立て方だと思うのです。今回はそういう話をしてみようと思います。 関連があるいちばんシンプルな仮説

不定期メモ 2019.1.2/モチで救急搬送のニュースから日本の死因について

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昔書いた統計テキストについて語っておきましょうか

実は,本のタイトルをつけるのが苦手なのです。 これまで何冊かの本を出版しているのですが,たいていタイトルをつけるのが最後になってしまいます。あれこれ悩んで,もう最後は「なんでもいいです」という気分になってしまいます。 タイトルお任せ新書も,原稿を一通り書き,校正も終わったくらいのタイミングにもかかわらず,タイトルは決まっていませんでした。いつもと同じです。 最後は「お任せします」ということでこうなりました。 キーワード盛り込み今から十数年前の2004年,この黄色い表紙の