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研究生活セット

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研究活動,研究生活,研究環境に関連するトピックを集めました。研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセットです。
研究者の生活についてまとめた,研究とはどういうものか,研究者は何を考えるのかなどを知るためのセット…
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2019年2月の記事一覧

詳しく調べたからといって答えが見つかるとは限らない

詳しく調べようとして,本当はそこにない法則を発見してしまう,ということがあるように思います。 指導法次の例を考えてみましょう。 ある小学校で,1学期と2学期でテストを2回行いました。学校全体としては,なかなか思うように点数が伸びてくれません。そこで校長先生は,「それぞれのクラスの成績を見て,成績が伸びたクラスと伸びないクラスで何が違うのかを比べてみよう」と考えました。 クラスごとに1回目のテストと2回目のテストの平均値を算出して,グラフを描きます。すると,成績が上昇した

当てているモノサシの種類に気づくこと

私たちはものごとを見る時に,何かの「モノサシ」を当てて見てしまうことがあります。そして,自分でもそのモノサシを当てながらモノを見ていることにあまり気づいていないようです。 たとえば,「この生徒は賢い」ということを発言することを考えてみましょう。この発言をするということは,この人は生徒を見る時に「賢さ」というモノサシを当てていることを表しています。 「この食べ物は好きではない」という発言をするということは,この人が食べ物を「好きかどうか」というモノサシを当てながら考えている

「ただし○○に限る」を研究する

今回も,考えを心理学の研究に乗せていくコツを考えてみたいと思います。 今回のテーマは,調整(moderation)です。と言われても,研究のやり方に馴染みがない人にはなかなかわからないと思いますが……。 ただしものすごく俗な言い換えをすると,「ただしイケメンに限る」効果と表現することもできます。 なお今回の記事は,過去の記事の続きです。 シンプルな関連をどう考えるかについてはこちらに書きました。 そして,関連どうしの間をつなぐ媒介という考え方についてはこちらです。

自分は特別でやってもらって当然

以前も書きましたが,卒論から博論まで自己愛的なパーソナリティの研究をしていました。これに関しては,やり直したいこともあれこれありますがそれは胸の内にしまっておこうと思います。それは今の自分だからこそ,わかることだからです。 予想外「どうして自己愛の研究をしたのですか」と聞かれることもありますが,正直よくわかりません。テーマを探そうと図書館にこもって,手当たり次第に国内外の論文を読みあさっていたのは確かで,その中で何か自分の考えていたことにヒットしたのでしょう。そんなものです

原因と結果をつなぐ間を考える

今回も,考えていることを心理学の研究に乗せていく,ということについて書いてみたいと思います。前回は関連について書きましたが,今回は媒介(mediation)ということについて考えてみます。媒介というのは, [ 原因 ] → [何か] → [結果] という,間に何かが挟まったプロセスのことだと考えてください。 風が吹けば桶屋が儲かる,ということわざがありますが,それを思い浮かべてもらっても構いません。このことわざについては後ほど説明します。 あることと別のこととの間になにか

「自尊感情」という言葉の謎を探して研究における運命のいたずらを感じた話

今回は,いつから「自尊感情」という言葉が使われているのか,あれこれと検索してみようと思いました。データベースは,CiNiiおよびJ-STAGEです。 研究者どうしで話をしていると,たまに話題になるのです。「自尊感情という言葉は,いつから使われているのでしょうね」と。そういうときはたいてい「最近のことですよね」という話になったりします。でも調べてみると,意外と昔から使われているようなのです。 それは,自尊心と自尊感情のどっちの言葉を使う?ということが話題になることがあるから