練習は量?練習は質?
上達の過程で「練習の質・量問題」は常に議論されるテーマです。
私は、簡単に結論を出す論客を信用していません。
10歳で野球を始めて30年、22歳でゴルフを始めて19年。
スポーツの指導に携わって、20年以上のキャリアがありながら、いまだに結論が出ません。
最近では、もしかしたら「質と量」両者のベクトルは必ずしも対極にあるものではなく、例えば、「100本ノック」のような「量」にフォーカスしたプログラム自体が「質」を表しているのではないか?とさえ、思っています。
それでも、ゴルフを教える仕事に従事して、約15年。
職業としてスポーツ指導を行う立場になって少し考えるようになってきたのは、
初心者のうちは、量・質を考えるよりは1週間で区切った時の「頻度」という指標の方が相関が高いような気がしてます。
レッスンを受講するクライアントの中には悲しいかな、「週に一度、私のレッスンの時にしかゴルフクラブを触らない」というゴルファーがおられます。
そういう人は得てして上達のスピードが遅いのです。
レッスンの際は2~3時間くらい練習場で練習を行っているにも関わらず。
約2.5時間を7日で割れば、一日約20分の練習時間になります。
しかし、自宅での素振りを含めて毎日10~15分は練習をする。というゴルファーの方が「圧倒的に」上達が速いと、肌感覚ではあるが、強く感じています。
「圧倒的に」ですよ。
どうやら、一度(1日)に覚える(吸収できる)内容には限界があるのではないでしょうか?
つまり、「100本ノック」をこう考えられるのではないでしょうか?
100本ノックによって得られる、本来の学習効果というのは、「体力的にきつくなった場合に最も効果的(効率的)に動ける身のこなし方、及びその動きを導き出すための思考プロセスの熟練」という、小難しいですがこのような単一的な内容なのではないでしょうか?
100本ノック以外でも、上記の内容を学び取ることはできると思いますが、最も効率よく、早く学びえるのは「100本ノック」なのではないでしょうか?
中学英語の授業時間はおよそ350時間です。
これは、およそ2週間です。
では、起きている時間を16時間として3週間、英語圏の国に暮らせば中学英語くらいの内容をマスターできるのでしょうか?
おそらく、英語教育の専門家に聞いたら、全員の答えは「ノー」でしょう。
ちょっと発音よく「Not enough」って感じでしょうか。
つまり、どんなに内容(質)が良質のレッスンでも一日に学べる量には限界があって、個人差はあれ、一日ですべてを学びきることができないことを教育の世界は知っているのかもしれません。
だから、学校の授業には「時間割」があって、一日中「数学」とか、一日中「物理」のような授業スタイルをとらないのではないでしょうか。
「100本ノック」のように、プログラムを行うだけでも2~3時間要することはあるかもしれません。「実験」や「スポーツ大会」など
つまり、
一週間に一日だけ集中して80分練習する人、と
一週間、毎日10分を欠かさず練習する人、との差は「頻度」にあるのです。
ゴルフのレッスンをしていて、上手くなる人の特徴は「長く続ける人」というのが、私の感想です。
そうなると、長く続ける人は、当然「期間」という指標が増えます。
ある程度教えて「はい、卒業」って区切ってしまえばそれまでですが、ゴルフ指導をしていて、「もう、限界」というレベルに達した人を見たことがありません。
「ああ、ここをこうすれば上手くなるのに!」とどんな人にも必ず、「課題と向上点(可能性)」があるのです。
少なくとも、私には「これ以上の上達はできない」というほど、熟練しきった人には出会ったことがないので、まあ今後も出会うことはないでしょう。
こんなことを話すと、
「自分のビジネスのためにお客さんに長く続けてもらおうと思っているんじゃない?」
なんて、勘繰られることがあります。
英語の教師ではありませんが、答えは「ノー」です。
ティーチングを仕事として行うプロとして答えますが、成長の見込みがないクライアントを自分の利益のために、いわば「飼い殺し」のような立場に置くのは断じてありません。
やればやるほど、課題が見えてきて、課題をクリアすればするほどうまくなっていくのは当然の熟練のプロセスではないでしょうか。
それらを加味して、長く続ける人は、だらだらしているように見えて、「頻度」×「期間」という二つの要素を満たしながら、練習を行っているのです。
上達しないわけがないというのが、私の意見です。
頻度が上達に重要な要素になることは私の経験を語るまでもなく、ご理解いただけることと思います。
日本の田舎の高校生の「自転車を運転するスキル」って、結構高いです。
そりゃ毎日、何㎞も自転車に乗っていれば、運転のスキルは高まります。
先日、即席ラーメンを食べながら自転車をこぐ高校生を見かけました。
危ないので、やめましょう!
でも、自転車を運転しながら箸を使ってラーメン食べるって、ある意味曲芸のレベルでしょ。
毎日、自分のアシとして通学に利用する乗り物の運転技能が高まるのは当然ですよね。
頻度と期間の練習をゴルフに応用するにはどうすればよいか?
ベストなことは、
毎日コースで練習すること。
→昔のイギリスのように自分の家の裏がゴルフ場に繋がっている。なんて状況でもない限り難しいですよね。
※昔のイギリスでは犬の散歩がてらコースでショートゲーム(アプローチ)の練習ができる環境がたくさんあったそうです。
毎日練習場で練習すること
→もはや部活動レベルです。
つまり、学校の部活動のように毎日ボールを打てる環境がある人は上達が速くなるのです。しかも、学生のように日々の雑務に追われ過ぎないでいられる立場がより一層、頻度を高めてくれます。
どうやら、社会人になるとそうはいかないようですね。
だったら、練習場にはなるべくたくさん行くとして、行けない日にどのようにゴルフに触れるか?が重要になってくるのではないでしょうか。
家で、素振り。
→できる人ならいいですね。素振り用の人工芝マットを置いてボールをイメージしながらスイングするだけでも十分練習になります。
鏡(ガラス)の前でエアー素振り
→ゴルフクラブを持たなくても、アドレスの作り方や重心の意識など、練習に役立つ「感覚トレーニング」はアイディア次第でどんどん開発することができます。
ここまでくると、一昔前(1980年代)、駅のホームでよく見られた「傘でゴルフスイングをするスーツ姿のビジネスパーソン」というのは、優秀な努力家であることが伺えます。(環境には恵まれていないようですが)
あなたなりの「頻度」と「期間」を作り出す工夫をぜひ自分のゴルフトレーニングに活かしてみてはいかがでしょうか?
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